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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
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57 新しい魔法を...あれ、上手くいかないや。

永遠に逃げ切ることなんて、出来ない。それは誰もが知っていることだし、僕も例外じゃない。

しかし、人間は、嫌なことからは逃げたくなるのだ。

もちろん、僕も例外じゃない。


「とにかく、2人とも起きなさいな」

「...」

「んー...?」


ヒジリはシャルに揺られて素直に起きる。

僕がなんで狸寝入りなんてしているのか知らないから、そんな簡単に起きられるのだ。


...いや、待てよ。

ここで起きておけば、アリスをシャルから守れるのでは...?

そうと決まれば、素直に起きるとしよう。

シャルがアリスに対して、良からぬことを企んでいないのなら、僕も断固として拒否する理由もないしな。


「...おはよう」

「あら、少し起きるのが遅いのではなくて?

()()()()()()?」

「...」


しっかりばれている。

狸寝入りしていたことがしっかりばれている。

とはいえ、それももう隠すつもりもない。


「さて、アリスちゃんを起こさないように、作戦会議でもしましょうか」

「...あれ?」

「あら、何かおかしいかしら」

「いや、なんでも」


ラッキー。何かわからんが、シャルがアリスに何かをしでかすのは、とりあえず阻止できたようだな。


ヒジリも作戦会議に参加しやすいように、3人で輪になるように座る。

未だにアリスは寝ているので、正座をして膝枕だ。


「さて」


ヒジリではなく、シャルが口を開く。

先ほど目覚めたばかりのヒジリは、まともな思考ができないということがわかっているのだろう。

こういった気配りはシャルが1番だ。


「作戦会議も何も、アイラのパーティーメンバーの方々のクラスではないところが相手ならば、特に作戦など必要ないでしょう。

ただ、同じことをして、同じように勝てばいいだけですわ」

「まあ、そこに行きついちゃうよね」


僕の、フィールドごと破壊するシュートは、僕でなければ防げないのではと思うほどの高威力だった。

もしかしたらルノウなら、とは思うが、出場していないのだし、今は関係ない。

リナにしても、この学院の中でもかなり上の方の実力を持っているが、サリナ爆睡事件で、決勝の舞台にはいない。

必然的に、僕のシュートを止められる人はいないのだ。今手元にある情報だけで判断するなら。


もしかしたら、ただ実力を隠しているだけの奴が、これから対戦するところにいるかも知れない。

その可能性を考慮して、それでも僕のチンパンでなんとかなると思っているのだろうか。

それとも、相手の情報を既に得ているのだろうか。シャルのことだ。その可能性は十分にある。


「ねえ、シャル。相手の情報とかって...」

「...私には、関係ありませんわね。これから私たちに負ける相手のことなんて、興味もありませんし」


シャルは結婚相手でも探しているんだろうか。

『私より強い奴じゃないと夫としては認めない』みたいな意味にも聞こえる。

...いや、これはラノベの読みすぎだろう。


さて、シャルがそういうなら、とりあえずは大丈夫だろう。

残りの競技は2つ。その2つは、明日と明後日で開催だ。


ダッシュは明日、トッパーは明後日だ。


「新しい魔法でも作ろうかな...」

「え?」


時間はあるのだ。せっかく魔法がある世界にいて、大体の魔法ならスキルのせいで作れる状況にいるのだし、あったら便利な魔法でも作るとしよう。

現代では、あったら便利だけど、そこまで必要ないよね、っていうのは、それを持つ余裕がないからで、魔法に関しては、ゲームのように、憶えるのにキャパシティなんて関係ない。

