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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第0章
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0-8 出発する前に

知らない天井なわけが無い。

この天井は僕達2人が泊まっている宿の天井だ。


「なんだ……」


別にロボットに乗って暴走して気を失ったとかそんなんじゃない。

開きっぱなしで防犯する気などゼロの窓の方を見る。

外はまだ暗い。


「なぜこんな時間に……どうせなら朝まで寝かせてくれたらいいのに」


ぶつぶつ呟きながらシーツをかぶり直し、また眠ろうとしたその時、ふと思い出した。


身分証明書だ。

確か、身分証明書の裏まで色々書いてあったが、宿を取った時にゆっくり見ようとか言って後回しにしたはず。

ポケットから身分証明書を取り出し、改めて能力ステータス欄を見る。


……うむ、見事に全てS+。


「問題は、この次だ……」


スキル。

スキルには2種類あるようだ。

その時その時発動しなければ効果を発揮しないスキル。

そして、常に発揮されているスキル、いわゆるパッシブと言うものだろうか。


「えぇと……なになに?」


スキル欄には、こうある。

総撃スキル Lv.10

反撃スキル Lv.10

会話スキル Lv.10

耐性スキル Lv.10

回復スキル Lv.10


まずは、この5つからだ。

……わけわからん。

下3つはわかる。

会話ってのは、簡単に言えば言語の壁をぶち破るもんだろう。

耐性は……あらゆるものに耐性が付くんだろうか。

回復は治っちゃうってやつか。

上2つがわからん。

総撃ってなんじゃらほい。

総……全ての、撃、攻撃?

えぇ……。


「なんじゃそのチート能力」


剣を持てば最強の剣士になり、杖を持てば最強の魔導士ってか。

……いや、魔法は杖なしで使いたいなぁ。


反撃ってなんだろう。

単純に、やられたらやり返すんだろうけど、どこまでが範囲なのかがわからん。


それが生命のみなのか……。


「ま、いいや」


普通のスキルはまぁいいだろう。

そんじゃ、次はパッシブ……ちょっとまて。


「回復スキルがパッシブに無いってことは、自動的に回復しないってことか……?」


まぁ、痛いようなことは極力避ける方向で行こう。


「よし、気を取り直して、と」


パッシブスキルだ。


上から順に行こう。

生命スキル

感応スキル

反射スキル

索敵スキル

対話スキル

適応スキル


……ちょっとまった、僕は元から頭がいいほうじゃないんだ、これ以上は置いておこう。


生命スキル。

……要するに生命力の強化、ということだろうか。


感応スキル。

感知しやすい、とかそんなだろうか。


反射スキル。

反射神経の強化、だろう。多分。

かるたとかこのスキルがあれば負けることは無いんだろう。


索敵スキル。

ブラッドウルフの特異種が出てきた際、蹴り飛ばしたが、もうすぐ来るというのが何となく分かるようになったのもこれが原因か。


対話スキル。

コミュ障が治るってことかな。


適応スキル。

環境に置いてかれて死ぬようなことは無さそうだ。

いや、そんな時代はすぐに進化はしないだろうけど。

まぁ、周りが多少変わってもすぐに馴染めるとかかな。


「もう寝よ……」


自身の力を把握しておくことは大事だが、そんなものを使わない状況にする方が大事だ。


……多分。


そんなことを考えながら再び眠りに落ちていった。





朝。

太陽が上り、大地に明かりを照らす。

体がもっと寝かせてくれと訴えてくる。

しかし、そうもいかないようだ。


「……起きて」


先程から体が揺さぶられている。

意外と優しく揺すられているので、それがかえって眠たくなる要因なのだが、当の本人は気づいていないだろう。


「……あと5分……」

「ダメ、もう起きないと」


これは厳しい。

日本なら……いや、日本の方が厳しいかも。


「あっちはちょっとでも遅れると怒声が飛んでくるからなぁ……」

「?」

「あ、なんでもない」


ともあれ、行き先は決まった。

理由は適当にでっち上げるとして、北の……


「北の……」

「……北の?」

「北の国」

「……スヴェール?」

「そうそれ」


スヴェール。

僕が落ちたこの国の名前は、確かタリシタンだったか。

まずは、移動の準備をしなきゃな。


「そのスヴェールにこれから移動するよ」

「……もう?」

「うん」


善は急げってね。

僕はベッドから起きると、サリナを急かし、朝ごはんを宿の1階で摂るとそのまま外へ出た。




まずは。


「何をするべきなの?」

「……馬車と、食料があれば、移動はできる」

「よっしゃ」


食料……食料?


