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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
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61 決別

アイラは何を目指しているんでしょうか。

私にもよくわかりません。

最悪だ。


「久しぶりね」


最悪だ。

何のためにこの時間を選んだと思っている。


「...ご主人さま」


その理由はたった1つだ。

それは。


「ご主人さま、どこに行こうとしているの?」


サリナ、リナ、ユサの順に声が聞こえる。

その理由は、こいつらに会いたくなかったからだ。


「...うん、久しぶり」


いや、良く考えるんだ。この展開は、上手くいけば、かつての仲間たちに、こいつらに別れを伝えることができるかもしれない。


そう考えた僕は、すぐさま行動を起こす。

どうしたら、上手く決別できるのか。もうすでに、戻ることは許されない。


「みんなは、どうしてここに?」


理由など決まっているだろう。


「それは、アイラを止めるためだよ」


だろうな。

それ以外に、僕が関わりがある人ばかりがここにいるわけがない。


サリナに、リナ、ユサ。それに、ヒジリとシャル。最後にルノウだ。

それ以外の理由があるならば、逆に聞かせてほしいものだ。


ルノウが、いつもは無いものを腰にぶらさげながら、こちらに歩いてくる。


「アイラ、何を考えているのか、少し話さない?」

「...」


思わず、いや、といつもの敬語が出そうになった。

これではいけない。これからはアリスを守っていかなければならないのだ。

多少は必要なのだろうが、強く出る必要も出てくるだろう。

なら、この場を利用させてもらおう。


「いや、その必要はない」


僕は手のひらを6人に向ける。

殺す必要はない。ただ、しばらく眠ってもらおう。

もしかしたら、睡眠作用を引き起こす魔法に対して、何かしらの耐性を持っているかもしれない。

なら、ここは、凍らせてもらおう。


「『アブソリュート...」

「させない」


僕がとっておきの魔法で凍らせようとしていると、ルノウが腰にぶらさげていた剣を引き抜き、振り払う。

...ルノウのスピードでは、僕の魔法に追い付くとは思えない。

そのまま魔法を詠唱。


「・ゼロ』!」


僕の魔力を消費して、僕が指定した範囲を、全ての物質の運動が止める速度の温度にまで下げる。

凍らせるのは一瞬、魔力をそこから一気に引き抜き、凍らせた部位を元に戻す。

しかし、脳が受けたダメージは元には戻らない。

そのまま気絶して、僕達はこの場から抜け出す。その予定だったのだ。


ルノウは、持っていた剣を再度振るうと僕が起動した魔法を打ち払った。


「...は?」

「各員、行動開始!」


ルノウの1声で、全員が動き始める。


「アイラ、覚悟!」


ヒジリの拳が頬を掠める。アリスに戦わせるわけにはいかない。

しかし、アリスの方を見ながら、更に手加減もしながら6人の相手をするのはしんどい。


「チッ...『タクト』」


タクトとは、以前ヒジリと部屋で話していた強化魔法全乗せの魔法だ。

自分自身を指揮するように形にすることで、無理やり強化しているのだ。


自分だけが使うのなら、

何も無理やりに強化する必要は無い。しかし、この魔法はヒジリや、自分ではない他の人が使うことを前提とした魔法だ。

故に、悪用されたときのために、欠点も残してあるのだが、その欠点とは...。


「強化魔法も、これの前じゃ意味ないわ」


ルノウが3度、剣を振るう。

すると、僕の体に掛けられていた強化魔法が消えていく。

なるほど、魔法なら、どんな魔法でも打ち消すというのか。

しかし、そんな代物がなんの代償もなしに使用できるとは考えにくい。ここは、僕の魔力が尽きるのが先か、ルノウの限界が来るのが先か、勝負と行こうじゃないか。


「よし、そうときまれば、だ」


ルノウ以外の奴を倒す必要がある。さっきも意識していたが、殺す必要はない。

ただ、気絶させるだけでいい。


なぜかヒジリとシャルは殺気を放っているが、そうでもしなければいけない理由があるのだろう。

しかし、それだけの殺気を放っている癖に、どうしてルノウ以外の誰も獲物を持っていないのだろう。

もしかして、僕に気を使っているのだろうか。だとしたらそれは勘違いだ。


「はっ!」「たぁ!」


ヒジリとシャルの同時攻撃が飛んでくる。

飛んでくるのは魔法ではなく、ただの拳だが、強化魔法が掛かっているのか、速度はかなり出ている。

どこかのアニメで、どんな魔法もライフルの弾よりは遅いみたいなことを言っていたが、この拳はライフルの弾ぐらいのスピードは出ているだろう。

つまり、常人にそんな拳をあててしまえば、一瞬で頭が爆散するわけだ。


うむ、グロい。


それぐらいはこの2人もわかっているはずなのだが、そんなに僕を拳で殺したいんですかね。


しかし、例えそんな拳に当たったとしても、僕が死なないことはわかるが、どうせ受けたら痛いのだし、避け続ける僕。


「ちょ、よけんな!」


ヒジリの怒号が飛ぶ。んな無茶な。


アリスにちらりと視線を向ける。

そこには、リナがアリスと何かを話している姿が見えた。一体、何をしようとしているのだろうか。

まさか、人質?


