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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
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49 思わぬ再会。感動はしないな。人じゃないし

「なんとか助かった」


ルノウの部屋に泊まり、ヒジリに押し付けられそうになったものを回避したその日の放課後。僕はヒジリにつかまり、説教を受けたのだった。

意外だったのは、その説教の内容が、僕が突然いなくなったせいで心配したという内容だったことだ。

正直言って僕は心配をされていないと思っていたから、これに関しては普通に謝った。申し訳ないし。


「でも、意思表明会は本当に僕に押し付けようとしていたんだな...」


僕に押しつけようと考えていたヒジリは、話す内容を決めるどころか、僕に丸投げする予定だったので、話す気すら無かったようだった。

しかし、朝になっても僕が戻ってこない。よって、実際に話す直前まで考えていたようだが、特にまとまらなかったようで、他クラスに喧嘩を売って終わった。

その内容は普通に喧嘩を売っているだけなので、特に思い出す必要はないだろう。


「あら、アイラじゃない」

「あ、ルノウ」


そんなことを考えながら廊下を歩いていると、ルノウに出会った。最近ルノウによく会うような気がするが、まあ気のせいだろう。

この人も暇なわけじゃない。


「こんなところで何をしているの?」

「何を、って言っても、特に何もしてないけど。

ここにいたら何かまずいかな」

「いいえ、何も無いのなら、いいんじゃない?」

「...?」


ここにいると何か厄介事に巻き込まれるとでも言うのだろうか。

厄介事はごめんなのだが、僕の勘もまだ何もを反応していない。それなら、まだ警戒する必要はないだろう。

まあ、気づいた時には手遅れの場合もあるのだが。毎回回避できていたら僕は怒られていない。


「まあ、本番頑張りなさい。私に負けたくなかったらね」

「あ、うん。頑張るよ」


別に負けることに関しては何も思うところは無い。

僕は僕のクラスの連中とは違い、進級に官営することは無い。扱いとしてはリナたちと同じらしいのだし。


しかし、今こうしていても特にやることは無いし、廊下を歩いていく。

今は放課後といっても、学院の生徒のほぼ全員が訓練に出ている。恐らく、日が出ている間はやっているのだろう。

なら、今のうちに、しておきたいことはすませておくに越したことは無い。


したいこと、それは、学院の探索だ。


「地下には行ったけど、この学院の全部を把握しているわけじゃないしね」


いくらスキルでこの学院の中がわかるといっても、実際にどんな場所なのかはわからない。その部屋が白いのか黒いのかも判断できないのだ。

人に関しては、事前に直接会い、魔力を覚えなければいけない。

意外とスキルにも弱点があるのだ。万能なのは『創造スキル』だけだ。


「さて、スキルによると、ここを曲がれば...」


曲がり角を右に曲がる。みんなが訓練している間に調べておいたこの学院の全体図だが、気になる場所があったのだ。


曲がった先にあったのは、赤く塗装された、僕がよく見ていた物体だった。

全体図としては、縦に2mほど。横に1mちょい。半分から上には、全部で3段に分かれ、スイッチが横にずらっとある。

そのスイッチの上には、ボトルのようなものが、それぞれ違う模様をしたものが並ばれている。

中央右には、透明な板がついており、細長いものを入れられそうな穴があいている。

その右にはレバーが。さらに右には、先ほどよりもさらに小さいものを入れられそうな穴があった。

どちらの穴も横に伸びている。その下には、透明な板がついている受け皿のようなものが。


そう、自動販売機である。


「廊下に四角い箱のようなものがあったから、気になったんだけど、まさか自販だとは...」


高校でよく見かけた、廊下にある自動販売機。なぜか大体の学校にミルクオレが置いてあることに不思議に思ったものだが、おいしかったから特に問題ないかと思ったのも懐かしい・

というか、なんでここにあるんだろうか。ここは学院の中でも、人が来ない場所。端というわけではないが、こんなものがあって、みんなは不思議に思わないんだろうか。

しかし、今はそんなことはどうでもいい。問題は、別にある。


「中身は入っているんだろうか」


もしあるのならば、魔法を創って飲める状態にするのだが。

どれどれ、透視の魔法でも創りますか。


「『インビジブル・アイ』」


これだと周りから目が見えなくなってしまいそうだが、まあ良いだろう。名前はさほど重要じゃない。

高いところが苦手でピンク色の髪をした完璧生徒会長だって、キャラの名前はわかりやすい方がいいとか言っていた気がする。

さて、中身を見るとして、何が入っているかな?