憶えれば憶えた分だけ、お得なのだ。


電子辞書が、検索の時間なしで結果を表示するとでも考えたらわかりやすいだろうか。


どこ○もドアはもう出来てしまった。厳密には魔法ではないが。その点を踏まえると、次に作りたくなるのは、ルー○だろうか。

要所要所に目印のようなものを置き、世界中どこからでもそこにワープ。

うむ、便利だ。


その魔法が出来たのなら、これまで使用していた転移は『短距離転移』とでも名付けようか。


「ねえ、アイラ、聞いてる?」

「今集中してるから」

「あ、ごめん」


ヒジリが何やら言っていたような気がするが、今はどうでもいい。リナ達か、アリスに関わることじゃないなら、今すぐ反応するほどのものでもない。

しかし、その思考を読み取っていたのか、まるで予知していたかのようにシャルが付け足す。


「アリスちゃんの今後に関わりますわよ」

「それで話ってなんですか?」


僕はアリスの名前が出てきた時点で顔をシャルの方に向ける。

そう、先ほども言ったとおり、アリスのことなら、何より優先しなくてはならないのだ。


アリスとリナのどちらを取るかと聞かれたら...その時までに、分身魔法でも作っておくことにしよう。


「...その前に、先ほど『魔法でも作ろうかな』とおっしゃっていたような気がしましたが、気のせいではありませんこと?」

「ああ、そうだね、確かに言ったような気がする」


本当のことを言えば、そんなことを言ったのかどうかは自分自身ではわからないが、そんなこと僕が言わない限り聞いてこないだろう。

なので、それを言ったことを認める。

このときは、それが最善だと思っていたのだが、すぐにそれは間違いだったということを認識する。


「ねえ、アイラ、私たちはもうアイラがおかしいってことは知ってるからそんなに驚かないけど、魔法を簡単に作れるとでも思ってる?」

「え?」


...確かに、そう言われてみれば、僕が簡単に作っている魔法は、基本的にはどれもこの世界には存在しない魔法だった。

魔法を作ることは、この世界の住人にも可能なことだ。しかし、それに対して労力がでかいのだ。

それこそ、スカイツリーを3本作るぐらいの労力で、1つの魔法を作り上げる程度の労力が。


それなのに、スカイツリー3本分の労力を消費して出来た魔法が、『安眠魔法』とかだったら、釣り合っていないだろう。

いや、1部では人気が出るかもしれないが。


なるほど、この世界において、魔法を作るという行為がどういうものなのかは、理解できた。

しかし、それがいけないことだろうか。

自分自身が楽になるから作っているのだ。誰かのためにじゃない。

いや、アリスのためなら世界の常識すら書き換えるが。


「魔法を作るのは、決して悪いことじゃない。だけど、人前でそんなことを言うのは金輪際やめなさい。じゃないと、あなたの身が持たなくなるわよ」

「僕の身が...?」


ヒジリが、いつもとは違う、真面目な顔でそういう。シャルも同様だ。

この一瞬で、『魔法を作る』という行為がどれほどのものなのかを理解した。

まあ、現代で言えば、道を数百億のお金を持ち歩いているようなものだしな。


「それに、会長に見つかったらどんな無理難題を言われるかわかr」

「わかった。肝に銘じておくよ。ありがとう、2人とも」







「それで、どんな魔法を作り出そうとしてたの?」

「んーとね、距離制限なしの転移魔法」

「...随分とまあ、おかしいものを作ろうとしてますわね。まあ、アイラだから、もう驚きませんけど」


シャルが呆れ、ヒジリは目を輝かせる。


「ってことは、私の故郷にも、簡単に帰れるってこと?」

「まあ、そうなるかな」

「その魔法、今すぐ作って」

「...? まあ、わかった」


ヒジリに言われなくとも、早いうちに完成させるつもりだったが、このヒジリの焦り具合は何だろうか。

何がそこまで、ヒジリを焦らせるのだろうか。

この学院でも、ヒジリを焦らすことができるのは...いた。簡単に焦らすことができる存在。ルノウだ。


...あれ、そう考えたら、ルノウってラスボス的な存在?

強化外骨格なんてものはついてなさそうだが。


「んー...?」


しかし、いつものようにポンと出来ていた魔法作成が、今日は上手くいかない。

いうなれば、式と答えはわかっているのに、途中計算がわからないような、そんな感じだ。

だから、無理やり完成させようとなると、『魔法名』と、『その魔法を行使した結果、そうなるであろう』ものしか残らない。

確かに、魔法を唱えたら、それに対応した結果が出るはずなのだが、そこにたどり着けない。そんな感じだ。


「まあ、今日中に、っていうわけじゃないから。出来る限り、ってだけで」

「うん、わかってる」


ヒジリも、さすがに僕に即日完成を迫っていたわけではないようだった。

助かった。これで『今日中に作りなさい』とか言われてたら、きっと僕は今日は寝れなかったのだろう。


今の時間を確認する。

フィールド内の壁に張り付けられた時計によると、もう15時だ。


...こうして改めて考えると、この世界でも時計の概念は現代と同じなのだな。

よくあるラノベの異世界もんだと、時計の○時に対応した、よくわからん言葉みたいなのが当てられてたりするのだが。


『フィールドの修復が終了しました。準備ができ次第、決勝戦を行いますので、出場クラスは、それぞれ準備に入ってください』


ルノウの声のアナウンスが響く。

よし、いつもどおりにいきますか。


毎度やってきました、後書き。


この間、ゲーセンに行ってきました。

音ゲーをやりすぎたのか、右手首が痛くなりました。

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