第四部 〈少女の既視感話〉
「くろにぃかっこ悪い」
「完全に油断してましたよね」
「…………」
何も言い返せない。
勝利を確信して油断したところを突かれた。
「でも楽しかったですよ」
にっこりと笑う雫。それだけで救われたような気分になる。
「彩芽ちゃんも今から遊ぶ?」
「やだ。くろにぃが負けたから、今の私じゃ勝てないと思う」
「そっか。じゃあまた今度だね。お兄さんも、また今度遊びましょう」
「そうだな」
雫はそう言って去っていった。いつの間にか彼女の雰囲気に呑まれて、黒羽達は友達になっているようだ。
「私たちも帰る?」
「そうだな」
二人揃って帰路につく。いつの間にそんな時間が経ったのか、空はすっかりオレンジに染まっていた。
黒羽も彩芽も、彼女と知り合ったことで、また新しいことが始まるとは、知りもしなかった。しかし今は、彩芽の友達第一号が出来た事を、しっかりと祝いたい。
「そういえばアイツ、雫はチームに入ってたりするのか?」
「さあ? 分かんない。あまり興味なかったし」
過去形。それだけで彩芽の心境の変化が見て取れる。上手くやっていけるはずだ。友達が出来なかった時期に身に付いた、彼女の人を見る力は今もなお健在のはずだ。
「あ、晩飯の用意してねえ」
思い出したかのように呟く黒羽。
「ちょっと急ぐぞ」
「チカラ使っていい?」
「バレないようにな」
ニヤリと笑うと、一気に駆け出す二人。その背中はどこか楽しげだ。
平日、昼休みの教室にて
「聞いたわよ黒羽」
「いきなり何の話だ」
教室で、突然黒羽の前に現れたと思ったら、主語もなくいきなり話し始めた志音。
「アンタ、休日に中等部の女子と歩いてたらしいわね。どういうことよ」
「どういう事と言われてもな、あれは彩芽のクラスメイトだ。彩芽が一人で外出したくないと言ったから、付いていっただけだ」
「なんだ、そういうこと。安心したわ」
なんだこの既視感は。
「お? なんだ黒羽。また浮気か?」
「お前まで同じような台詞を吐くんじゃない。また話が変な方向へ進む」
「やっぱりその言い草は酷いだろ」
前回同様、軽口を叩きながら話す三人に、前回同様、廊下から呼び出しが掛かった。
「北条君居るー?」
ああ、良かった。女子は違う人だ。
「どうした」
「いや、何か中等部の子が用事あるって」
「だろうな」
しかし廊下を見るが、その人物は見当たらない。
「お兄さんっ!」
『——!?』
やはりというかなんというか、廊下及び教室の出入り口付近に居た者達に衝撃が走った。
「後ろから急に声を掛けるな」
『妹……?』『二人目だと……!?』『可愛い……』『あれ? でもあの子って……』
やはり蠢く人達。
一回目で慣れたとばかりに我関せずといった顔で雫の言葉を待つ黒羽。
「あはは、ごめんなさい。びっくりさせちゃいましたね。そんなことより、放課後時間あります?」
「今日は訓練の予定があるな」
「あ、大丈夫です。その時にちょっとだけお話があります」
「そうか、分かった。じゃあその時に」
「はーい! じゃあそゆことで!」
手を大きく掲げて振り回しながら去っていくその姿に、またしても既視感を覚える。
その姿が見えなくなると同時に、
『——今度は誰!?』
やはり近隣すべてが示し合わせたかのように叫ぶ。
『北条君! 今度は誰なのあの子っ!』『セカンド妹かっ!?』『北条! 俺に紹介してくれ!』
昼食の時間を失う黒羽だった。
都合により短くなってしまいました、紡未夏樹です。
これまた都合で次から確実に投稿が遅くなります。申し訳ありません。
ですが、皆さんからレビューや感想等頂けたら、書くスピードも上がると思います。楽しみにしてくださってる方がいらっしゃれば、ぜひお願いいたします。