「んー...やっぱ何が入ってるかはわからないけど、何かが入っていることはわかったかな」


透視といっても、自販機が透けて中の物がそのまま見えるわけではない。

簡単に言えば、レントゲンのような感じだろうか。

見たいと思って、その前にあるものを透かしているのではない。

この奥には何があるのだろうかと思って、それを透かしているのだ。

だから、自販機の中にあるものは全部見えるけど、色とかは全部同じになってしまうのだ。

なんとも不便な魔法である。しかし、使いどころによっては十分使える魔法だ。

例えば、女の子の制服を透かしたとしよう。

すると、次にブラジャーをつけた体が出てくる。

素晴らしい。


「おっと、そんなことを考えてる場合じゃない」


女の子の制服を見たところで、そんなものを見て想像するくらいなら、自分の体を見るし、見ようと思えばヒジリの着替えも見ることができる。

ルノウに至ってはもう慣れた。まあ、いつ見ても綺麗なことには変わりないんだけど。


「せい」


腕力に物を言わせ、自販機を開く。中身は奥に入っているので、中身をぶちまけてしまわないように慎重に破壊する。

慎重に破壊ってだいぶおかしいと思うのだが。


「...ふむ」


透視で、ペットボトル以外にも紙パックがあるとは思っていたが、まさかいちご牛乳があるとは。

というか、ラインナップを見ておけばわかったことなのだろうが、中身が気になりすぎて普通に失念していた。


「さてさて」


魔法を作成。

今回の魔法は時戻しだ。仕組みは簡単。過去の状態にするのだ。存在の上書きとも言う。

こんなことを人にでもしたら大変なことになるが、出来るのは僕だけなのだし、問題は無いだろう。


「『時戻し』」


こんな危ない魔法なのにどうしてそのままなのか。僕にネーミングセンスは無いようだ。前からわかってた? 僕もわかった。


「いざ、実食」


どこかの食わず嫌いの番組で聞いたことがある言い方でいちご牛乳を飲む僕。うむ、おいしい。

それはいいのだが、他には何が入っているのだろうか。


「...いや、今日はここまでにしよう。このまま出してたら全部飲んじゃいそう」


つまり、夕飯が食べられないということ。前は普通に1人で食べていたから特に気を遣わずに済んだが、今は1人じゃない。食べられないなんて姿は見せたくない。

何を言われるかわからないし。特にヒジリとルノウに。

最初にヒジリに怒られて、そのあとにヒジリとルノウに怒られる。どうして2回も怒られるのかはわからんのだが、とにかく2人に怒られる。

怒られるのは好きじゃないし、面倒事は普通に回避したい。


「さて、この紙パックは燃やしてと」


空中で一気に燃やし、地面に着く前に灰となり風に流されていく。水分も一気に飛ばしたのか。こんなこと、日本ではありえなかった光景だ。

こんなことができるのなら、ゴミ箱にはゴミが一切無くなるだろう。そして、地球温暖化はますます進んでいくと。

というか、それを考えるなら、この世界では温暖化とかは無いんだろうか。


まあ、どうでもいいか。炎の魔法を使うのなら、氷の魔法も同じぐらい使ってそうだし、雷という自然現象ですら人の力で起こすことができる。

そのことを考えたら、現代の常識は通じないのだろう。

この星だって、もしかしたら地球じゃないのかもしれない。宇宙に出たら、水金地火木土天海とか、地しか無いかもしれない。あれ、今は海王星は入ってないんだっけ。

まあそんなことはどうでもいい。実際に確かめるのはまだ先なのだろうし、今は深く考える必要も無いだろう。

だが、もし地球がこの星ではなく、この宇宙のどこかにあるのならば、探してみたいと思う。


昔の友達に、家族に、会いたいのだ。


「...」


いかん、少し昔のことを思い出した。

意外と、自分以外のことは思い出せるのだな。記憶の中では、昔の写真の中に写っている自分の顔は真っ黒に塗りつぶされているのだが。

いや、昔は普通にいじめられていたわけじゃない。普通に暮らしていたはずなのだ。しかし、記憶の中では、家族の集合写真ですら僕の顔だけが黒く塗りつぶされいている。

黒ペンとかでつぶされた感じでは無い。

なんだ、この感じ。

...そうか、塗りつぶされたというより、穴があるといった方が正しいかもしれない。そこだけ、記憶の穴があるのだ。


「ま、深く考えても何も起こらないよな」


しっかりと考えなければいけない問題。しかし、これ以上考えたら、今度は家族の顔も穴になってしまうのではないかと怖くなって、僕はそれ以上考えることをやめた。


だいぶサボってましたね。

がんばりまー

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