5回表 この強心臓っぷりが
『強さ議論』
ここで選手たちの強さを比較してみよう(唐突)。
いろいろなデータを参照し俺独自の感性で投手と打者をわけずにランクをつくった。
打者と投手が同ランクの場合、対戦したら打者が3割弱程度の打率を残せると思ってもらいたい。
俺のなかで格付けはこうなっている。
S級上位
・屋敷慎一
S級中位
・泡坂(投手) ・置鮎 ・中原潔(全盛期)
S級下位
・泡坂(打者) ・風祭 ・須藤
A級
・佐山 ・今村 ・桜 ・比叡
B級
・中原 ・アダム ・芹沢 ・貴船 ・久世 ・霜村……
あくまでこの試合途中までの成績から算出したランクだ。
現実の試合でこの手の格の違いなど簡単にひっくり返ってしまうものなのでこの表にはまったく意味はない。弱者が強者を喰う瞬間を俺はたくさん観てきた。
自分を最強格に迷いなくおけてしまうこの強心臓っぷりが恐ろしくも頼もしい。
『泡坂の世代』
青海ベンチの様子をざっくり探ってみよう。
まずは佐山。普段は積極的に声を上げチームメイトの士気を盛り上げる役割をこなす陽キャなのだがいまは違う。
監督が声を上げているというのに集中力を切らし、スタンドの観客席に自分の父親を探している。片城のプライヴェート暴露作戦が功を奏したようだ。攻守ともに隙ができつつある。株価はダウン。
試合にでてない置鮎は悠揚迫らざる態度だった。ベンチで泡坂の隣に座りイニングの間毎になにか話しかけている。泡坂に意見できる同格のピッチャーがベンチに控えているとか人材充実しすぎだろ青海高校……。株価はアップ。
風祭は2打席ノーヒット。当たりが良いが桜のボールをヒットにしきれなかった。長打を狙いすぎなのか、それとも新しい技術を試しているのか……。一応元チームメイトなので知っていたが、中学時代から泡坂と比較され続けた男だ。ここで4番に本領を発揮されたら松濤の勝利は消し飛んでしまうだろう。株価はダウン。
今村はタブレットで松濤のデータを復習していた。こいつは1度出塁している。だが3回のチャンスで凡退したのはいただけない。そしてキャッチャーとしては失格だ。泡坂をリードして俺を2打席とも止められなかったわけで、その時点で落第点。
こいつはどんな手段をもちいても俺の記録を止めるべきだった。そうすれば満員の観客は泡坂を称賛し歓声を送り、挑戦者である松濤に対し興味をなくし好プレーに拍手を送ることもなくなったはずだ。いつもどおりこの神宮球場を自分たちの本拠地としてプレーできたはずだ。なので株価はダウン。
泡坂はチームの円陣に最後に加わった。
この男は集団においてアウトサイダーであろうとする。群れの中心に収まりたがらない。リーダーシップをとらない。試合中はプレーにのみ集中し誰かに指示をだすことも滅多になかった。
(俺の持論だが)ある集団の筆頭にコミュ力など必要ない。そいつの実力だけでチームの中心に位置づけられてしまうからだ。泡坂は背中でチームを引っ張れる。
株価は維持。




