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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第3章 ハンター生活
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66 いざ、出発、の前にトラブル?

アリスを宥めて、僕達は情報を照らし合わせることにした。


まず最初に口を開いたのは、僕だ。


「私が聞いた話によると、どっちもロクでもないパーティーという話だけど」

「あら、私も同じような話を聞いたわよ」


僕が聞いた話をきわめて簡潔に告げると、それにルノウも賛同してきた。

2人でしか情報を集めていないとはいえ、集めた場所はギルドだ。

ロクでもないパーティーを擁護するところなんて、そことグルに違いない。もしくは、いじめられているかだが。


「特に気を付けた方がいいって言われたのは、『バレット』の方なんだけど」

「...あら、そうなの?」


しかし、もう一つ付け加えると、ルノウはそれは初耳だという顔をした。


僕はそれに、こくりと頷く。


「うん。まあ、もしかしたら事情があるのかもしれないけど...とにかく、このパーティーには特に注意をしなきゃいけないかもね」

「そうね。...依頼は、明日、だったかしら」


依頼は明日。時刻は...適当な時間帯にギルドに向かえばいいだろう。


僕はそう結論付けると、うとうとしているアリスを抱えてベッドに寝転がる。


「それじゃ、ルノウも早く寝なよ?」

「いえ、私も一緒に寝るのよ」


僕がそういうと、ルノウも同じベッドにもぐりこんできた。

僕の予想では、もう少し1人で考え事でもするのかと思っていたのだが、予想が外れた。


明日は、初めての依頼だ。気合いを入れていこう。












「おはようございます、アイラ」

「...うん、おはよう」


ルノウの朝の挨拶が聞こえてきて、目を開ける僕。

そうだった、この世界にはアラームなるものが無いんだった。


被っていたシーツを手でどけ、起きあがろうとしたが、体がいつもより思いことに気がつく。

重りを付けながら寝たような記憶は無いのだが、と思いつつ下に視線をずらしていくと、そこにはアリスがいた。

なるほど、そういえば抱えたまま寝てしまった。


「早く準備なさい。もう出るわよ」

「え、もう?」

「本当は、準備に使う時間を考えて起きたのだけど、ギルドの人が来て、もうすぐ依頼の予定時間だと伝えに来たのよ」

「...律儀なこって」


思わず、それって効率悪くない、なんて出てきそうになったが、この世界ではそれが常識なのだろう。ならば、この世界の文化の発展は、この世界の人に任せるとしよう。

まあ、多少なら口を出すのだけれど。


「とにかく、早く準備をしないと。じゃないと、目を付けられてしまうわよ」

「...多分だけど、遅れようが何しようが、目を付けられるんじゃないかなぁ」

「?」


僕がそう言っても、ルノウは不思議そうに首をひねるだけだった。

しかし、僕も中身は男だ。このことに関しては確信を持って言える。


ルノウは見た目は絶世の美少女だ。まあ、見た目通りの性格をしているかと言われれば、否だが。

それに加えて、アリス。アリスもかなりの美少女だ。ここが日本なら犯罪だが、それでも美少女なことには変わりないだろう。美幼女と言うのだろうか。

そして最後に、僕だ。

女神さまのせいで、美少女にされた僕は、中身は男でも、外見は普通の女の子だ。


美少女2人と美幼女1人がいるパーティーなんて、絶対に目を付けられる。


「...これは、人を寄せ付けない実績が必要だな」


僕は、そう確信しながら、アリスと一緒に準備をするのだった。







