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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
61/79

50 本番当日 ブレイク開始

ついにやって来てしまった、イベントの当日。

僕は開会式に出席していた。まあ、出なかったら普通に怒られるんだけども。


「今日この日のために努力をしてきたわが学院の生徒のみなさん。己の全てを賭けて、頑張ってください」


壇上のルノウが挨拶を述べる。なかなかに物騒な無いような気がしないでもないが、まあ、僕は賭けるものは無いし、特に問題は無い。


僕が並んでいるこの列は、現代の学校のように、クラスごとに2列に並んでいる。しかも、出席番号順で並んでいるらしく、僕が1番前だ。

こっちの世界にもそんなものがあるなんて思いもしなかったが、混乱することも無くていい。


「ご来場の皆様。我が校の生徒たちの勇士をどうぞ、ごらんください」


そう言いながら、僕の方をちらりと見て。


「それでは、以上で挨拶を終了とさせていただきます。競技の開始時刻はこれより1時間後、9時から開始いたしますので、それまでに、ぞれぞれの場所に待機していてください」

「...」


一瞬微笑みながら、挨拶を終了した。

そういうの、ずるいと思います。


「しっかし、ついに来たねえ」

「...そうだね」



ルノウの挨拶が終わり、周りが少し騒がしくなってきたときに、ヒジリが声をかけてきた。

意外と興奮はしていないようだが、大丈夫だろうか。

逆に心配になる。


「何その顔。なんか失礼なことを考えてない?」

「いーや、別に」


ここ最近で、嘘をつくのが上手になってきたような気がする。便利で嬉しいような、嬉しくないような。

まあ、ルノウやアリス、それにパーティーメンバーには極力嘘をつかないようにしよう。そもそも、嘘をつくような状況にする僕の方が悪いのだ。

そんな状況に、僕がしなければ問題は無い。

ヒジリ? ヒジリはいいんだよ。別に。

嘘をついていいとかは無いんだろうけど、なんだかヒジリなら大丈夫な気がするのだ。

まあ、言い訳と言われてしまえばそれまでなのだが。


「ヒジリは落ち着いてるんだね」

「まあね。ルノウの弱点も無事見つけたことだし」

「弱点?」

「ふふ、まあ、後の楽しみよ」

「?」


そういうと、ヒジリは会場から出ていく。その方向はこれから行う種目の会場とは逆の方向だが、どこに行くのだろうか。

3歩歩いたところで、ヒジリがUターンしてくる。

顔が少し紅かったので、恥ずかしかったのだと思う。

というか、なぜ間違えた?


「べ、別に、そんなに不思議そうな顔しなくてもいいじゃない。私だって緊張してるのよ」

「ああ、なるほど」


普通にヒジリが説明してくれた。優しい。

そんなことより、とヒジリが話題を切り替える。誤魔化したな。


「最初の競技はなんだっけ」

「確か、最初はブレイクだった気がするけど」

「ふん、さっさと終わらせちゃいましょ」

「...うん、そうだね」


まあ、ヒジリが触れてほしくないのなら、僕もそれには触れないでおこう。

誰しも、そういうことだってある。






ブレイクは、所謂丸太倒しで、クラスに1本配布された自分たちの丸太を倒さないように、相手の丸太を倒すゲーム。

ルノウが出場する競技は、トッパーのみなので、それまでは安心できるともいえるが、ヒジリはそうでもないらしかった。

理由は、リナたちの存在だ。


会場には既にたくさんの人が集まっている。

会場の規模も、前回の天下一武道会みたいな大会とは比べ物にならないくらい大きくなっている。

フィールドも大きくなっている。

ブレイクは全クラスで同時にやるものだし、それなりに距離がないといけないのだろう。

範囲魔法なんて使ったら、自分の丸太にも影響が出てしまうかもしれない。

まあ、僕からしたらこれくらいの距離は関係ないのだが。


「意外と狭いのね」


ヒジリもそう思ったのか、感想を漏らす。

現代に暮らしていた僕からするとかなり広いのだが、こちらの世界で生活してきた僕からしたら、少し狭い、といった程度だ。


会場には既に、丸太が設置されている。

数は全部で10。つまり、クラスは全部で10ということになる。

全体の生徒総数は前に400だったような気がするが、まあ今はそんなことはどうでもいい。


この競技での制限は特にない。というか、競技全てに制限は基本的に無い。

しかし、そうなると、僕やヒジリのような抜けている奴がいたら有利じゃないのかという声が上がらないのかと思ったが、そこまで実力が離れているとは思っていないようだった。

