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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第3章 ハンター生活
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62 冒険する準備

アリスの成長具合は、次回にて

朝、それは、素晴らしいものだと思うのだ。

しかし、今の僕達は、その朝日を悠長に眺めている状況ではなかったのだ。


「朝よ」

「...そうだね」


ルノウが、朝だと僕に言う。そんなことは言われずともわかっている。

しかし、今はそれしか言えないことも理解している。

なぜなら。


「野宿してしまったわ」

「...そうだね」


僕達3人は、宿を見つけることは結局で出来ず仕舞いで、道の端で野宿したのだ。

こんなに悲しいことは生まれて初めてだ。


...まあ、学院に入学していなかったら、もう少し早く野宿していたのかもしれない。


「次も野宿なんて、流石に耐えられないわよ」

「うん、まあ、確かに」


ルノウの案には僕も賛成だが...そんなに鬼気迫るような表情で言わなくても。


ルノウは、道の端に座って朝日を眺めている僕達の前に立ち、宣言する。

アリスは未だに熟睡中だ。


「そこで、手っ取り早く稼ぐ方法を探すわよ。私たちはかなりの実力がある。だから、その方向で行くわよ」

「うん、それは僕も思うよ」


ルノウの言っていることは正しい。

いくら魔物が出てくるとはいえ、この世界にはちゃんと事務系統の仕事もある。

しかし、その仕事について、しっかり仕事ができるのはルノウだけで、アリスはまず間違いなく出来ないだろう。


幸いにも、僕達の実力はかなりのものだ。

だとしたら、少々の危険を伴っても、冒険者をやるのが正解だろう。


だがしかし、この時間帯からやっているのだろうか。ギルドは。


「そのことに関しては大丈夫よ。ギルドは年中無休24時間営業だから」


まるでコンビニのような利便性だな。


「さ、ギルドに向かいましょ。仲間を探すのは酒場と相場が決まってるけど、アリスちゃんは入れないし、私たちと同年代の子がいる可能性は低い。

仲間の件に関しては、私が後で考えておくわ」

「うん、ありがとう」


そういうと、ルノウはギルドのある方へと歩き出した。

僕は、アリスを背中に背負い、ルノウを追いかけだした。

ここから、新しい僕の生活が始まるのか。


「...ねえ、アイラ」

「うん?」

「言いたくなかったらいいわ。なんで学院を出て行こうとしたのか、教えてくれない?」

「...それは、ルノウが1番知ってるんじゃ?」

「知らないわよ。知ってたらこんなことにはなってないだろうし」

「そ、そうなんだ」


僕が学院にいられなくなった理由は、僕以外の人に危険が及ぶかもしれないから。

ただそこに通っているだけで、僕のせいでトラブルに巻き込まれるのは、僕が嫌だったのだ。


しかし、改めて思ったけど、指名手配ってすごいな。

つい先日まで学院生だったのに、一瞬で犯罪者だ。


「...まあ、迷惑はかけられないと思ったんだよ」

「迷惑?」

「うん。僕が指名手配されたことによって、他の人が生活しにくくなったら、いやだなと思ってさ」

「...」

「まあ、もう過ぎたことだし、良いんだけどね」

「...そうね」


僕がそういうと、ルノウは少し思っていたのと違った、というような顔をした。


あ、そうだ。指名手配と言えば、僕の顔も既に割れているのだった。

それに、名前も使えない。どうしたものか。


