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白翼の堕天使  作者: 紡未夏樹
第三章
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第二部 〈もう一つの白黒〉

「志音帰ってこないんだが、もう帰っても良いか?」

「いいんじゃね? 別に用事もないだろ」

「そうか」



「彩芽、演劇、見てたか?」

 学校からの帰り道、ふと、そんな事を聞いた。特に意味があるわけではない。

「見たよー。聞こえなかったけど」

「そうか」

 やはり黄色い歓声が邪魔だったのだろう。

「で?」

「?」

「何かあるんじゃないの?」

「いや、特に何も無いぞ」

 ふと思った事を聞いただけだ。先ほども言ったが、他意は無い。

『ねえ、ちょっと、良いかな?』

 声を掛けられたのは、そんな時だ。

 その声の主は、相当なイケメンだった。彼は無駄に爽やかな声で話始める。

「つい、可愛くて声を掛けちゃったんだけど、君、守命館の娘だよね? 珍しい髪の色してるよね。染めてるの? あれ? 目も赤い? 綺麗だね。連絡先とか、交換しない?」

 何か、嫌な奴が来たな。彩芽の嫌いなタイプだ。長年の付き合いから、黒羽はそう思う。

 案の定、彼女は委縮して、黒羽の後ろに隠れてしまっていた。

「なに、この人……」

「さあな、知らん。適当にあしらっとけばいいだろ」

 幼い頃は、よくあった事だ。とはいえ、その時声を掛けてくるのは、たいてい近所のおばさん達だったが。

「あ、そっか。自己紹介してなかったよね。ごめんね。俺は日向白夜。守命館の二年生さ」

 聞き覚えがある名だった。というより、直前に聞いた名だった。

 自分が有名だという自覚があるのか、「知ってると思うけど」と付け足す。

 その時、やっと彼の後ろに目が行った。

 彼の後ろには、大勢の女子たちが付いてきていた。——塀に隠れながら。

「ねえねえ、君、連絡先、交換しよ? 可愛いから特別だよ」

 そう言って白夜は携帯を取り出すと、すらすらと操作を始める。

「ねえ、くろにぃ。何とかして」

「何とかって言われてもな」

 出来れば争いたくない。後ろに控えてる女子がものすごく怖い。今ですら、「何であんな奴が私の王子様と話してるの!?」的視線がすごいのだ。視線に当たり判定があったら、確実に殺されていただろう。

「あー、日向先輩。こいつ、嫌がってるんで、止めてもらえますか?」

「え? 嫌がってる?」

 彼の動きがピタリと止まる。

「そ、そんなこと…………あ! キョク! 良いとこに!」

 白夜は、近くを通りかかった一人の少年に声を掛ける。

「何だ」

「聞いてよー。僕が連絡先聞いたら、この娘、嫌がってるっていうんだけど、嘘だよね?」

「嫌がってるって言ってるなら、そうなんだろ。そもそもお前は男が居る前でナンパするな。後ろにも女子居るだろうが。そっち行ってろ」

「え!? 皆来てたの!? ……ちょ、皆違うんだ! 聞いてくれ——!」

 慌てた様子で塀に隠れた女子集団に入っていく白夜。

「うちの奴がすまなかった。俺は日向極夜。ハクの双子の弟だ。よろしくな」

 そう言って彼は、薄く笑みを浮かべながら手を差し出す。

「あ、ああ、はい。俺は黒羽です。北条黒羽」

 彼の手を握り返しながら、この人がもう一人の王子か。彼なら好感が持てるな。黒羽はそう思って、彩芽を見る。彼女も、白夜が居なくなったことに安心したのか、黒羽に隠れたりはしていなかった。

「大神彩芽……」

 ぼそっと自分の名前だけ呟く彩芽。

「そうか。よろしくな。俺は急いでるから帰るが、白夜が何かやらかしたら言ってくれ。シメておく」

「あ、はい」

 この人も苦労してるのだろう。後ろに別の女子グループが付いてきている。気付いているのかは分からない。

「白夜って人、嫌い」

「そうか。俺もああいうタイプは苦手だな」

 実績のあるナルシスト程、面倒なものはそう居ないのではないだろうか。

「でも、極夜って人は良い人」

 彩芽がそう言うなら間違いないだろう。

「そうだな」

 黒羽は肯定する。

 ちなみに現在、目の前を件の女子グループが通過してるのだが、それら全ての視線が彩芽に突き刺さっているため、またしても彩芽は黒羽の後ろに隠れている。

「くろにぃ」

「なんだ」

「面倒なことが起こる気がする」

「奇遇だな。俺も面倒なことになりそうな予感がしてたところだ」

 恐らく、今後も白夜極夜の日向兄弟は、何かと黒羽達に関係してくるであろうことを、この時、黒羽達は既に察してしたのだ。

 しかし、その予感は、その時にならなければ分からない。当たっていても、外れていても、結局とる行動は同じだ。その場に応じた対応をすればいい。

 ——たとえ、目の前の女子グループの一人が彩芽に声を掛けようとも。

「この娘可愛い——! 何年生!? お持ち帰りしても良い!?」

 ああ、まだこの場から動けはしないようだ。

 空を仰ぐ二人だった。

今回少し短かったかもです、夏樹です。

イケメンは滅びるべき。そんな思いを込めながらも、結局作品としてイケメンは居なければならないわけで、一番当たり障りないのが、恋愛に興味無いイケメンかな、ということでの極夜です。白夜は書いてて自分でイラっとしました

ではでは、皆さまからの評価、感想、レビュー、ブクマお待ちしております!

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