54 ゲート開催
「...」
完全に寝過ごしてしまった。
朝起きた時、隣のベッドで寝ているはずのヒジリは既におらず、僕と一緒に寝ているアリスもいない...。と思ったらいた。
僕と同じように寝ていたようだ。
時刻は既に昼の1時。
外が騒がしいことを考えると、既に競技が始まっているのだとわかる。
最悪だ。
しかし、出場者がそろっていないのに、うちのクラスはどうやって出るつもりなのだろう。
いや、そんなことはどうでもいいのだ。
僕は急いでアリスを起こす。
「アリス、起きて!」
「んー...ますたー....?」
寝ぼけているアリスを起こすより、先に運んだ方が早い。
そう判断した僕は、スキルの重複効果で転移し、会場に現れる。
「あら、アイラにアリス。昨日の服のままだけど、まさか今まで寝てたの?」
「うん、まあ」
そう言われれば、まだ着替えていない。シャワーにも入らず寝てしまったから、一気に最悪な気分だ。
先に浴びてこよう。
「ごめん、1回戻ってシャワー浴びてくる」
「...まあ、いいわよ。30分後には始まってるわよ」
ヒジリの許可をもらい、再び転移で部屋に戻る僕とアイラ。
この際、誰かに見られてもいい。今は一刻を争う時なのだ。
手早く、僕の着替えとアリスの着替えを準備。タオルも忘れない。
どうせなら、お風呂に入ろう。20分は入れる予定だし。
「ますたー、おなかすいた」
「...これでもお食べ」
どこぞの川の主のようなセリフで、サンドイッチを差し出す。
アリスはそれを受け取ると、僕が瞬きした時には、既に無くなっていた。早すぎると思うのだが。
「ごちそうさまでした。おいしかった!」
「それはよかった」
僕もお腹がすいたな。風呂の中で食べるとしよう。マナーは悪いどころの話じゃないが、時間の短縮だ。
許せ、日本人のみなさん。
転移をし、風呂に突入。
素早く服を脱いだアリスは、既に僕の隣で待機している。
...ヒジリとシャワーを一緒に浴びれるのだし、1人でも大丈夫かな。
「アリス、自分で洗える?」
「もちろん!」
「よし、それじゃあ、これで洗ってきて」
「うん!」
お風呂セットを預け、アリスに自身で洗いに行かせる。
その間に僕は、持ち前の能力で3分で洗い終わり、すぐに湯に浸かる。
そして、先ほどアリスにあげたのと同じサンドイッチを食する。うまい。
これを作ったのはかつての僕だ。
まだ、リナとユサに出会う前だっただろうか。道中で暇になった僕は、スキルに物を言わせて、サンドイッチを量産していた記憶がある。
こんなときに役に立つとは。
サンドイッチを口の中に放り込む僕。
アイテムボックスの中にあるものはやはりというかなんというか、時間経過は無いようで、新鮮な状態だった。
風呂場の湯気のせいで多少湿ってしまうが、それも許容範囲内だ。
うまい。
「ますたー、おわったよ」
「よし、それじゃあ、湯につかって待ってて」
「うん!」
お湯にダイブしていくアリスを見届け、僕は先に上がる。
先にアリスの着替えを用意しておかなくちゃ。
「アリス、こっちにおいで!」
「はーい!」
アリスを呼び掛けると、とてとてと走り、そのまま脱衣所まで来てぴちゃぴちゃと足音を鳴らす。
普通に子供だ。
「はい、体拭くよ」
「はーい」
僕がそういうと、アリスは万歳して待機する。
確かに、脇とか拭きやすいし、そのあとに服を着させやすいけどさ。なんでそんなに慣れてんの?
「それじゃ、行こうか」
「うん!」
風呂も入り終わったし、転移で移動する。ここまで、約20分経過している。なんだ、時間はかなりあまるじゃないか。
それなら、アリスの昼食でも出そうかな。僕もあれだけじゃ足りないし。
転移をしたのは、ヒジリの傍だ。
既に周りでは作戦を話しあっていて、どういった方向性の魔法を使うのかを話している。
魔法というのは、直接触れ合わなくても、こうした決まった空間で魔法を使うときにのみ限って、互いに空気越しに干渉する性質を持つ。
なので、同じ味方であるクラス内で魔法が反発していたのでは、意味がない。これでもチーム戦なのだ。
それぞれがそれぞれの得意魔法をぶっ放しておけばいいわけではない。
「それじゃ、僕達はご飯を食べてようか」
「わーい!」
アリスが両手をあげて喜ぶ。本当に無邪気である。この無邪気さが失われていくのを、僕は耐えられるだろうか。
「ちなみに、あと何分で競技開始なの?」
「あと...3分くらいかしら」
「移動は」
「あと2分は平気よ」
「...」
競技開始時刻。僕達のクラスはなんとか作戦を決め切り、会場に全員が遅れることなく到着した。
しかし、その作戦内容も随分と投げやりなものである。
『とりあえず好きな魔法をぶっぱなして、近くに反発する魔法を出している人がいるなら離れなさい』
だもんな。
というか、知識では知っていても、何と何が反発するのか知らないんだけど。
「大丈夫、私と同じ魔法を使えばいいのよ。出来るでしょ?」
「...」
ヒジリはそういうが、少し僕のことを買いかぶりすぎじゃないですかね。
前に1回なったことがある、こんな魔法を唱えたいって思ったら魔法名が浮かんできたのも、もう出来ないんだし。
というか、あれは本格的になんだったのだろう。もしかして、女神様のせい?
