第七部 〈白翼の罪と笑顔〉
学校まで運ばれた黒羽とナナトは、一度保険室に運ばれて、治療を受けたあとに、それぞれの対応をされることになった。
とはいえ黒羽の方は、ヴァイスの力なのか傷はほとんど癒えており、ほとんど何も行わずに保健室から出てきた。
その後、先ほどじっくり話すと言った色々な説明をヴァイスから聞くことになった。
ヴァイスが黒羽の父親だということは、今は信じなくても良いということ。どうしても気になるなら、後で千春に聞いてほしいということ。
そして、なぜ天使の翼を持ちながら魔器に封印されていたのか。
なんと彼は罪を犯し、神界から堕とされた天使。堕天使なのだという。
詳しいことは省かれて説明されたが、千春と出会い、そして結ばれたことが神界にバレて堕とされたのだという。
結果、現在の魔族の頂点。七つの大罪を犯した堕天使たちと同等の力を持ちながらも、心が優しい彼は、人間を攻撃することは無く、勘違いした人間に成すがまま封じられたのだそうだ。
最後。これからヴァイスはどうするのか。
彼はまだやるべきことが言った。これから魔界へと渡り、それを果たすのだそうだ。
「またそのうち会うかもしれないが、その時はよろしくな。クロ、千春さんを困らせるんじゃねえぞ?」
「困らされてるのはこっちの方だ」
「ハハハ、違いねえ。あいつの子煩悩ぶりはすげえからな」
未だ警戒心が薄れていない黒羽を見て、面白そうに笑うヴァイス。
「さて、そろそろ行くとするかな。千春さんに捕まったら身動きが取れなくなっちまう。じゃあな」
そういい残して彼は去っていった。
後にヴァイスが解放されたことを知った千春は、彼を探しに行くと言って聞かなかったが、今、持ち場を離れられると非常にまずい、とスタッフ総出で阻止されていた。
「ボクの処分は保留だってさ。破壊したのは廃棄された区画だったし、イジメてた側にも責任はある、だってさ」
騒動が収まった翌日。
まだ傷が癒えていないナナトの様子を見るため、黒羽達は尚も本部の病室で治療を受けている彼の元に立ち寄った。
「そうか、良かったな」
「うん……」
ナナトをイジメていた生徒たちには、別途、対応がなされるらしい。
「お前、俺たちのチームに入ったらどうだ?」
黒羽は一つの提案をした。
「……え?」
「一之瀬は十分強いよ。もし、元のチームに戻るつもりが無いなら、俺たちのチームに来たらどうだ? もちろん、イジメられていたのを無視してたのは謝る。関わりたくないと思っていたんだ。すまなかった。その上での俺たちからの提案であり、お願いだ」
「いいの?」
「ああ、もちろんだ。彩芽もうちのチームに所属することが決まったし、この際、増やせる戦力は多いほうが良い」
周囲にいるチームメイトも、それぞれ頷いている。
単体で、黒羽と対等以上に戦える力というのは、本人たちが気づいていないだけで、本当はすごいことなのだ。
「そっか……でも、少し考えさせて。ボクは、元のチームに戻っても良いかなって思ってるんだ。確かに、ボクはイジメられてたけど、それは、ボクが巨人族だという事を隠して、力を使おうとしなかったことにも原因があると思うんだ。ちゃんと、使えるものは全部使わないともったいないよね」
「そう、だな」
魔器の力を使わずにナナトに負けたのが、今となっては心苦しい。
「ありがとう。誘ってくれて嬉しいよ。ボクはボクなりに頑張ってみるから、ちゃんとクラスに戻れたら、その時はまたよろしくね」
良い笑顔だ。
今度こそ彼は上手くやれるはずだ。根拠は無いが、その笑顔はそれほどまでに力強かった。
『——クソッ! 北条さんに逃げられたっ! 探せ探せ! まだ遠くには行ってないはずだ!』
廊下が騒がしい。
「あのお袋……」
額に手を当て、溜息をつく黒羽。
保健室に響いたのは、その日一番の笑い声だった。
これにて第一章完結となります! ここまで読んでくださった方はありがとうございます! 稚拙な文章で申し訳ありません。楽しんでいただければ幸いです。
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