新たな隠し部屋
「疲れた……どれだけ変な噂が立ってんだよ。少しは噂される方の身になれよな。」
噂話を信じたクレアの誤解を全て解き、部屋に入った俺、シアン、ラーシェ、カゴットの四人。クレアに促されて席に座った俺は、机に突っ伏しながら疲れた声で愚痴を零していた。
「皆、噂話は好きですからね。仕方ないですよ。」
「まぁ、そもそもの話。変な噂が立つような事はするな、という話ですけどね。」
「その原因を作った奴が言うな。」
まるで自分は関係ないかのように言うラーシェに、身体を起こさないまま恨むような視線を向けて俺は言った。
「それで皆は何をしに来たの?四人で来るなんて珍しいよね?」
ハゲ事件について三人で話していると、なかなか本題を話さない俺達にクッキーを食べていたクレアが用件を聞いてくる。
「用があるのはラーシェとカゴットの方で、俺とシアンは付き添いなんだけどな。」
「そして私達の言いたい事を代弁してもらう為に、入浴剤を渡す条件でアレク様に来てもらいました。」
「という事で、アレクの兄貴。ガツンとクレアさんに言ってやってくだせぇ。」
「なんでカゴットは三下ムーブが上手いんだよ。あと、お礼で渡すなら入浴剤以外にしろ。」
急に下っ端役をするカゴットと頑なに入浴剤を渡そうとするラーシェにツッコむと、頼まれていた話をクレアに話す。
「部屋に来た時にも見たけど、最近クレアはいろんな使用人にお使いを頼んでるだろ。」
「うん、ちょっと忙しくて手が離せないから、代わりに行ってもらってるの。」
「で、カゴットとラーシェが言いたいのは、そのお使いの頻度が多いせいで仕事に支障をきたして迷惑だから、今すぐやめろだとさ。」
「ちょっとアレク様!?別に私達は迷惑とまでは言ってませんよ!」
「そんな言い方をして俺たちに矛先が向いたら、どうするんだ!?お願いだから、オブラートを何重にも包んで言って!」
自分が言いやすいように少しアレンジを加えながらクレアに内容を話すと、後ろからラーシェとカゴットが悲鳴のような声で抗議してきた。
「うるさい奴らだな。文句があるなら、自分で伝えればいいだろ?」
「それが出来たら苦労しませんよ!」
「俺たちが言うよりもアレクさんの方が安全だと思って頼んだんだから、あんまりクレアさんを刺激するような事は言わないで!?こっちに過重が来たら、わざわざ頼んだ意味がないだろ!」
「むしろ俺としては、一回くらい本気の過重を受けてみろと思うけどな。で、どうなんだクレア?お使いをやめる事はできるか?」
注文の多い二人に本音を漏らしながらお使いについてクレアに聞くと、悩む表情をクレアは見せた。
「うーん、お仕事で困ってるならやめたいけど、あと少しなんだよね。」
「何があと少しなんだ?」
「というより、何故そんなにお使いを頼んでいるのですか?」
「それは……まぁ、見せた方が早いか。ちょっと待ってね。」
そもそも論として、お使いについてシアンに聞かれた事で少し言葉を止めるクレア。しかし諦めたように呟くと、俺達に待つように言って入り口にあるパネルの方へと歩いて行く。
「あーあ、本当はもっと後に教えて驚かせたかったんだけどな。」
残念そうに言いながら、秘密の部屋を見せる時よりも長くパネルをピッピッピッピッとクレアが押していく。
そして最後のボタンが押されると、部屋全体を軽く揺らすほどの振動を起こしながらクローゼットが置かれている壁が上に上がっていき、その裏に隠された壁と同じ大きさの両開き鉄製扉が左右に分かれて開かれると、その裏から一枚の木製扉が現れた。
「何を教える気なのかは知らないが、既にこの仕掛けが驚きなんだけど。」
「こんな所にも隠し扉が作られてたんですね。」
「もしかしてクレアさんの部屋って、本で読んだカラクリ部屋か何かなのか?」
「いえ、至って普通の部屋ですよ。ただ他の部屋に比べて、少し変わってるというだけで。」
「これのどこが少しだ。他の部屋に比べて、多いに変わってるだろ。」
隠し部屋の出現に俺達が驚く中、四人の中で唯一クレアの部屋の仕掛けを全て知っているラーシェ。改装に携わっているのもあってか部屋の作りをフォローするが、それに納得できる筈もなく当然のように俺はツッコんだ。
そして先に隠し部屋に入ったクレアに遅れて俺達も中に入ると、そこには大人の背丈はあろうかというほど大きな卵がクッションの上に置かれていた。
「あ、やっと来た。来るのが遅いよ。」
「それは普通に悪かったけど、その……何これ?」
「こんな大きな卵、どうしたんですか?」
遅れて入って来た事について言うクレアに謝ると、俺とシアンは目の前の卵について聞いた。
「これは王都に行った時に拾ったんだ。ほら、前に魔物を放し飼いにしてる島に行った話をしたでしょ?」
「島の話は聞いたけど、こんなデカい卵は初耳なんだけど。」
「こんな大きな卵、よく持って帰れましたね。影にも入らなかったでしょ?」
「うん、だから卵はシューリンガンちゃんの家で預かってもらって、改装が終わった時に速達で送ってもらったの。」
「そこでシューリンガンが出るのか。」
「知り合って日が浅い筈なのに、こんな大きな卵を何日も預かってもらえるなんて凄いですね。そのシューリンガンという方は、どんな子なんですか?」
俺達の話を聞いたラーシェが、シューリンガンについて聞いてくる。
「デカい家に住んでる、脱走が大好きなクレアの友達だよ。姉さんと王都を観光してる時に、偶々知り合ったんだ。」
「脱走してる時に?」
「脱走してる時に。」
確認するように聞いてくるカゴットに、同じ言葉を返しながら俺は頷いた。
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