「流石に、やっていいことと悪いことがあるだろうが!」


能力ステータスに物を言わせ、リナへと急接近。


「...!?」

「あ、ますたー」


アリスは僕が来ることは直前に感知していたようだが、リナは気づかなかったようだ。

そのままの勢いで、僕は足をリナのこめかみめがけて振りぬく。


「ガッ!?」


リナが出したとは思えないような声をあげて吹っ飛んでいく。

少し悪いことをしたとは思うが、死んではいないし、別に良いだろう。

これぐらいなら、ここに入学した時でも死んではいない。


「ご、ご主人さま...」

「アイラ...」


僕がリナに手を出したのが意外だったのか、サリナとユサの2人が目を見開いてこちらを見ている。

別に、僕はかつての仲間に手を出せないほどの弱い決意をしたわけじゃない。

まあ、何週間も考えた、というわけでもないが。


これが仮に、家族だったら、少しは躊躇したかもしれないが、そういうわけでもない。何をそんなに驚く必要があるのだろう。


僕はもう決めたのだ。これから先、こんなことに躊躇するのなら、アリスを護っていけないだろう。


僕は、アリスの手をつかむ。


「アリス、僕についてきてくれる?」

「うん!」


少し、アリスに依存してしまう旅路かもしれないが、それでも良い。

アリスとは本当の家族になれそうだ。


「ねえ、アイラ」


そんなことを考えていると、ルノウが声をかけてきた。気づけば、リナ以外の4人も、攻撃の手を止め、僕とルノウの会話を聞こうとしている。

何か、揺さぶりでもかけるつもりだろうか。


「もし、私が、あなたたちの旅についていきたいって言ったら、連れてってくれる?」

「「「「!?」」」」


「...どういうこと?」


今までは、今ここにいる6人は、僕が外に出ていくのを止めたいのだとばかり思っていた。

しかし、ルノウは違うのだろうか。


...確かに、ルノウがついてきてくれるのならば、僕も心強い。

しかし、何か違うような気もする。


「どういうことも何も、そのままよ。もし私を連れて行ってくれるのなら、ここから出るのを手伝ってもいい」

「...」


他の4人は、この展開は予想外だったのか、何も言いだせずにいる。


しかし、ルノウがこんなことを言う人だっただろうか。

ここで僕についてくるというのは、すなわち、この学院を放棄するということを意味する。

僕の知る限り、ルノウ程、この学院を管理、運営していくほどの才能に長けた人はいないだろう。

つまり、学院は崩壊する。

そんな無責任に走る人だっただろうか。


「確かに、アイラの考えていることは正しい。私がいなくなれば、そうなる可能性も高い」

「...」


僕の考えを察したのか、ルノウが喋り出す。

どうして僕の周りにいる人は、こぞって僕の思考を読むのだろうか。やめてほしい。


ルノウは、持っていた剣を鞘に収め、敵意は無いことをアピールする。


「でもね、アイラ。私だって、あなたとそう変わらない年なのよ」


なるほど、わかった。

つまり、ルノウは、自分が隙に出来るような環境を求めているんだ。

僕達と一緒にここから出れば、言い訳は後からなんとでもでき、それと同時に、ルノウを連れ戻せる理由も、戦力もない。

もしてや、魔法を無効かできる剣を持っているのだ。


それに、一度出てしまえば、後は僕達と離れて何をしようが自由。


ルノウは、自由を求めているのだ。


「私だって、仲間と一緒に冒険したい。死ぬかもしれない状況で、仲間と手を取り合って冒険したい」

「それで、僕がここから無理やり出て行こうとしているから、それに乗っかろうと」

「...まあ、それに間違いは無いわね」


僕達の仲間に入れてくれ、というのであれば、僕も何も思うところは無い。

ルノウがこの状況を利用し、1人で出て行ったのだから。


「わかった。勝手にしていい」

「ホント!? やった」


僕が許可を与えると、ルノウは嬉しかったのか、小さくその場でガッツポーズをした。

うむ、そういったところは可愛い。もしメンバーになって、そのかわいらしい行動を毎日見れるのなら、良いかもしれない。


そう、この世界に来て最初に決めた目的は、ハーレムを作ることなのだし。


「ちょっと待ちなさい!」


早速協力してもらおうとしていると、ヒジリが突然大声をあげた。

おいおい、勘弁してくれよ。魔法が打ち消されたせいでなんの音も出ていなかったんだから、誰かに気づかれたらどうする気だ。


「そんなの、認められるわけがない!