僕の自意識過剰のようだが、それを利用して僕が活躍するのは、僕の好むシチュエーションじゃない。

なので、ここはアリスに頑張ってもらおう。

というか、全般的にアリスに頑張ってもらおう。


「そういうわけだから、アリス、少し頑張ってもらえる?」

「うん、まかせて!」


アリスにそういうと、傍にいたアリスは、準備運動をし始めた。まあ、腕をぐるぐる回しているだけなのだが。


そんなやり取りを見ていたヒジリは、少し引き気味に僕に言う。


「ねえ、アリスちゃんに表立って戦わせるの?」

「うん、そうだけど」

「それって、人としてどうなの?」

「...」


まさかヒジリに人としてを諭されるとは思っていなかったが、アリスをスターに押し上げ、僕の影を薄めるにはこれ以上ない絶好の場なのだ。

それに、誰も、アリスを心配していないとは言っていない。


僕は、ヒジリを安心というか、理解させるために説明を始める。


「大丈夫、僕だってアリスを心配していないわけじゃない。むしろ僕の命と同じぐらい大事だよ。でも、アリスがこの中なら僕の次に強いというのも本当なんだ。

だけど、本当に危なくなったら、僕が少し本気を出すから、そこら辺は安心してほしいな」

「...まあ、アイラがそういうなら」


怪我させないでよね、とヒジリは言うと、会場の中心に向かって歩き出した。


見れば、既に人が集まっている。

その数は、11人。

各クラスの代表者と、サンバール先生とルノウだ。

何かを話すのだろう。まあ、何を話すのかは知らないが。選手宣誓みたいな感じだろうか。


「それでは、これよりブレイクを始める。選手は位置について!」


ルノウの声が響く。

ルールの確認をしていたのかもしれない。それぞれのチームでルールの相違があったら大変だ。

それこそ、死人が出るかもしれない。うちのクラスは特に殺気立っているからな。


「始め!」


ルノウがそういうと、中央の9人は一斉に殴り合いを始め、他のクラスの奴らは、他の棒を倒そうと走りだす。

サンバールクラスの棒の下にいるのは、僕とアリスだけ。僕が片手で支えている程度でこの棒は立っている。

他の生徒は全員攻めに転じたようだが、これだと迂闊にアリスを前に出せない。

本気を出していいなら話は別だが、これはあくまで競技だ。僕は成績に深く関係しないし、そこまでする必要は無い。必要なやつだけ必死になるといい。

とはいえ、この戦力だと、リナたちに蹂躙されておしまいだろう。


中央のリーダー対決に目をやる。

見たところ、9対1のようだ。ヒジリが一方的に攻撃されている。

いくらヒジリとはいえ、そこそこやれる9人を相手にしては、攻撃も出来ないか。

しょうがない、アリスをあそこに送り込んで、ヒジリにうちのクラスのサポートに回ってもらおう。


「アリス、ヒジリのサポートだ。本気でやってきていいよ」

「うん、いってくる!」


僕が指示すると、アリスは走ってヒジリのもとへと向かっていった。


アリスは到着するや否や、一気に3人を蹴散らし、形勢を逆転させる。まさに力技だ。

アリスの力技に、さすがのヒジリも驚いている。

もちろん、僕も驚いている。

あんなに強化した憶えは無い。


「1人で守備って、このクラスはなめてんのか?」

「ん?」


アリスの活躍を見ていると、横から声がかかった。

距離は約30m。なんで何もせず、声をかけるのだろうか。

一応、実戦のようにという連絡は行っているはずなのだが。

数は10。

これだけの数を気づかずにここまで接近を許したのか。うちのクラスのやつらもまだまだだな。


「それで、僕だけだからって簡単に倒せると?」

「護る気が無いから、お前みたいな弱そうな女子に護らせてるんだろう?」

「はは、おもしろいクラスだよねえ」


先頭に立っている男がいい、その傍に寄り添っている女子が付け足す。

その2人のやり取りを聞いて、残りの8人は笑う。

確かに、僕の実力を知らなければ、サッカーで言うところの、自分たち側のコートはキーパーだけで護っているようなものだろう。

それでも、僕の実力なら、それが可能だ。

サッカーにせよ、ブレイクにせよ。


「そんなことはどうでもいい。さっさとかかってきなよ」


手のひらを上に向け、指をちょいちょいと動かす。挑発のサインだ。


それを見るや否や、男と女子以外の8人は一斉に飛びかかってくる。

あの2人はカップルなのだろうか。まあそれはいい。それよりも、この8人をどうやって無力化しようか。

適当に、死なない程度に氷漬けにでもしようか。


「『アイスストーン』」


本来ならば、自身の目の前で氷塊を作って、相手にぶつける魔法なのだが、氷塊を作る場所を、8人のいる場所に変更する。

すると、ものの数秒で8人は氷塊の中に閉じ込められる。

ふむ、こんなものか。


「...えっ?」


僕がこんな芸当を出来るとは思っていなかったのか、男は激しく狼狽する。

隣に立っていた女子は既に逃げ出している。

まあ、いい判断だ。ここが戦場なら、少し判断が遅いが、死なないにはそうするのが1番良い。

だけど、それで逃げられるとは言っていないがな。


再度『アイスストーン』を作り出すと、女子は走りながら氷塊に巻き込まれ、なんともおもしろおかしいポーズで固まってしまった。

さて、男はどうするのかな。


「...」


凍らされた女子を見て、そのあとに僕を見る。

その顔には、既に戦意は喪失していた。


これ以上の戦闘は無駄だろう。そう判断した僕は、男も氷塊に閉じ込め、防衛を完了した。

さて。


「お、いい感じだな」


アリスが加わったリーダー同士の戦いはすぐに決着を終えていたようで、既に他のクラスの棒を3本倒していた。

他のクラス同士が戦って、2本倒れているので、残りは僕達の棒を含めて5本。後4本を倒せば僕達の勝ちだ。


「だけど、問題はあのクラスだよなあ」


僕は、綺麗な青髪で、見覚えのある武器2つを持って戦っている見覚えのある少女を見つめた。

問題は。


「リナのクラス」

そういえばまた台風が来ているみたいですね。

みなさんも気を付けてください

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