「お待たせしました」

「いえ、気にするほどの誤差ではありません」


僕達『アリス』がつくと、そこには既にほかのチームだと思われる人たちと、ギルドの職員がいた。


「それでは、参りましょうか」


職員はそういうと、この国の門へと向かい歩き始めた。

それについていきながら、僕とルノウは小声で話を始める。


「ね、ルノウ。ヒジリとかってさ、意外に学園から出てこないんだね」

「当たり前よ。そもそも、学園からは不用意に出ないことと規則で定まってるのよ。今頃私達のことは、反面教師として扱われているんだじゃないかしら」

「そ、そうなんだ」


ともあれ、これで僕が不思議に思っていたことは解決した。それともう一つ。


「僕達の情報が学園外に漏れる可能性は?」

「それは...そうですわね、2割、と言ったところでしょうか」

「2割もあるの?」

「2割で済んでいることに感謝すべきね。...まあ、私も正確に把握を出来ていないから、憶測の域を出ないけど」

「ふうん...」


そして、僕達は門へと到着した。

言わずもがな、僕はそこで何らかしらの学園側のアクションがあると踏んでいたのだが、何もなかったようだ。

ギルド職員が、口を開く。


「みなさん、こちらが、今回の依頼を出した商人、シェイナーさんです」

「よろしく」


ギルド職員にシェイナーと紹介された人は、僕が想像していた商人の恰好ではなく、緑を基調とした、執事服のようなものを着ていたのだ。

これには流石のルノウも驚いたのか、普段よりも少しだけ目を見開いている。

この中で驚いていないのは、恐らくアリスだけだろう。

まあ、アリスは驚くも何も、僕の背中で寝ているのだが。自由奔放にも程がある。


挨拶に続けて、『月下』と『バレット』のリーダーらしき人物が挨拶していく。


「私は『月下』のリーダー、クラウスです」

「俺は『バレット』のリーダー、マイグだ」


そして、全員がこちらを向く。

ふむ、困ったことになった。私達のパーティーにはリーダーなんて存在しないというのに。

そもそも、チーム名ですら、昨日流れで決まってしまったのだし。


「どうしよう、ルノウ」

「どうするも何も、私かあなたの2人しかいないじゃない。どうするのよ」

「...うーんと、じゃんけんでもしようか」

「じゃんけん?」


全員に背中を向け、何をしているんだという視線を受けながら、相談をする僕達。

というか、だいぶ前にも、サリナとこんな感じのことがあったような...進歩していないということだろうか。


困った僕は、日本ではいつもやっていた、困ったらじゃんけんというものを提示するが、ルノウはそもそもじゃんけんを知らないようだった。

そのことに更に困る僕だったが、それも一瞬。いい説明方法が浮かんだのだ。


「ルノウ、三すくみの関係ってわかる?」

「...ええ、まあ、実際にその関係性を目にしたことはないけれど、知識としては」

「なら、話は早い」


そして、僕は三すくみの関係に基づき、じゃんけんをルノウに教えていく。

日本で呼んでいたラノベで、じゃんけんの説明に苦労している話があったが、この方法を使えば、誰も苦労しないで済むのだ。

と思っていたのもつかの間。


ぐーは石で、ちょきははさみ。ぱーは紙だということを説明したところで、最大の難関はやってくる。


「それはわかったんだけど、どうしてはさみは石に負けて、紙は石に勝つの?」

「...えーっと」


じゃんけんがどうしてそうなったのかなんて、じゃんけん創立者でもない限りわかるわけがないのだ。

ここにインターネット環境があって、wikiにでもアクセスすることができるというのなら話は別だが、ここにはインターネットは無いし、仮にあったとしてもアクセスする端末が無い。

