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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
51/79

40 「きみ日本人?」「イエ、チガイマス」

「...すみません、『ニホン』ってどこですか?」

「ご存じありませんか? 東の方にそう言った国があるのですが」

「そうなんですね。ぼ...私も行ってみたいです」

「そうですね」


あ、あぶねー!

ルノウに心の準備をしておけと言われていたからか知らんけど、動揺してはいなかったはずだ。

そもそも、この世界にも日本がある可能性はあるが、この男は怪しすぎる。

僕が異世界人だと睨んでいるのかは知らないが、なぜか信用してはいけないと僕の勘が言っている。


「それでは、僕はこれで」

「は、はい」


こういった場所で話すとき、女の人が『僕』とか言ってたら怒られるっていうラノベを以前見たことがある。

それを思い出して1人称を変えたのだが、上手くいったようだ。


『みかん』ジュースが入ったグラスを少し傾ける。


「...しまった、名前を聞いておくべきだった」


あの状況なら、僕があの男に一目ぼれをした設定でも通せるはず。

ミスったな、と思いながらジュースを一気に飲み干す。

女王様が到着してから時間はそれなりにたったと思うのだが、未だに会場は騒がしい。


会場内に戻ると、女王様を中心に人だかりができていた。

このままだとパーティが始まるのかわからないのだが、仕切り人とかいないのだろうか。


あ、ルノウと目があった。


「...え、こっちに来い?」


目が合うと、ルノウは笑顔で僕を手招きする。

本気で言っているのだろうか。

このまま逃げ出してしまいたいのだが。


「さすがに許されないか。...後で何をされるかわかったもんじゃないし」


渋々ルノウのもとに歩いていく僕。


「よし、来たわね」

「ええ、まあ来たけど」

「それじゃあ、私は話し合いがあるから。後でこっちにも顔を出してちょうだいね」

「え?」


じゃあね、とだけ言い残して、ルノウはそのままどこかへと行ってしまった。

先ほどまでルノウと話していたのだろうか、女王様がこっちを向いた。


...口調を変えたらばれないとか、そんな感じの話ではないのだろうか。


「うん? ルノウは...」

「先ほど、どこかに行かれましたが」

「...ふむん? お主、どこかで...」

「き、気のせいですわ」

「...そうかの」

「あはは...」


そんな感じの話だった。

まあ、化粧はしていないが、ドレスを着ているとは思わないか。

女王様と言っても、所詮は子供か。


「しかし、お主がルノウの言っていたものか」

「ルノウが言っていた?」

「うむ。面白い人がいるとな」

「...」


一体何を言ったのだろうか。

普通に元気な人みたいな感じで紹介してくれていないだろうか。


「アイラと、もう1人の謎の美少女。名前は聞いていなかったが。お主、名前はなんというのか?」

「...」


なるほど、なんとなくわかった。

つまりあれだ。どうせ僕と顔を合わせるのだし、僕の紹介をしたのだろうが、アイラとは別の少女ということになっていると言った感じか。

なぜルノウが、僕Ver.ドレスとアイラという少女を分けているのかは、説明する必要はないだろう。

しかし、そういった場合、名前はどうしようか。


替えの名前を準備なんてしなかったし。


「...マ」

「マ?」

「マイ、です」

「マイか。よろしく頼むぞ」


女王様が手を差し出す。

素直にその手を握る。


咄嗟に思いついた名前だったが、なんとかなったか。


「それと、マイは強いのだろう?」

「...まあ、それなりに」

「どうじゃ? わしの警備隊にでも入らぬか?」


この人は強い人は誰でも勧誘するのか。


「あの、警戒心とか無いんですの?」

「ルノウが言っていたのだ。ならば、警戒する必要はないだろう?」

「...さいですか」


そのうちルノウには言ってもらおう。

すぐに信用するな、と。


これでもしルノウが偽物だったら、この女王は簡単に騙され国は一瞬で崩壊するだろう。

多分。


「して、どうじゃ?」

「いや、どうと言われても...私にはすることがございますから」

「ふむ。以前にも似たようなことを言われて断られたのだが、お主とアイラは2人で何かをしているのか?」

「え? あ、いや...」

「そういえば、わしもとあることを進めていてなぁ」

「とあること?」

「うむ」


そうして、女王様は喋っていいことなのかわからないことをペラペラと喋り出した。


「魔術を使えないものを集め、魔術を使えるようにしているのだ」

「それって...」


魔眼、だろうか。

しかし、そうなると魔族が関わっていることになる。

それも、魔眼を付与できるような魔族が。


「いや、魔族は関係していないぞ。

わしの企業はホワイトじゃ」

「ホワイトって...」


でもそうなると、どうやって使えるようにするのだろうか。


女王様は、そばにいる人からグラスを受け取り、中身を一気に飲み干し、そのままグラスを投げ返す。


「魔法を付与できるものがおるのだ。その者が、キカイというものを用意してな。それを付けると魔法が使えるというのだ」

「そりゃまた...」

「しかし、それを付けるには条件があっての」

「条件?」

「うむ」


少し場所を移動するか、と女王様は言い、周りの人から離れるようにバルコニーのような場所に出る。

外に出ている椅子に腰かけ、僕と1対1の状況を作りだす。


「...一応、気にはしていたのですか?」

「いや、条件があるとまでは話してよいのだ。あやつらは、そう言ったことを聞けば、すぐに他の者に言う。

しかし、肝心の条件は何なのか。それを探ろうとしている者をあぶり出すのには最高なのだ」

「なるほど」


つまりエサ、というわけだ。


「それで、その条件って言うのは?」

「うむ、なぜか10代の者しかつけられないのだ」

「...なんだそりゃ」

「しかも、魔法を使えないものを使える状態にするのが目的だからか、既に魔法を使えるものは着用できないようなのだ。

身体能力の大幅な向上が見られるために、わしもつけようと思っていたのだが、わしはつけられないみたいで、残念だったのだ」

「まあ、本来の目的を達成できるのですから、それでいいのではないですか?」

「まあ、そうなのだがなあ...」


女王様は椅子の上で胡坐をかく。

女王様がそんなことをしてもいいのだろうか。

...誰も見ていないからいいか。


「まあ、わしもそのうち着用できるようにしてもらえるようにするとして、その作成者がクロバネというのだが...」

「クロバネ?」

「うむ。そやつがまあ、存外面白い奴なのだが、いかんせん頭のおかしいものなのでな」

「...頭のおかしい、ですか」


日本人であろう者なのだが、そういった評価を受けているとは、敵にしても味方にしてもいやなものだな。

これって、アニメのファンとかと同じ感じなのだろうか。

普通のファンならそうでもないのに、一部過激派なファンのせいで、そのアニメの評価が落ちるみたいな。


いや、違うか。


「まあ、実際に会ってみたらわかるのだが、突然おかしなことを言うやつでな」

「おかしなこと、ですか」

「うむ。『徹夜にはエナジードリンクがぁ』。などと夜中に毎回叫ぶのだ。しかし、えなじぃどりんくとはなんじゃ?」

「...」


間違いなく、日本人なのだろうなあ。

しかし、関わりたくないなあ。


いや、既に話しかけられていたか。

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