第一課題は投球
4月上旬。
「対戦相手には泡坂だけでなく他に三人の超高校級のバッターがいる。他の五人も青海のレギュラーだからそのポジションで全国一、二を争うレヴェルのプレイヤーだ。簡単な打者なんて一人もいない。こいつらを抑える方法を見つけ出さない限り俺らに勝ち目はねぇ……!」
クラブハウス正面のモニターには『泡坂の世代』と称される五人の選手の姿が映し出されていた。野手三人と投手二人の合計5名。
勢源の手元にあるタブレットと同期していて画質はかなり鮮明だ。すごい技術だと俺は思うのだが勢源は当然のように使いこなしていた。
「第一課題は投球、
第二課題は守備、
第三課題は攻撃。
これらすべての課題を克服しなければ青海相手に勝つことはできない」
例の『美男子』は勢源にたずねた。
「どうして攻撃は後回しなの?」
「打撃戦で勝つパターンはおそらくねぇからだ」
勢源は説明した。
将来MLBでプレーするであろう投手が二人いる……泡坂ともう一人、あの男が控えている。
青海相手には投手戦でなければ勝てない。最少得点で勝つから攻撃は後回しにしろ、と。
「まっ、納得したわ勢ちゃん。今のところはあなたが監督やってるんだから顔を立ててあげる」
「そうかよ。つぅかちゃんづけはやめろ。……そして野球っつうのは団体競技だ。『自分がやりたいようにやる!』じゃなくて『チームのために貢献できることをやる!』だ。長所を伸ばすことよりも短所を補うことを優先する。ゆとり教育の真逆だ」
野球部のクラブハウス内で部員8名相手に演説する勢源。
生まれついてのリーダー気質って奴なのだろうか。同級生や俺を前にしてもまったく臆面しない。自信満々で自分の正しさを微塵も疑っていない。
会って数日後に判明したことだが勢源は小学生のころリトルリーグの世界大会で優勝を経験している。つまり世界一の選手。そしてポジションは投手だったそうな(やっぱり主人公じゃねぇか!)。
だがこいつはピッチャーとしてプレーすることを希望しなかった。
*
「悪いな、中一のときにちょっとトラックと公道でタイマン張っちまってよ(素直に交通事故って言えよ)、一年半くらい身体を動かせなかったんだ。その間に身長も伸び止まったし運動神経もば完全劣化しちまった。だから選手は諦めてシニアで同い年の中学生相手に指導してたんだよ。全国大会で優勝したんだぜ。……残念だが投手としての俺はお亡くなりになった。棒球しか投げらんねぇのよ。バッティングピッチャーならやらせてもらうが――」
*
だから投手として名乗りをあげなかった、と。
手を挙げたのは『短髪の大柄な奴』だった。
「……」
そいつは自己紹介を始めるでもなく黙ったままだ。
それはともかく絶対に必要だった投手経験者を手に入れたわけで。
「勝ちゲーだな」と俺。
「早急すぎる」と勢源。




