64 嫌な予感がするのは気のせい?
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→「嫌われたい男の子。好かれたい女の子」
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それはさておき、本編をどうぞ
再びギルドに入ってきた僕らは、座っている複数のパーティーに情報を聞き出しに行った。
ルノウと、僕とアリスのグループに分けて、それぞれで情報を集めていく。
「あの、すみません、『月下』というパーティーと、『バレット』というパーティーのことを調べているのですけど、何か知りませんか?」
僕とアリスが声をかけたのは、このギルドの中にいる人たちの中で一番優しそうな女性4人組のパーティー。
「あら、可愛い子たちね」「何、そのパーティーに憧れてるの?」「やめときなさい。『バレット』はロクでもないし、『月下』は気取ってるやつらばかりよ」
そのうち一人は既に酒でも飲んでいたのかつぶれているが、3人は簡単に喋ってくれた。この3人にもお酒が入っているのだろうか。
僕は、気になった部分を聞き返す。
「ロクでもない?」
「ええ、そうよ」
3人の中でも一番優しそうな、黒のボブの人が答える。
「パーティーを調べてるってことは、そのパーティーと共同依頼でもやるんでしょうけど、『月下』はともかく、『バレット』には気をつけなさい」
「具体的には?」
「そうね...食糧って、それぞれが各自で持ってくるのが当たり前なんだけど、そこのパーティーは、他のパーティーにたかりに来るのよ。あなたたち可愛いから、もしかしたらナンパでもされるんじゃない?」
「...それは、困りますね」
僕がそういうと、ボブの人は仰々しく頷いた。
「かくいう私も、一度ナンパされてるのよ。『食事をおごるから』ってね。まあ、私はそのパーティーの評判を知ってたから、断ることができたけど」
「なるほど、ありがとうございます」
僕はそう言い、アリスの手を引きルノウの元へと向かう。
本当なら他のパーティーにも情報を聞きに行きたいんだけど、ルノウと別行動というのがなんだか危なく感じたので、早いところ合流しようと思う。
ルノウの元へと向かうと、ルノウはなんだか困り顔だった。
どうしたのだろうか。
「どうしたの、ルノウ?」
「ああ、アイラ。ちょっとね...」
「あぁ? なんだ、まだ連れがいたのかぁ...いいぜ、そいつらもいれてやろうぜ?」「ぎゃはは!」「おい、それは俺の酒だろうが!」「先の飲んだもん勝ちだろうが」
ルノウが聞き込みをしていたパーティーは、世紀末にでもいそうな男達5人組だった。というか、最低な言葉が聞こえた気がするんだが、気のせいだろうか。
まさか、ルノウがここに自ら聞きに来たのだろうか。
そう思い、ルノウに聞くと、ルノウは静かに首を横に振る。
「ここに聞くつもりはなかったんだけど、あっちから声をかけられてね。流石にこちらから暴力を振るうわけにはいかないし...」
「なるほど」
この様子だと、あっちの男の言い方にルノウは気づいていないようだ。純情さんか。可愛いな。
しかし、これ以上無駄な時間を過ごすわけにもいかない。こんな奴らと話すよりも、アリスと話した方が有益だ。まさに月とスッポンだろうか。
僕は、ルノウの手をつかみ、男に言い放つ。
「すみません、僕よりも弱い人たちには興味はありませんので、これにて」
「え、ちょ、アイラ?」
そのまま手を引いてギルドから出る。
流石ギルド。依頼を受けることができれば、酒も出すのか。しかもこんな真昼間から。
僕でも、そこはしっかりしてほしいと思うのだが、それは日本人だからだろうか。
ギルドから出てくると、ルノウが口を開く。
「あんな時間から酒を飲んでるなんて、おかしいんじゃないかしら」
「おさけ~?」
よかった、僕がおかしいわけじゃなかった。
さて、知りたい情報は得られた。今日限りで泊めてもらえる宿を探して、そこで情報の照らし合わせをして、早めに寝るのがいいだろう。
