表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
71/79

60 別れを 後編

今回は久しぶりの三人称です。

あれ、そもそもやったことありましたっけ。

ルノウは、予感していた。


「大丈夫です。誰にも迷惑はかけません」


学院側の判断を彼女に伝えようとしたら、彼女は1人で何かを納得してしまった。

ルノウが止めようと思っても、彼女は、アイラは既に部屋を出ていた。


何か嫌な予感がした。すぐにアイラを呼び戻そうとした。

しかし、ドアに手をかけようとした時、手が、体が、それ以上前に進まなかった。

震えていたのだ。


「...アイラ...?」


この予感は、きっと的中するだろう。これまでの難題も、この予感が外れたことは無く、そのこともあって、ルノウはこの地位にいる。

まずは...彼女の知り合いに情報を探ってもらおうと思う。





リナという少女に、アイラのことについて探ってもらった。

何かを考えている様子で、その顔は、どこか辛そうだと。


『私に力になれることは、他にはありませんか?』


リナは、余程アイラのことが大切なのだろう。

こんな風に思ってくれる人がいるなんて、少し妬けてしまう。


「そうね、まずは、ヒジリ、シャル、それと、サリナとユサを集めて頂戴。これからのことを話すわ」


窓に向かって喋るルノウ。はたから見たらどこ向いて喋っているんだ。エア友達でもできたのかと聞かれそうだが、そうではない。

リナがいるのだ。窓の外に。

忍者である。


『...わかりました』


窓越しにリナの声が聞こえる。


ルノウの考えているこれからは、アイラがいつおかしな行動をとるのかはわからない。

だから、交代制で見張るというものだ。

何をしようとしているのかは、それとなく探る必要があるため、ヒジリとシャルの2人に任せようと思う。






「わかりましたわ」

「アイラの監視をするなんてね...」


先に来たヒジリとシャルに説明を終えた。

2人とも、最初は何事かと警戒していたようだが、説明を終えると、2人とも協力してくれるようだった。

ありがたい。アイラに最も近しい2人であれば、何かしらの有益な情報を得られる可能性が高いのだ。


「それじゃ、私たちは、さっそくアイラの監視に移りますわ」

「ええ、2人とも、お願いね」


ルノウ自身では、もうアイラに何かを聞くことはできない。頭ではなく、体がそう言っているのだ。

今までは、出来るだけ自分で仕事を片づけてきたが、それはどれも自分のことだった。

自分のこと意外だと、こんなに大変なんだなと、ルノウは理解した。

しかも、それが何日も続く。あの2人が情報を聞き出してくれるまで、ルノウも、気を抜けない。


久しぶりだなと、ルノウは椅子に体を預けた。






時刻は既に21時。この時間まで何もないとなると、流石に今日は何もないだろう。

そう判断したルノウは、自室に入り、さっさと寝ようとしていると、荒々しく扉が開かれた。


ルノウが振り返ると、そこには、肩で息をしている、シャルとヒジリがいた。

ヒジリよりシャルの方が疲れているということは、ヒジリの急いだスピードに合わせてきたのであろう。

我が学院の生徒の成長は嬉しく思うが、何が彼女たちをそんなに急がせているのだろうか。


「大変! アイラが、この学院を出ていくって!」

「...それ、本当?」


自分でも、冷静でいられなくなっていくのがわかる。

どうしてなのだろうか。私が、アイラに何かしたのだろうか。

もしかして、私の配慮が足りなくて、クラスのみんなにいじめられていたのかもしれない。


ルノウが動揺していると、突然、シャルがルノウの頬を叩いた。


乾いた音が、響く。


「しっかりなさい、会長なのでしょう?」

「...」


その通りだ、とルノウは気を持ち直す。


まずは、どうしてそんなことを思ったのかを調べるのが先だが、今はそんな悠長なことを言っている暇は無い。

深呼吸を1つ、深くして、シャルとヒジリに向き直る。


「アイラの部屋の、アイラのものは?」

「まだ何も手をつけてないけど、アイラだから、行くときになったら片づけるかも」


ルームメイトのヒジリが言うのだ。その情報は信用できる。

しかし、そうなると、出ていく時間だが...。


「こればっかりはわからないわね。寝ないで、玄関を見張ろうかしら」

「でも、誰が見張るの?」

「それは...」


そうだ、誰が見張るのだ。

アイラが少しでも本気を出せば、ヒジリ達の誰か1人では、一瞬で蹴散らされてしまうだろう。

もしかしたら手加減してくれるかもしれないから、その隙を突けば、とも思うが、手加減してもらっても勝てないほどの実力差がある。

全員でかかれば、あるいは、かもしれないが...。


しかし、今のタイミングで()()を使うのはいささか渋るような状況だ。


「でも、仮に全員で見張るとして、私は慣れているけど、あなたたちはまだ学生なのよ?