私が行かせない! 何が何でも、行かせないんだから!」


その表情からは、何か鬼気迫るような物を感じたが、あいにく、僕はヒジリ程度に止められはしない。

まあ、僕でなくても、止められないだろうけど。


「アリス、アリスも本気を出していいよ」

「いいの!?」


僕がそういうと、なぜかアリスは、待ってましたと言わんばかりに喜んだ。


アリスも戦闘狂のでもなったのだろかと思ったが、聞いてみると、普通に僕の役に立てることが嬉しいんだと。

かわいすぎかよ。


「ルノウも、協力してくれるよね?」

「えっ!? え、ええ」


今更会長と呼ぶのもどうかと思い、名前で呼ぶとすごい驚かれてしまった。

それは、普通に驚いたのか、嫌だったのか、どっちによるかで今後の僕の対応が変わるのだが。


「だ、大丈夫よ。名前では初めて呼ばれたから、少し驚いただけ」


あ、そうなんだ。

というか、また僕の考えていることを読み取ったな。くそ、これから少しやりづらくなるかもしれん。


それにしても、一気に形勢が逆転したな。

ルノウが寝返るだけで、こんなに簡単に逆転してしまうなんて、戦で言えば、信長と明智の本能時の戦いで、信長が寝返ったようなものか。

いや、なんか違う気がする。


「それじゃあ、アイラは少し休んでいて」

「ますたーのかわりにがんばるよ!」


ルノウとアリスが、それぞれ嬉しいことを言ってくれる。

なるほど、これが指揮官の気分か。


しかし、とあるロボアニメの主人公も言っていた。王が動かなければ、兵もついてこないと。


まあ、こんなことは今回限りなんだろうけど。


それからは、あっという間だった。


ただの身体能力だけなら、他の人を圧倒しているアリスが前線に出るので、ヒジリたちはアリスの対処をしなければいけなくなり、しかし、ただ対処に当たったのでは、普通に返り討ちにされて終わる。

身体強化魔法を自身に付与しようとしても、それはルノウに打ち消される。魔法で援護しようにも、それもルノウに対処される。


なるほど、いじめだ。


しかし、こうしてみている限りでは、ルノウの剣の能力には特に何のデメリットも無いように見えるのだが、そんなものが存在していいのだろうか。

それに、ルノウが腰に下げている剣はもうひと振りある。

あれの能力もわからないし、もしかしたら僕も負けていたかもしれない。

...そんなものが存在していいのだろうか。


「アイラ、終わったわよ」

「ますたー、ほめてほめてー!」


気づけば、既に戦闘は終了していた。

そのことをルノウが報告し、アリスは僕の元にほめてもらいにかけてくる。

なんだろう、親の気分だ。


かけてきたアリスを抱き上げ、頭をなでてあげる。


そうすると、アリスは嬉しそうな声を上げる。

かわいすぎかよ。


それを見たルノウが呆れたような声を出しながら、この後の方針のことについて聞いてきた。

もう聞くの、早くない?


「とりあえず、どこか宿を探して、そこで今後のことを考えようかと」

「...まあ、そうね。そうなるわね」


僕のとりあえずの案に、ルノウも納得してくれたようだった。

まあ、他にいい案があるなら、誰でもいいから是非とも教えてほしいのだが。


「ますたー、ねむたい...」

「ああ。寝てる途中で起こしちゃったもんね。それじゃあ、少し急ぎ目に宿を見つけるとしますか」


そして僕たちは、その場で気を失って転がっているかつての知り合いたちを放置...はできずに、ルノウとアリスが付けた傷が響かないように治療をし、その場を去った。








「ねえ、ところでなんだけど」

「どうしたのルノウ」

「この時間に宿ってやってるの?」

「...さあ」



そういえばなんですけど、今週の金曜日に就職面接が入りました。


試験は面接だけなので、そこに私の全てを出し切りたいと思います。


...応募してるのは僕だけなので、また違うアプローチが必要なんでしょうか。


もしかしたら、その経験がここで生かされるかもしれませんね

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