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第九話
曇天の中、全身黒い恰好の彼女と参列している。
これはなんだ、ああ、これは葬式だ。今日は「先生」の葬儀の日だ。
大変世話になった方が亡くなったのに、ちっとも悲しくない。彼女なんか泣いていないどころか、含み笑いすらしている。そんな不謹慎な横顔さえも綺麗だ。
君は夜のお店で働いていたのだろう、哀しそうな演技ぐらいしたらどうだ、と心にもない説教じみた事を口走る。
彼女は憤然とした表情で足早に消えてしまった。
彼女がいなくなってからも毎日のように彼女の夢を見る。彼女への恋着がそうさせているのだろうか。現実のお店では彼女には会えないというのに。どちらが現実で、どちらが夢の方が僕にとって幸せなのだろうか。
「先生」ならその答えも教えてくれるだろうか。そういえば、現実の世界では「先生」にはもう長いこと会っていない気がするな、そんなことを考えながらテレビを付けた瞬間、僕は本当に一瞬、心臓が止まってしまった。
彼女が映っていたのだ。




