机上の空論ですけれど
2回戦
巌谷0対13松濤(5回コールド)
巌谷00000|0
松濤3280×|13
3回戦
桜上水0対松濤10x(6回コールド)
桜上水000000 |0
松濤121204x|10x
東東京予選の2回戦から登場した新設松濤野球部、中学時代公式戦不出場の桜が巌谷を5回無安打、さらに都立の桜上水を6回無失点に抑える。
……だが大差のついたゲームで全力投球を続け試合中にも試合後にも勢源やチームメイトから説教、説得を受けるも桜は無反応。
勢源「能ある鷹は爪を隠すとかねぇのかおまえは?」
桜「……」
攻撃は2試合とも早いイニングから先発投手を打ち崩し試合の趨勢を決めた。ホームランも2試合で4本という新参チームにはありえない好結果。このチームの才能は通用する。
2試合とも結果、内容とも相手を寄せ付けなかった。1年生主体のチームが快進撃を開始した。
観客の注目を浴びていたのは『打撃王』中原潔の息子である中原だった。中原は打席に立つたびカメラのシャッターを切られ、そして守っている三塁に打球が飛ぶたびに歓声が上がる。そういう球場内のちょっと異常な空気にはすでに中原は慣れていたようで淡々とプレーしていた。2戦トータル7打数3安打(いずれも単打)に1盗塁、無失策。それが中原の残した成績だ。まぁ平凡だ。うちのクリーンナップとしては。
父親と同じ野球さえ選ばなかったらこんな珍獣あつかいされずに済んだはずなのだが、二世は意に介さずこう言った。
「親の七光り呼ばわりなんて気にしない。俺は俺だ。観客の反応なんて知ったことじゃねぇ。それに桜と違って俺はこんな雑魚相手に本気なんて見せない。決勝、青海相手にとっておくことにするよ」
だそうな。
4回戦
松濤14対2平田義塾(7回コールド)
松濤6010106|14
平田義塾0001001|2
得点力については大会前から自信があったチーム松濤だが、実戦で打線がつながり効果的に得点を重ねられるかは疑問があった。俺や比叡、中原、アダムと好打者はそろっていたが、それだけで2戦連続でコールド勝ちできるほどの得点力に結びつくはずがない。
塁に走者を溜めなければ単打で得点を奪えない。打者×9ではなく打線を形成しなければチームとして機能しているとはいえないわけだ。
キーポイントは9番打者の片城だ。
勢源「下位打線(7番~9番)が大事になる。下位からチャンスをつくって上位が打つパターン。そして出塁したらホームに還って得点しなくてもこちらのアドヴァンテージになるんだ。残塁してもアウトにならず併殺されなかったら打順が一つ先に廻ることを意味する。うちの1番は今屋敷なんだから、試合中1打席でも屋敷に打順が廻ればそれは=こちらにとってのチャンス、あちらのとってのピンチを意味するってわけだ」
片城「安打製造機な屋敷先輩の前にランナーを溜めるためにも下位打線強化は重要課題でした。僕は相手バッテリーの配球を読むことに長けていた。中学のときからそれだけは本当に研究してましたから……。あとは狙い打ちでヒットを放ち、ボール球に手を出さなくなれば出塁率は向上する……ってことになりますね。机上の空論ですけれど」
片城はその空論を実際に実行してみせた。
この試合ヒット2本を含む3出塁。9番打者に打てるバッターがいれば上位で塁を埋め下位で還すことも、またその逆も望めるということになる。結果は見ての通り松濤打線爆発なわけで非常に心強い。
中学時代3年間中体連でもシニア等でもまったく出場記録がなかったこともあり桜・片城のバッテリーは2試合無失点+打撃成績がそこそこという好結果を残し高校野球ファンという正体不明な人種のの耳目を集めてしまったようで、毎日自己検索していても(するな)少しずつこの二人の名前がヒットすることが多くなりまだ注目されていない俺はジェラシーを感じなくもなかったりする。
投手陣もしっかり試合をつくっている。
この試合まではほぼ1年生なチームが高校生相手に投打ともに通用している内容だったのだが……。