「え、出ていく決意をしたのだから、その対処は出来るのだと思っていたのだけど」

「うーん、出来ることには出来るんだけどさ」


方法は、3つ。


僕の顔を名前自体を変える。

この方法は最も安全だ。顔や名前は魔法で変えるとしても、その魔法を解除したところで、顔と名前は元には戻らない。

僕がアイラだとばれる可能性は0だというわけだ。


次に、変装だ。

スパイとかの映画でよく出てくる、変装マスクを想像してもらえばわかりやすいだろうか。

あれを作るのは簡単なのだが、僕が脱いでいるところを目撃でもされたら一巻の終わりだ。


次に、認識阻害だ。

僕を僕だとは認識できるが、僕がアイラだとは認識できないようにする魔法だ。

しかし、これは魔法を解除されてしまう可能性もあるし、魔法に耐性がある人なんかは、なんとなく感づいてしまうだろう。


さて、どうしたものか。


この方法は、アリスも起きたとにでも2人に相談しよう。


「さて、アイラの問題は、アイラに解決してもらうとして」

「あ、うん」


僕の問題は軽くスルーされた。

まあ、いざとなれば、僕の分身かなんかを出して、僕の指名手配をなくせば良いのだ。

僕は、同姓同名の奇遇な人だということで通す。


「まずは、アリスちゃんを起こしましょうか」

「あ、そうだね」


僕は背中に背負っているアリスを起こす。

すると、かわいらしい声を出しながら、僕の背中で伸びをした。


「ん...もう朝?」

「うん、朝」


アリスを背中から降ろし、ギルドへと改めて向かう。

その途中で、アリスに僕の顔が変わるのはどうか聞いてみた。


「んー...あんまりかわってほしくないかも」

「...そっか」


アリスがそういうなら、僕の意見も決まったも同然だ。


なんとか近日中に、対処をするとしよう。


「それじゃ、私はギルドカードを作成してくるわね」

「あ、うん」


ギルドに到着したので、依頼を受けようかと思っていたが、ルノウはまだ登録を済ませていないようだ。

ルノウはそういうと、ギルドの中に颯爽と入って行った。行動の早い人だ。


「ねえ、ますたー」

「あ、アリスも作らないといけないじゃん」


アリスが何かを言いたげな顔だった所で思い出した。アリスも作っていないはずだ。

というか、既に作っていたとしても、今は所持していないのだから、再発行の必要があるはずだ。


「アリスも、行かなきゃね」

「うん?」


アリスはいまいちわかっていないようだが、まあ、わかる必要もないだろう。そのうち理解できたら、それで十分だ。


アリスの手を引き、ギルドの中に入る。

中は、予想していた通り、わいわいと賑わっているようだ。どこのギルドもこんな感じなのは、何か理由があるのだろうか。


「わわ、ひとがいっぱい...」

「だね」


アリスの感想はもっともだ。

人の数は30人はいるであろう。なので、どこにルノウがいるのかは一見わからないのだが...。


「るのうは?」

「ああ、あそこだね」


普通ならわからないだろう。しかし、ルノウは簡単に見つけることができる。

ルノウが好きだから? 否、そうではない。


「あら、アイラ、中に入ってきてたのね」


紅い髪が、ここでは珍しいからなのだ。


「アリスのカードも作っておこうと思って」

「ああ、そういえば、アリスも初めてだったわね」


アリスを連れて、さらに奥へと進む。そこには、先ほどルノウのカードを作ってくれたであろう人が、まだそこにいた。


僕達を見つけるなり、その受付嬢は涙目でおろおろしだした。はて、僕が何かしただろうか。もしかして、もうすでに指名手配書を見て、その顔を覚えていたとかだったら泣いてしまう。