体力的にも厳しいんじゃ...」

「その心配はありませんわ」


ルノウが心配していることを言うと、シャルがそれを否定した。

心配がない、というのは、どういうことなのだろう。


シャルは、ドアに手をかけ、こちらを振り向かずに言う。


「きっと、決行は今夜ですわ」


そう言い、出ていくシャル。

1人残されたヒジリは、慌ててそのあとを追う。


今夜決行。どうしてそれを言いきれるのかは不思議だが、今はそれを頼りにするしかない。

少し賭けになるが、あの3人にも呼びかけて、6人で迎え撃とう。

()()の準備も、しないといけないことだし。






「今夜、って言っても、何時にやるかは流石にわからないわよね...」

「ですわね」


会長室から出た2人、シャルとヒジリは、学院の出入り口に待機していた。

ヒジリからしたら、どうしてここに迷わずに来たのかはわからないが、シャルのことだ、何かしらの確信があるのだろうと自分を納得させたヒジリだった。


シャルが、集中しながら、ヒジリに声をかける。


「もしも、もしもですわよ。アイラが並ではない覚悟を持っていたのなら、どうします?」

「どうするって...そもそも、何を覚悟するのかわからないんだけど」


つい先ほど、アイラとアリスの会話を盗み聞きしてきたばかりなのだ。

その理由だって、まだ不確かの状況で、どんな覚悟を持っているかなんて、わかるはずもない。


しかし、シャルはヒジリと同じく、自分もわからないという。


「ですから、どんな覚悟を持っているのかは、私たちには知る必要がないのですわ。

それがたとえ、悪いことでも、良いことでも。私たちには、それを止める資格がない」


そういうものなのか、とヒジリは思う。

そういった覚悟の話何て、今までしてこなかったから、そのことに関しては全くわからない。

もしかしたら、シャルは、そういったことを経験してきたのかもしれない。

しかし、それならば、一体どこでどんなことを決意して、ここにいるのだろう。


そのまま会話は終わり、数分の後に、ルノウとサリナ、リナ、ユサが来た。


「待たせたわね」


ルノウと一緒に来た3人はいつもの服装だが、ルノウだけ、腰に2本の剣を下げている。双剣、といったやつだろうか。


「ルノウ、それは...」

「...ええ、とっておきよ」


とっておき。とっておきと言うには、どこか雰囲気が重い。リナは、そう感じた。

リナも、戦闘態勢に入る。


「見張りは私たちがしておきます。他の方々は休憩していてください」

「...そうね、お願いしてもいいかしら」


ルノウも、良い考えが浮かばなかったのか、リナの提案を受け入れる。


そこで、ユサが手を挙げる。


「ご主人様は...まだ来ないと思う、ます」

「それは...どうして?」


ルノウの疑問も最もだろう。

しかし、ユサは自信がなさそうに言う。


「えっと、なんとなくなんだけど、ご主人様は、少し寝て、みんなが寝静まったタイミングで来ると思う」

「...なるほど」


自信がなさそうに言うが、この情報はかなり有益だ。

アイラの奴隷であるユサの証言だ。信憑性も高い。


ともあれ、何かあってからでは遅いのだ。

どちらにせよ、常に見張っておく必要性があるだろう。

ルノウは、何か考えが浮かんだのか、少し考え込んでいるが...。


「それじゃあ、みんなで見張りましょうか」


ルノウのその案に、全員が頷いた。







「...来ないわね」

「それでも、いつ来ても良いように準備をしていなければなりませんわ」


ルノウの呟きに、シャルが反応する。

確かに、と、ルノウは気を持ち直すが、それもすぐに崩れてしまう。

いつもは、適度に集中して、休めるときはできるだけ休むため、大人たちとの会話でも疲れたことは無かった。

しかし、相手はあのアイラである。ルノウ達がアイラに気づく前に、逆に気づかれたら、知らない間にこの国から出て行ってしまうだろう。


他のみんなはどうやってずっと集中しているのかと思ったら、ユサは寝ていた。


ふむ、なるほど、寝たらいいのか。


ルノウは間違った解釈をし、近くの木に背を預け、寝息を立て始めた。


それを見たヒジリは、時刻を確認し、慌ててルノウを起こす。


「もう日をまたいだみたいだから、そろそろ来るかも」

「...なるほど」


折角眠りに入ったのに、という気持ちもあるが、アイラを何より優先させないといけないのもわかっている。

一瞬でけだるくなった体を起こすと、以外にも、ルノウ達をこんな目にさせている当の本人が現れた。


「...来たわね」

「はい」


ルノウ達から見えるその姿は、確実にアイラのものだ。幻術などを使っている様子は無い。

アリスと手をつないでこちらに来るが、アイラの顔を見る限り、ルノウ達がここにいるのは既に気づいていたようだ。


「...久しぶりね」


まずはサリナが、口を開く。

いつもとは少し変わったような口調だが、それに対して、アイラは不思議には思わなかったようだ。


どうしたらアイラをこの学院にいさせることができるのか、誰にも見当がつかないまま、お互い対面してしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