「ルノウ、宿を見つけたら、得た情報を合わせてみようか」
「ええ、私もそうしようと思っていたわ」
そして、宿へと向かう僕ら。このあたりで一泊するのに一番安い宿はどこだろうか。
手当たり次第に探すのもいいが、一番早いのは、ここに住んでいる人に聞くのが早いだろう。多少はなれていても、僕のスキルがあれば一瞬でつくし。
ちょうど目の前に小物店があったので、中に入り、店主らしき人物に聞く。
「すみません、このあたりで一泊したいんですけど、一番安い店ってどこでしょうか」
「そうだな...ここから少し歩いた先にある、『エンシェント』なんてどうだろうか。そこはわしが知っている限りでは一番安いだろう」
「ありがとうございます」
店を出ると、そこにはルノウがいた。一緒に中に入らなかったのだろうか。まあ、それは別にどうでもいいんだけど。
「少し向こうに歩いた先に、『エンシェント』って店があるんだって。そこが一泊するには一番安いって聞いたよ」
「そうなの。じゃあそこに行きましょう」
そして、歩き出す僕達。そういえば、アリスがすごい静かだが、どうかしたのだろうか。
ちらりとアリスの方を見ると、アリスはなんだか思いつめた表情で前を見据えていた。こんな表情は始めて見るが...どうかしたのだろうか。
「アリス、どうかした?」
「ますたー、おなかへった」
...確かに、僕も少しお腹が減った。
どこかで食べ歩きできる店を先に探さないかとルノウに提案すると、ルノウは了承してくれた。
「ええ、そうね。私も少し小腹がすいてきたと思っていたの」
ルノウはやはり、気配りができる人物のようだ。
焼き鳥を食べた。正確には鳥と蛙が合体したかのような生物だが、味は焼けば焼き鳥だ。
「おいし~!」
「それはよかったわね」
アリスが心底おいしそうに笑顔でおいしいという。それを見て、笑顔になる僕とルノウ。
子供の笑顔は大人を笑顔にさせる。ロリコンじゃないよ。
「それで、『エンシェント』ってのは、まだつかないの?」
「うーん、もう少しだと思うんだけど...ああ、あれじゃないかな」
「えんしぇんと~?」
僕が指さす方向に、2人とも顔を向ける。
ねこじゃらしで猫と遊んでいるような気持ちになってなんだか楽しい。
「あ、あっちかも」「いや、こっちかも」「ああ、あれかな」「いや、こっちか」
僕が指を振ると、アリスは言わずもがな、ルノウまできょろきょろする。これが可愛いのだ。
しかし、そんな僕の指をルノウが掴む。
「...いい加減にしないと、あなたの指をきょろきょろさせるわよ」
「ひぃぃごめんなさい僕の指はそんなに横向かないです」
そして、『エンシェント』を指さす僕。
「あれが今回泊ろうと思ってるホテル...なんだけど」
「...なんだか嫌な予感がするのは気のせい?」
「奇遇だね、僕もそう思う」
僕が2人で遊んだのは、何も楽しかったからがすべてではない。
改めて、『エンシェント』を見る。
外観は、白の壁に緑の屋根。そこだけならまだいいのだが、なぜか店頭にいる客引きであろう人が、妙に扇情的な衣装なのだ。
一番近いのは中国のような衣装だろうか。
足は腰にまで届いているであろうスリッドが入っている。
ぶさいくな人がやっているわけではない。綺麗な人がやっている。だからこそ、一般的な、ただ泊るだけのホテルにしては嫌な予感がするのだが...。
「あら、こちらにご宿泊?」
声が、本気で男の人のだった。
「え」
「...」
「おなかへったー」
三者三様の反応をしている僕達だが、そんなことは関係なしとでも言うように、僕の手を引っ張っていく。
「こんなかわいい子が泊るなんて、私久しぶりに張り切っちゃうわよ~!」
「張り切るな~!!」
そのままの勢いで中に入っていく。
店内の様子は、謎のオカマ(?)の印象とは違い、落ち着いた内装だった。
「あら、結構いい感じじゃない」
「あっらぁ、この店がいい店だと気づくなんて、あんた結構良い眼して...かいちょーーー!!!???」