そうでなければ、ルノウが何かをやらかしたかだが。


「あ、あの、私何かしてしまいましたか...?」


どちらでも無かった。僕達が何かをしたのではなくて、この人が何かしてしまったのだと勘違いしていたようだ。

良かった、迷惑をかけたわけじゃないみたいで。


しかしまあ、その誤解はさっさと解いて、アリスのカードを作成してもらおう。


「別に、何もないですよ。この子の分を作ってもらうのを忘れていて」

「あ、そうだったんですか!」


それを告げると、受付嬢は心底安心したような顔をした。

ふむ、新人だろうか。


「あの、少しお聞きしてもいいですか?」

「はい、何でしょうか」

「もしかして、新人さん?」

「は、はい。そうなんです。つい先日ここに...なんでわかったんですか?」

「それはまあ...」


自分も、現代ではそんな感じだったなんて言えない。


「まあ、経験、ですかね」

「あら、アイラはそんなに経験してきたのかしら」

「...」


ルノウが後ろから小声で僕に言うが、それは受付嬢には聞こえていないようだった。


「そうなんですね! 私も経験を積んで、頑張っていきたいです!」

「うん、頑張ってね」


まあ、この子に聞こえていないのなら、別に良いか。

さて、アリスのカードなのだが、カードには自身の能力ステータスが出るはずだ。

何か不備がないかどうかを判断するために、ギルドの職員が直接目で見て判断してから、僕達に渡されるのだが、1つ心配事がある。


「それでは、こちらの石に手をかざしてください」

「ますたー」

「うん、言うとおりにして大丈夫だよ」


職員に説明されたアリスは、僕に同意を求めるかのようにこちらを向いた。

いちいち僕が許可を出さなくてはいけないのだろうか。アリスは連れてきて正解だったかもしれない。


「んーん、とどかない」

「...あ、そういうことね」


違ったようだ。


確かに、見てみれば、アリスの目線からはどこに石があるのかはわからない高さにあるし、手を伸ばしても、肝心の石には届いていない。

未成年だけで登録するのを防ぐためのものの1つ何だろうけど。


僕は、アリスの脇に手を入れ、持ち上げてちょうど良い高さにする。


「わは!」


すると、アリスは石そっちのけで、僕が持ち上げたことに対して喜び始めた。

まるで高い高いを喜ぶ子供のようだ。可愛い。


「アリス、石」

「あ、そうだった」


楽しそうに笑っている顔を見ていると、忘れそうになるが、今は優先することがある。

僕が石に手をかざすことを催促すると、アリスも忘れていたようで、慌てて石に手を伸ばす。


アリスの小さい手が石に触れると、石は少し光り、光が収まった時には、石の下にはカードが出現していた。

上に出した方が取りやすいと思うのだが。


「はい、ありがとうござ...えええええええ!?」

「...やっぱりか」

「どうしたの?」

「アイラ、面倒事じゃないでしょうね」


僕が心配していたことは、この新人さんのことだ。


ギルドの職員には守秘義務がある。それは、どこのラノベも同じだと思うのだが、この世界も例外ではない。

しかし、主人公のとんでもない能力ステータスをギルド職員が全て口にしてしまうというものも、たくさん見てきた。


そして、予想をしたのだ。そのギルド職員と言うのは、ほとんどが新人だったのではないかと。

新人なら、経験が少ないから、つい口走ってしまうこともあるかもしれない。まあ、その時点でギルド職員としては失格なのだが、そうなったときはしょうがない。

手っ取り早く周りの人に、主人公の力がばれるようにするには、この手を取っていた本が多かったのだ。


そして、予感もあった。もしかして、この新人さんは、アリスの能力ステータスを口走ってしまうのではないだろうかと。


予感は的中した。


「な、な、なんですかこれ!

アリスちゃんって、何歳なんですか!?」

「うーん、僕もわからないんだけど」

能力ステータスもおかしいですし、スキルもかなりの数を所持。こんなところでハンターやってる場合じゃないですよ!」

「...」


新人さんのおかげで、ルノウに説明する手間が省けた。そういうことにしよう。じゃないと、周りからの視線に耐えられそうにない。


「後で話をしましょう」

「....うん」


とか思ってたら、ルノウがそんなことを言った。

まったく、結局逃げられないじゃないか。


とにかく、いつまでもここにいたら危険だ。アリスの身も危険だし、僕の精神的にも。


アリスの手を引き、いったんギルド内の端の方の椅子に座る。


「それで、どういうこと?」

「どういうことも何も...」


以前、ルノウと共に、アリスの鑑定をしたことがある。

その時は、確かに強いとは思ったが、あの新人さんがあそこまで驚くような能力ステータスではなかったはずだ。

この短期間で、そんなに成長したというのだろうか。


そこで、ふと思い出す。

僕のスキルの中に、経験値ブーストのようなものがあることを。


統帥スキル。

この国に来る前から、サリナ達とは色々としてきた。その際に、このスキルのおかげで、あの3人は短期間でかなり成長したのだが、まさかアリスに働いているとは。

まあ、忠誠スキルなんてものもあったし、それとも関係しているのかもしれないけど。


「ふーん、アイラの言っていることが正しいとして、それだと私も強くなっちゃいそうなんだけど?」

「あれ、強くなるのはいや?」

「それはいやじゃないんだけど、臨時のパーティーを組んだときに、その人まで強くなっちゃったら大変でしょ」

「なるほど」


確かに、ルノウの言っていることはもっともだ。

しかし、その理論だと、僕の近くにいたヒジリやシャルはともかく、クラスの全員が強くなってしまいそうなのだが、特に目立った成長は無かった気がする。

まあ、シャルがイベント中にいきなり強くなったぐらいだろうか。


「まあ、もしそうなったら困るから、しっかり自分で制御できるようにはしておきなさいよ」

「うん、わかったよ」


アリスのことだけ見ているわけにもいかなさそうだ。

まあ、忙しい方が僕も楽しくて良いんだけど。

近日中に、別の小説を作るつもりなので、その時はそちらも見てくださると作者が喜びます。

それはもう飛び跳ねて喜びます。

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