そんなこんなで始まるゲート。肝心のボールはフィールドに1個で、ゴールもお互いに1個。本格的にハンドボールである。
しかし、ハンドボールと違って、ゲートは....。
「左舷!弾幕薄いよ!何やってんの!」
ただひたすらに、自分の最初の位置からは動かず、魔法を連発すること。
動いている余裕も全て、魔法を詠唱するのに使うのだ。なんだこの競技。
さっきまでのシリアス(基本的に自分のせい)はどこにいったの?
というか、ブライトさんがいたような気がする。
「ニューヒジリは伊達じゃない...!」
ヒジリがそう言いながら、全身に緑色のオーラを纏わせ始める。恐らく余裕があるのだろう。あれは魔法だ。
というか、それでファンネルでも飛ばしたらどうですか。
「いかん。ボールはどこだ?」
「ここだよ!」
ボールを相手のゴールにぶち込み、相手のシュートを阻止するのが僕の役目で、アリスは相手からボールを奪う役目だ。
別に、相手のコートには入っていはいけないなんてルールも無いしな。今までの奴らがそうしなかっただけで。
そして、隠密行動に長けたアリスなら、簡単に取ってこれるのだ。
「ん、ありがとう」
アリスからボールを受け取り、頭をなでてやる。すると、嬉しそうな顔をするので、こっちも嬉しくなる。
なるほど、これが幸せのおすそわけ...。
「おっと、さっさとぶち込まなきゃ」
しかし、このボール。魔力を詰めれば詰めただけ、なんて説明を過去にしたような気がするが、何も無限に入るわけではない。
そんなことになれば1級の魔力兵器だ。
なので、もちろん上限はある。
しかし、それはこの学院の生徒からしたら無限に感じただけなので、僕がやるとすぐに壊れる可能性もある。
割れないぎりぎりを見極めなければ。
魔力を注ぎこむ。
...なんだかボールがぶるぶる震えだした。これはいかんのでは?
このまま放置して爆発でもしたら困るので、とりあえずボールを相手のゴールの方に分投げる。
僕の手から放たれたボールは、ゴール前に立っていた相手の生徒全員を吹き飛ばし、そのままゴールを突き破ってフィールドから出て行ってしまった。
相手のクラスには、倒れている生徒以外、何も無くなってしまった。幸い、観客席にはなんの被害も出ていないようだが。
「あ、やりすぎた」
何も意識せずに魔力を込めていたから、どれだけいれたかも全く気にしていなかった。そもそも、学生の競技で使用されている道具がこんな威力を出せてたら問題でしょうが。
いや、責任転嫁と言われたらそれまでなんだけど。
「...これは、反則負けかな?」
「何言ってるのアイラ」
「...ヒジリ?」
このままだと、総合優勝が遠のくなあなんて考えていると、ヒジリが後ろから声をかけてきた。
その顔は、どこか達観している。
「ルールにはどこにも、相手のゴールを消滅させるな、なんてものは乗っていないわ」
「...」
そんなの、サッカーのルールにも無いと思うんですけど。
「だから、セーフよ」
「な、なるほど」
そして、アナウンスが響く。
『Cチームのゴールが消失したため、サンバールクラスの勝利です。ボールが消えたので、準備に少々時間をいただきます」
「...」
「ね?」
うん、この世界なんだもんね。
そりゃそうだよ。もし現代で魔法が使えたら、サッカーのルールにもゴールを消してはいけませんとか乗ってるかもしれない。
乗っていないのは、魔法なんてものが無く、絶対にゴールが消えるなんてことが無いからなのだ。
そうだ、おかしいのは僕で、正しいのはこの世界...。
「いや、それは違うか」
とはいえ、こんな楽に勝てる試合はこれまでにない。
ヒジリにも全力で魔力を注いでもらおう。
最近ハマってるネタはですね。誰もお前を愛さないです。
え、遅いって?
いいんですよ。私は遅いんですよ。
え、ここで自由すぎる?
いいんですよ。逆に何書けばいいんです?
というわけで、更新頻度が上がりそうです。