「ん? ...ああ、もしかして、エレガル?」
「なんでこんなとこにいんのよー!?」
「ま、ちょっとわけありでね」
僕が中で内装に見とれている間に、会話は進行していく。
なるほど、ルノウの知り合いだったのだか。だったら、心配はなさそうだな。
それにしても、とルノウがエレガルと呼ばれたオカマの衣装を触る。
「なんでこんなところにいるの?」
しかし、エレガルさんはルノウと会話をする気がないのか、そのまま喋りたいことを喋っていく。
「まったく、来るなら来るでいいなさいよ、もっと歓迎したのに!」
「ああ、私もう会長じゃないし、普通に1人に友達として扱ってくれれば」
「ああ、そうだ、この子たちは? かいちょーのお友達さん?」
「ええ、アイラと、アリスよ」
「まあまあ、見た目に負けず劣らずな名前ね!」
僕の気のせいだろうか。会話が成立しているのが、名前の部分だけだと思うのだが。
気になった僕は、ルノウに聞いてみることに。
「ね、ルノウ。会話が成立していない気がするのは...」
「ああ、それで変な顔をしてたのね。大丈夫よ。昔からこんなんだし、気にすることは無いわ」
「あ、うん」
昔からこんな感じだから、ルノウはなんだか慣れていたのか。
そこで、宿についている時計を見る。時刻はなんだかんだ既に夜の8時だ。
なるほど、それでアリスはお腹がすいたと言っていたのか。
アリスの腹時計は誰よりも正確だろう。
「あ、あの、エレガルさん、泊りたいんですけど」
「ああ、そうだったわね。こっちにいらっしゃい」
そう言われ、一泊代だけ払い、指定された部屋に向かう。
ここはご飯が出ない代わりに宿代が安いので、何日か宿泊するつもりなら、3食全て自分で調達しなければならない。
普通は、宿代とは別にしても、食事を出すのが普通だとルノウが言っていたのだが、ここの店にはいかんせん人がいない。エレガルさん含めて3人だ。
逆にどうやって3人でこの宿を運営しているのか気になったが、ここは異世界だ。その状況でも普通なのだろう。
「明日は、少し早起きしましょうか」
「そだね」
「ますたーごはん」
「あ、しまった」
ルノウとの会話で、今日はこのまま寝そうな雰囲気だったが、アリスが僕の服の裾を引っ張って、ご飯を所望してくる。
ああ、なんて可愛い動作なんだ。
「それじゃあ、何が食べたい?」
「ますたーのてりょーり」
手料理。手料理か...。
生前得意料理だったのは、チャーハンだが、アリスが喜んでくれるだろうか。
いや、僕が作った物ならなんでも喜んでくれるような気がする。それは気のせいだろうか。
「それじゃあ、チャーハンでも作りましょうか」
「ちゃーはん?」
「おいしそう!」
ルノウが可愛く首をかしげ、ありすが名前の響きだけでおいしそうだという。
ふむ、ここはサプライズで、実際に出すまでお楽しみということにしておこう。
「ふふ、期待しているといいよ」
それだけ言うと、僕はその場から姿を消す。
向かった先は、アズリレウス学院の、会長の部屋だ。
来る前に誰かいるかどうかの確認はしているので、面倒な人とはち合わせる可能性もない。
さて、と僕は腕まくりをする。
「会長の部屋なら、めったに誰も来ないでしょう」
それに、誰かが近寄ってきたら、僕は道具も全て『エンシェント』に戻るつもりだし。
まずは、コンロを作り出す。
「さて、久しぶりに何かを作るから、そのための道具はちゃんとしておかなきゃ」
そういって、アイラは会長室で道具を作り出していくのだが。
「....嫌な予感がするのは気のせい?」
先ほどルノウが言ったような気がするセリフが、口から漏れる。
空間スキルにも、感応スキルにも、人の気配などは感じられない。何か起きるとしたら、その前に気づくと思うのだが。
なんとなく、なんとなくだが、嫌な予感がするのを、ぬぐえないでいた。
こっちは一人称で、片方は三人称なので、おかしくなっていたらごめんなさい。
出来るだけ気を付けますので