困り果てた僕は、ルノウの質問を無視して、じゃんけんを開始することにした。


「そんなことより、今はどっちがリーダーなのかって話でしょ!」

「そうだったわね。それで、勝った方がリーダー?」

「...負けた方がリーダーで」

「それだと気分が上がらないような気がするのだけど」

「いいからいくよ!」


ルノウの言い分にも一理あるが、今はとにかく早く決めなければ。

リーダーが自己紹介する場所でじゃんけん(異世界では意味のわからない方法)をしているなんて、バカにされていると思われても仕方がない状況だ。


お互いに『じゃんけん』と言い、『ぽん』で勝敗が決した。

時間に押されている僕達は、幸いにも、『あいこでしょ』が発生することは無かった。

かくして、決まったリーダーは。


「...リーダーの、アイラです」


僕だった。

なんてこった。

自分はやりたくないから、じゃんけんという方法をとったというのに。

そんなことを考えていると、向こうの方からくすくすと笑い声が聞こえた。


「...?」


誰だ笑ってるやつは、と思いながらその声の主の方向を見ると、『月下』のチームと思われる場所に、女の子が一人立っていたのだ。

しかも、かなりの美少女。


「...あ、ごめんなさい、あなた達のやり取りが、思いのほか面白くて...」


美少女は、謝りながらも笑っている。

普段の僕なら、そのまま怒りに身を任せてぶん殴っているところだが、相手が美少女だとそうもいかない。

なるほど、可愛いは正義と言うのはこういうことを言うのか。僕は身を持って学んだようだ。


「...まあ、それはいいや。えっと、あなたの名前は?」

「くすくす...ごめんなさい、私の名前はリリィ。あなた達は?」


僕が名前を聞くと、その少女はリリィと答えた。

リリィというのは、日本にいたときには未熟な、みたいな意味だったような気がするが...この世界では英語というものはあるのだろうか。

魔法で火を出すときもファイアと言うし...何かあるのだろうか。


「えっと、僕の名前はアイラ」

「私はルノウ。こちらはアリスです」


僕が普通に自己紹介し、ルノウは自身の自己紹介と、僕が背中に背負っているアリスの紹介も兼ねた。

それを聞くと、リリィは頭に手を当て、考え事を始めた。


「ルノウ...どこかで聞いたような」

「!」

「...あら」


僕が、自分でもわかるように動揺し、ルノウがポーカーフェイスで目を細める。

そこに、『月下』のリーダーのクラウスが余計な口をはさんだ。


「ああ、それなら僕も聞いたことがある。確か、ここのアズリレウス学園の学園長もルノウって名前だったな」

「ああ、そういえばそうだったわね。すごい偶然ね」

「はは...そうですね」

「みたいね」


幸い、クラウスが言ったことは、リリィのおかげで偶然、奇遇だねなんて話で方がついた。

内心どころか、態度にまで出ていたであろう僕の気持ちだが、リリィに察されていないことを祈ろう。


そのまま、商人のシェイナーさんが用意した馬車にそれぞれ乗り込んでいく僕達。

馬車は全部で2つ。シェイナーさんが言うには、男と女に一応用意したとのこと。

馬車に乗り込み、移動が開始した。


「...」

「...」

「...」

「わあ、ますたー、うごいた!」


女子3人は静かに、アリスだけが元気な馬車内だった。

ルノウと僕がどうして黙っているのかはわかるだろう。余計なことを喋ってぼろを出さないようにだ。

どちらかと言うと、ボロを出すのは僕だけなのだが、ルノウも念のためにと黙って馬車の外を眺めている。その点、僕はアリスを見ていればいいから安心だ。

しかし、この気まずい空気は何なのだろう。


「...あ、あの」

「!」

「あら、どうかしたの?」


突然声をかけられ驚く僕と、いつものルノウとは違った、外向きのルノウが対応する。

アリスは、馬車の揺れで段々と眠くなっているようだ。

寝る子は良く育つ、ってやつだろうか。

僕も育ちたいから、アリスと寝ようか。


「私が今から聞くことは、オフレコでお願いします。その方が、お互いのためでしょうから」

「...?」

「オフレコ、ね」


ルノウはオフレコと言われて首をかしげているが、僕はわかる。

さすがはお兄様のアニメで耳に残っているからな。


とはいえ、だ。

オフレコという言葉に対して、ルノウが聞いたことないような顔をしていることと、このリリィがいつも使っているかのように自然と口から出てきたということ。

十中八九、転移者か転生者だ。


「はい。...ルノウさん、学園長さんですよね」

「...そうね」

「そうですか」


リリィの顔を見て、話しても大丈夫だと判断したのか、ルノウは意外にもすんなりと真実を告げる。

それが意外だった僕だが、まあ、ルノウが大丈夫だと判断したのなら、大丈夫なのだろう。心配することは無い。


ルノウの口から、本人の口から真実を聞いたリリィは、見た感じ安心しているようだが、何かあったのだろうか。


「あの、どうしてわざわざ聞いたんです?」

「そうですね...私の個人的な要件、と言いましょうか」

「個人的な要件?」


僕がそう聞くと、リリィが個人的な要件と返してきた。

それを聞いたルノウは、顔を少しだけ厳しくする。その顔を見た僕は、なんとなく、ルノウがやってしまったのではないかと疑い始めた。


「ええ、そうです。詳しく言うと____」


リリィがそこまで言うと、つい先ほどまでそこに座っていたリリィの姿が一瞬で消え、気がついた時には、ルノウの首に手を添えている状態だった。


「あら、しばらく動かないでくださる? でなければ、この女の首が吹き飛びますわよ。転生者さん」

「...!」


リリィは、僕の目でも捉えきれないほどのスピードで動いたのか。謎が深まる一方だった。

手元にPCが無い時に限って、アイデアが出てくる。

そして、PCを起動していざ書こうとなると、アイデアが何一つ出てこない。

ツンデレな頭のようです。

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