まぁ買えるだけ買って、歩いていくとしよう。

女神様がアイテムボックスとか用意してくれてるだろ。


「そーれアイテムボックス」


そう言いながら手を出すと、何も無い空間に手が消えていった。


「おわ!?」


いや、空間が開いて、そこから別の空間に繋がっている、要はどこでもドアのような状態になっていた。


「ほえ〜……」


女神様マジで感謝。

とは言え、このアイテムボックスの存在も夜のうちに知っておきたかった。

実験とか色々したいし。


「まぁ、まずは買いに行くとしようか……」





宿から歩いて10分のところに、所謂商店街がある。

そこでは、ここで暮らしている人達用のものや、他の国へ旅に出る用のものと、普通の品揃えだ。

ただ、日本に比べると貧相、というだけで。


「さすがに比べる相手が悪すぎるか……」


もちろん、冷凍食品なんてものはなく、パッケージされているものすらない。

飲み物も売ってはいな……くはないか。


「普通に売ってるわ」


いかにも魔法使いって感じのローブを着込んだおっさんが水を売って……


「もしかして、自分で出した?」


まぁ、不思議では無い。

手のひらから水をちょろちょろっと出して、それを飲む。

嫌いじゃない。むしろ憧れてた。


だが、問題は、人だ。


見る限り50代のおっさん。

汗も滴るいい男……なのだろうが、残念ながらこっちの中身が同じ男なだけに逆に嫌悪感を抱く。

……いや、それは僕だけかもしれないが。


「ただ、おっさんは嫌だなぁ……どうせ出すなら可愛い子にして欲しいな」


そうすれば、ナンパ……もとい勧誘をするのに。

というか、スキルにそういう系のスキルないのかね。

今度探してみよう。

もし習得してなければ、習得しよう。


「さて、そんなことより、だ」


おっさんに気を取られていたせいで、サリナを完全に見失った。

あの綺麗な銀髪は、同じような髪の色の人が意外と沢山いるせいで見分けられない。


「いや、己を信じるのみ……さすれば、自ずと道は開けるであろ」

「……こんなところに」


開いた。

やっぱり信じるべきは可愛い女の子か。


「や、ごめんごめん」


声をかけられた方に向くと、既にサリナは背中に背負ったリュックをいっぱいにしていた。

というか、リュックはどこから……。


「……買い物終わった。次の用事」

「あ、うん」


とりあえず、出発前に荷物をアイテムボックス(仮)に入れとこう。

……勝手に入れたら軽くパニックになるだろうし、まだいいか。




続いて買うのは、馬、ではなく。


「簡易型のテント」

「テント?」


あ、そっか。

さすがに馬車の中では寝ないよね。

とは言え、簡易型ってどういう意味なんだろう。

組立式ってことなのかな。


「おじさん、これを」

「あいよ」


テントを専門店としている店に入ると、いろんな大きさのテントが目に入る。

まぁ、物色する暇もなくサリナは買い物を済ませたみたいだから、これ以上はここにいられないんだけど。


「というか、値切りは……」


異世界って値切りするもんだと思ってたけど、偏見だったか。








「それじゃあ、出発」

「あいあいさー」


サリナは、先程食料やら何やら買って詰め込んだリュックを背負っている。

ちなみに僕は、テントを既にアイテムボックスにぶち込んだので、手ぶらだ。


「……荷物は」

「……ですよねー」


まぁですよねも何も、どうせ伝えるつもりだったのだ。

仲間に隠す理由など、何も無い。


「えっとね……」


簡単にアイテムボックスの説明を終えた僕は、数分、サリナに変な目で見られた。


ともあれ、準備は整った。


「いざ!次なる美少女を求めて!」

「……?」


まずは北へ!



ついでに、戦えるように練習しておこう。

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