67 ルノウという人物
今回は短いです。申し訳ないです。
それと皆様、ハッピーハロウィン、です(遅い)
「...あなた、何が目的なの?」
馬車に揺られる中、一番最初に口を開いたのはルノウだった。
リリィに己の命を掴まれているというのに、堂々としたたたずまい。流石は元学園長、と言ったところだろうか。
ルノウのその問いに、リリィは微笑み、答える。
「もちろん、命を狙って」
命を狙って。この場合、僕ではなく、ルノウの命を狙っているのだということは誰にだってわかる。
しかし、わからないのはその理由だ。
もしかしたら、ルノウが学園長をしている時に、何らかしらの恨みを抱かれている可能性もあるのだ。
とはいえ、僕が学園に来てからはそのような話も聞いていないし、それより前の話ならば、僕が知るよしもない。
「どうして私の命を?」
ルノウは続けて、質問を投げつける。
その顔は、かなり余裕にあふれているようだが、何か秘策でもあるのだろうか。
「...見せしめですわ」
そんなルノウの余裕ぶりが気に食わなかったのか、少し苛立ちを見せながら、リリィは律儀に質問に答える。
しかし、途端にルノウの首に添えているだけだった手が、ルノウの首をわしづかみにする。
「...!」
「あなたを殺して、その首をさらせば、この世界はかなりの打撃を受けるはずですわ。『ああ、この世界を護る守護者の一人が死んでしまった』と」
「守護者?」
ルノウとリリィの会話の中で、聞きなれない単語が出てきた。
『守護者』ってなんだろう。
「あら、アイラさんは『守護者』をご存じない?」
「...うん」
「ならば説明してあげましょう」
「ま、待って!」
僕の口からはその単語が漏れていたのか、僕が知らないことをリリィが反応し、その説明をしようとする。
しかし、ルノウがそれを慌てて遮った。
「...あらぁ、もしかして、ですけど。知られたくないんですの?」
「くっ...」
これまで保たれていた余裕の顔は、簡単に崩れ去ってしまった。
ルノウをここまで慌てさせる『守護者』という単語は、この世界では一体どういう意味を持つのだろう。
僕がそう考えているのがわかったのか、それとも説明する気だったのか。リリィはにやりと口を歪ませ、説明を始めた。
「昔、昔。あるところに神様がいました。まあ、この神様は後からそう呼称されたものなのですが、本当の名前は誰も知りませんので。そして、その神様は、世界を作りました。
大地を作り、命を作り、魔素を作り。そして、神様はこの世界を守護することに決めました。しかし、ある日事件は起きます」
ここで、リリィは一息つく。恐らく、僕に理解させる時間を与えているのだろう。
ルノウをちらりと見れば、小さく「やめて」と繰り返している。
「神様は、万能では無かったのです。神様が作った世界で自然に生まれた邪気にあてられた神様は、暴走を始めました。
世界は一瞬で壊れて行きました。これまで長い年月をかけて育まれていた文明も、何もかも全て蹂躙されようとしていたのです。
その時、3人の人間が立ち上がりました。その3人は、人間の中でも破格に優れていて、神様を止めようと立ち向かい、互角に戦いました」
つまり、神様が闇堕ちして、それを止めるために正義の味方が立ち上がったってわけか。
なるほど、どこのアニメだそれは。
「しかし、お互いの力は拮抗し続けているのにも時間の限界があります。仮にも神様なのです。人間とは、力の総量が違います。
そこで、3人は決断を下します。そこで行ったのが、『封印』です。『封印』は、あらゆるものを封じ込めることができますが、これには代償が必要でした。
人間2人分の命です」
...僕にも、この先の話はなんとなく察することができる。
恐らくだが___
「3人のうち1人を残し、神様を封印することで、世界は護られました。めでたしめでたし。___さあ、もうお分かりですわね?」
「うん...ルノウが、その守護者の1人、ってことなんでしょ」
「その通りですわ。愚かにも、2人を見捨て、『封印』を出来るのが自分だけだということを利用して、今もなお生きているこの世界の未来への道標。そんなのを殺せば、この世界は面白くなると思わなくて?」
「...」
この話をしている間、ルノウはずっと小さく「やめて」と言い続け、僕が確信を突くと、それきり黙ってしまった。
この話が本当だとして、ルノウは何年生きてきたのだろうか。
きっと、何百年も、罪の意識にさいなまれ続けたに違いない。このことに関しては、確証が持てる。
根拠は、ルノウだからだ。
恐らくだが、何らかしらの魔法を自信に付与しているのならば、僕が見分けられるはず。しかし、その様子は見られない。
ずっと、ずっと、考えていたのだろう。
そして、同じような過ちを犯さない為に、学園を開き、罪滅ぼしをしていた。
...これは、僕の考えすぎだろうか。
「...失望したかしら」
「ルノウ...?」
「リリィの言うとおり、私はあの2人を見捨てたも同然のことをした。そんな彼らから逃げるために、学園を作った。
失望したわよね。一緒に旅をしている仲間が、こんな裏切りをした奴だなんて。...私のことは忘れなさい。そして、アリスちゃんとどこか静かな場所で幸せに暮らしなさい」
「ルノウ、何を言って...」
「きっと、私はここで殺される運命なのよ。そして、あの2人に会いに行く。...いえ、会えないかもしれないわね。私が行くのは地獄で、あの2人は天国だろうから」
僕には、ルノウが何を言っているのか、少しも理解できなかった。
代わりにわかるのは、ルノウが何かを諦めて、受け入れようとしているということだけ。
ほぼ無意識に、僕は手を伸ばす。
しかし、その手はルノウ自身に弾かれてしまった。
「行きなさい、アイラ。アリスちゃんとどこかに。きっと、幸せになれる未来が___」
「うるさい!」
そして、またもや無意識に、僕は叫んでいた。
そんな僕の行動は予想外だったのか、ルノウとリリィは驚いていた。
ああ、やってしまった。それでも、一度口に出したら止まらない。
「何諦めてんの、ルノウ! まだ旅をしている途中でしょ!
ルノウが昔誰だったかなんて、そんなことはどうでもいい。その時の罪を償おうとしていたのかもしれないし、その時の記憶ごと忘れてしまおうとしていたのかもしれない。
それでも、今ここにいるのは、僕の目の前にいるのは、ルノウでしょ!?」
「...!」
そこまで言い切った僕は、息切れを起こして荒く息を吸う。
僕の言葉をどうとらえたのかはわからないが、ルノウの様子からは、先ほどまでの、何かを諦めていたような雰囲気は感じられなかった。
そこで、よかったと安堵する僕。
しかし、次の瞬間僕が目にしたのは、ルノウの体と頭が、2つに分かれている姿だった。
「やだなぁ、お互いに和解しろって言っているわけではないのですわよ。...まあ、そこで食い下がったのは少々予想外でしたが」
「あ、あ...?」
ルノウの首が、足元に転がってくる。
そのまま転がってきたルノウの頭は、僕の足にぶつかって止まる。
その際に、ちょうど顔が僕の方を向いていて。
「....」
その顔は、嬉しそうな顔だった。
そこから先は、憶えていない。
ハロウィンは過ぎてしまったので、ハロウィンネタは封印です()
なんと言うことでしょう。ルノウの首が胴体とお別れしてしまいました。
アイラはそこから、リリィを殺してしまうのか、それとも、ただ気絶してしまうのか。
どっちなんでしょう。私にもいまいちわからないです()




