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甲子園4連覇チームを倒す話  作者: @tokizane
松濤高校野球部
12/102

チームメイトだからって避ける選択肢はねぇよ

   *


「あの2年に投げてみてぇ」

「無謀ですよ桜君」

「確かにあれに勝てっかどうかは正直微妙(びみょー)だが……。なんのために2年間鍛えてきたと思ってるんだ。敵は全員ブッ倒すって目標があったから努力も苦じゃなかった。チームメイトだからって避ける選択肢はねぇよ」


   *


「……」

「まだ黙ったままなのかこいつ」と俺。

「……」

「こいつ喋っているところ見た奴はいねぇのか!」

 勢源が部員たちに問いかけるが一人を除いてみんな首を横に振る。

「同じクラスの奴は?」

 ようやく一人が挙手する。キャッチャーの片城だった。授業中は必要なときだけ喋るそうだ。部活中は喋る必要はないというのか。

 四月になって入学式も終わりいよいよ野球部として正式な初練習である。

 整備されたマウンドに立っているのは長身の男だった。

 名前は桜。

 その名前は本人からではなくキャッチャーの片城からきいた。

 桜はキリリとした顔で俺を見下ろしている。

「桜君とは中学一緒なんですよ」と片城は言った。

「普段からこうなの?」

「いえ、中学では普通だったんですけれど……粗暴な人間なのでチームの雰囲気を大切にするため黙っていることにしたらしいです」

 そんなことある?


「……」

 会話に混ざらない。

 キリッとした顔をしながらグラブを片手にボールを弄んでいるだけ。早く投げたそうにしているのはいいけれど。

 マウンドに立つとその長身が一層際立つ。肩周りを見ると筋肉もそれなりについてそうだ。

「えー訛りがキツいから隠してるとか?」

「違いますよ」

「外国育ちで日本語喋れないとか?」日系人?

「日本育ちのバリバリ日本人ですよ」

「……」

 不可解だ。

 ともあれ俺が味見をすることになった。

 桜が投手として一流でなければスタートラインに立つこともできない。青海に勝つ前に都大会を勝ち上がらないとお話にならないわけで。

 俺はバッターボックスのまえでリラックスする。

 グラウンドにはそれぞれポジションに着いた野手が七人いた(一人足りない)。俺が任されているファーストには本来ライトの勢源が立っていた(桜のボールを間近で観察したいということで)。

 首筋にかかる程度の長さの髪をした『女』はショート、

 練習中は長めの髪を後ろでまとめている例の『美男子』はライトについていた。


 それはおいておいて実戦形式の練習。打球が飛んできたらホームに返球することになっている。ピッチャーの桜だけではなく野手陣の守備力も試されていた。

 俺が打つと断言したから守備練習もかね守ってもらうことにした(同レヴェルの打者と投手が対戦すれば守備練習になるほどボールは飛んでこない)。


 俺の言葉をきいて露骨に不愉快そうな顔をする桜。


 ……キャッチャーマスクを被り、桜と肩慣らしの投球をしながら片城が語る。

「桜君も僕も中学時代野球部じゃなかったんです。僕は放課後ずっと桜君が投げるボールを受けていた。『壁役』ですよ。投げたあとちゃんと返球してあげる壁。公式戦なんて出たことない」

「ええ……(困惑)」

「ときどき草野球に参加するくらいのことはしてましたけれど。――だから特待生じゃなくて一般生が入部できる学校を選ぶしかなかった。松濤高校は好都合だったんです。創部一年目ですからまず試合には出られる」

 自信ありすぎだろ。同世代のライバルなんて眼中にないのか。

「どうして君は壁役なんかに甘んじたの? 桜に命令されたの?」

「イジメられていた僕を助けてくれたんです。僕にからんできた上級生三人相手に一人で立ち回って倒してみせた。それまでただの他人クラスメイトだった僕に。それだけで充分でしょう」

 そう言って片城は勢いよくボールを桜に投げ返す。けっこういい肩してるじゃないか。

「そういう浪花節嫌いなんだけど」

「桜君は屋敷先輩と勝負がしたいそうです。変化球ありでかまいませんね? 球種はあらかじめ伝えておきましょうか?」

「ネタバレはなしのほうが楽しめるだろ?」

 俺が打つ時点で結果はもう見えているが。


 打った。


 一年生投手桜のボールを俺は完全に打ち崩した。

 何球か外野に運んだあとは後輩たちの守備能力を見たくなって、各ポジションの守備範囲ギリギリの位置に打つ。

 ショートの彼女はグラブの扱いが上手い。

 センターの『ハーフ』はバズーカみたいな返球してきた。

 ピッチャーの桜もフィールディングは悪くない。片城と二人きりで野球やっていたという割には実戦でもすぐイケそう。


 桜は最初、ひきつった笑みを浮かべていたが、俺の連打が止まらず冷や汗を流し始めた。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


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