第六部 〈少女の人間関係〉
雫がチームに入ったからといって、特に大きく何かが変わるわけでもなく、特に変わったとするならば、人数が増えたことによるチーム間の連携の再確認や新たな戦略の考察。
そして人間関係。
『今日、家に行っても良い?』
志音からそんな連絡が入ったのは、九月も半ば、未だ残暑厳しい秋の初め。
『何か用事でもあるのか?』
『用事が無いと家に行っちゃだめなの?』
『そんなことは無いが、うちには遊ぶものなんて何も無いぞ』
『別に何も無くていいわよ。行きたいだけだから』
どういう事だろうか。まさか家出でもしようとしてるのだろうか。その際の滞在先として黒羽の家を選んだ?
——んなまさかな。
黒羽は一笑に付して、画面を閉じた携帯をポケットに入れた。
「どうしたのくろにぃ?」
今日も今日とて黒羽のベッドで横になりながら漫画を読みふける彩芽。
最近、黒羽のベッドに彩芽の匂いが染みついて、妙に気まずい気分になるのはまた別の話。
「ああ、志音がここに来るそうだ。家は割と近い方だからもう少しで来るんじゃないか?」
「へえー、志音が……」
機嫌が悪くなったように見えるが、黒羽は気付かない。
「呼び捨てなんだな」
彩芽の方が年下なのだが。
「あの人は呼び捨てでいいと思った」
「そうだな。あいつは怒らないだろう」
——ピンポーン
インターホンが鳴る。
「っと、早いな」
移動しながら連絡を入れたのだろうか。
扉を開く。
「お兄さん! 遊びましょう!」
「……お前か」
現れたのは連絡を入れた志音ではなく、先日も似たような登場をした雫。
「あいにくだが予定があってだな。すまんが今日は家から出るつもりはないぞ」
そう何回も雫の『遊び』に付き合う程の体力は持ち合わせていない。
「そうですかー、ちなみにその予定とは?」
「志音がうちに来るそうだ。用事があるわけではないらしいがな」
むしろ志音と雫を遊ばせたらどうだろうか。などという考えが黒羽の頭に浮かんだが、勝負にならなそうなので提案はしない。
「じゃあ私も上がって良いですか? おうち見たいです」
「ああ、それなら——」
構わないぞ。と言おうとしたところで、
「ちょっと! 何してるのよ!」
志音が駆け寄ってくる。
「黒羽! 何でこの子がいるのよ!」
「何でと言われてもな。家に来たからだろ」
「そうじゃなくて、何で来ること言わなかったの!?」
怒ってるポイントが良く分からない。
「どうしたのくろにぃ? 何か騒がしいけど」
相当、志音の声がうるさかったのだろうか。玄関まで出てくる彩芽。
そんな彩芽を見て志音はさらに顔を険しくさせ、
「何で彩芽ちゃんまで…………っと、そうね。居候してるのよね」
忘れてたわ……、と呟く志音。
「何をブツブツ言ってるんだ。いいから上がれよ」
黒羽は家に上がるように促す。
正にその時だった。
「ん? 今度はなんだ?」
ポケットに入れた携帯が震える。
「私も来てるわね」「私もだー」「あたしのもです」
全員に来ていたようだ。
どうやら魔族の襲撃があったらしい。
「緊急招集? 何で俺たちに来るんだ?」
もう高等部二年、三年は帰って来ている。襲撃があっても、まずはそちらにいくはずだ。
「あ、私が言っておいたんですよ、お父さんに。実践に勝る訓練はありません」
「お前のせいか……」
どこまで自分の娘に甘いのだろうか、あの司令官は。
と、再び黒羽の携帯が震える。
「今度はなんだ……」
見ると、今度は「変態」と書かれていた。通話に応じる。
「どうした」
『いや、どうしたもこうしたも無いだろ。何で俺らに緊急招集が掛かってんだよ』
電話の主はケイだ。
「あー、雫のせいらしい」
『入って早々やってくれるな』
「全くだ」
ちらと、三人の方を見ると、全員が黒羽の方を向いている。
『とりあえず招集掛かったんだし、集まるか』
「学校か?」
『そうだな、じゃあ後で』
通話を切って、女子たちに向き直る。
「学校集合だそうだ。緊急招集ならチカラ使っても良かったはずだよな。急ぐぞ」
「あ、そうだ。〈疾風〉!」
彩芽が風を生み出す。
「お! 浮いた! 浮きましたよお兄さん!」
「そういやそんなのもあったな。助かる」
「どういたしましてー」
彩芽の生み出した風で加速する四人。学校までそう時間は掛からないだろう。
学校につくと、スピーカーから永久の声が聞こえる。
『襲撃があったのはエリアAからB、そしてDだ。現在哨戒任務に就いていたチームが交戦中だが、今回は敵の数が多い。そう長くはもたないだろう。急いで向かってくれ』
「私たちはどこに向かうの?」
魔族の襲撃の対応は二回目のため、まだ勝手が分からない。
「今回はエリアAですね。森林のエリアです」
鬱蒼と生い茂る葉が日の光を遮るそのエリアは、昼間である今でさえも薄暗い。
「嫌な場所だな」
「こればっかりは仕方ないな」
「もう行ったほうが良いのか?」
あまり動き出してる生徒は多くないのだが。
「行きましょう! 強敵を持ってかれたら大変です!」
そう言うなり走りだす雫。
「あ、待て……」
速い。おそらく脚力強化でもしたのだろう。
「追うぞ。何をやらかすか分かったもんじゃない」
自らも脚力を強化して走りだすケイ。それに続いて志音、彩芽、黒羽も走りだす。
未だ日は高く、暑さもある。それなりに強力な魔族が現れれば、苦戦は必至だ。そうならないことを祈る黒羽だった。
最近文章が雑になっているかもしれません、夏樹です。
申し訳ありません。遅筆なうえに執筆する時間もあまり取れず、このような結果になりました。
今度から改善できるように頑張ります。
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