第11話 本音を言ってやるわ!
夜になって、ようやく一人になった。
シルフィが「本日はこれで失礼いたします」と言って部屋を出た。廊下の足音が遠ざかった。静かになった。
窓際の椅子に座った。外は暗く、遠くに城下の灯りが見えるだけだ。
「私はただ……追放されたいだけなのよ」
誰に言うでもなく、声に出た。
「田舎で隠居して、畑でも耕して、誰にも邪魔されずに暮らしたい。それだけのことが、なぜこんなに難しいの」
返事はなかった。当然だ。
扉の向こうで、かすかな気配がした。気のせいかもしれなかった。
そのまま布団に倒れ込んで、頭からかぶって、眠った。
翌朝、シルフィは通常通り現れた。
起床の声かけ、朝食の準備、スケジュールの読み上げ。昨日と同じ顔で、何事もなかったように。
「シルフィ」
「はい」
「昨夜、扉の前にいたでしょう?」
「殿下のご安全を確認しておりました」
「聞こえていたのね?」
「……はい」
「どう思った?」
シルフィが間を置いた。
「さすがです、殿下」
「何がよ」
「あえて弱音を見せることで私を試されるとは。忠誠を新たにしました」
私はトーストを置いた。
「試していないわ。本音よ」
「はい」
「信じないのね」
「殿下の本音であることは、存じております」
「じゃあなぜ『さすが』と言うの?」
「それでも、さすがだと思いますので」
返す言葉が見つからなかった。
「……次の作戦を考えないといけないわね」
「かしこまりました。本日は王太女指名式のお衣装の採寸がございます」
「採寸?」
「はい。来月の式典に向けて」
私は採寸という言葉を頭の中で繰り返した。
来月。式典。採寸。
「……続けて」
シルフィがスケジュールの続きを読み上げた。
私はトーストを食べた。冷めていた。




