表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
48/79

37 試したい魔法があるんだ。相手は魔族で

魔法の波が、ここまで伝わってくる。


「...我が手に集まれ」


ルノウ会長が、何かをしようとしているのがわかる。

腰だめに構えた剣の上に、手を重ねる。


「『飛べ』!」


会長が叫んだ瞬間、その場からは消えるようなスピードで魔族の前へと飛び、そのまま胸を突き刺す。

しかし、魔族もそれだけでは死なないようで、刺された剣を掴む。


なるほど、その剣さえ奪ってしまえばと考えているのか。でも。


ルノウが予想通りというような顔をする。

こんな顔は、僕じゃなきゃわからないような表情だ。


ルノウはすぐに剣を手放し、魔法を唱える。


「『ディストーション・インパクト』!」


その瞬間、魔族の体が瞬時に膨れ上がる。

なるほど、音か。


だが、これでやられてしまうなら魔族は魔族として恐れられてはいない。


魔族の片目が、赤く光る。

ああ、そういえば魔眼持ちだったな、そう思った瞬間、その眼から伸びた光がルノウの胸を貫いた。

さすがにそれは予想外だったのか、ルノウは顔をゆがめる。


その顔を見て満足したのか、魔族は薄く笑い、そのまま爆発した。

爆発した衝撃が、近くにいたルノウを襲い、そのまま体を地面に叩きつける。


「がはっ」


ルノウの口から血が吹き出る。

今ので肺に穴が開いたのかもしれない。


僕は急いで駆け寄る。

僕には、『オールヒーリング』という魔法がある。

生きてさえいれば、絶対に治せるはずなのだ。


ルノウのそばに駆け寄る。


「ルノウ、大丈夫!?」

「...」


ダメだ、意識がない。でも、まだ息はしている。

ならまだ、間に合う。


「『オールヒーリング』」


緑のような、青のような、淡い光が僕の手のひらから出て、ルノウの体を包み込む。


時間にして数秒なのだろうが、僕にはその時間が何時間ものように感じた。

そして、光が収まり、ルノウが目を覚ましたとわかった時は、腰が抜けるかと思った。


他人が命がけの戦いをするということは、こういうことなのだな。

よくわかった。次からは僕がやるとしよう。


「...ここは、天国? それとも、地獄?

あら、アイラもいるということは、死んじゃったの?

そんなに強い魔族だったのかしら...」

「いや、現実ですけど」


まだ夢を見ているのか、ルノウはなんだか変なことを言っているようだ。


爆発した方向を見る。そこには、魔族の肉片と思わしきものが焦げて転がっていた。

ああいうのって、回収しなくてもいいんだろうか。

まあ、どうでもいいか。


「...ごめんなさい、助けられちゃったわね」

「いや、それは大丈夫...?」


なんだろう、パッシブの感応スキルに何かが反応している。

普段過ごしていても、普通の市民でも反応するこの感応スキルは、自分が設定したもののみ反応するように設定もできる。


設定する範囲は、敵意を持っているものだ。

敵意を向けている相手がだれでも反応するようになっているので、先ほどのルノウも魔族と同様に反応していた。


そんな奴が、複数こっちに来ている。

数は...20はいるか?


「ルノウ、少しここで休んでいて」

「...?」

「僕はその間、ちょっと遊んでくるよ」


遊ぶと言っても、変な奴らとだが。


さて、反応からしてもう姿が見えてもいいころなのだが。

もし余波がルノウにでも来たら大変だ。

我ながら少し心配しすぎかもしれないが、先ほどあんなに激しい戦いをしたんだ。

これぐらいしないと僕が心配で戦いに集中できない。


ルノウに『フィジカルアーマー』と『マジックアーマー』をかけておく。


さて。


「おいでなすった...?」


草原のさらに奥。森から出てきたのは、先ほどの魔族と魔力の感じが似ているが、その全てが先ほどの魔族より強い反応を示している、魔族の群れだった。


「...きさまか、あいつをやったのは」

「...」


中でも抜きんでているやつが、僕に声をかける。

ふむ、こいつと正面からやりあったら、ルノウだと数分で殺されてしまうな。


「...だとしたら?」


流石に、この数からルノウを守りつつ殲滅出来るほど、僕は有能じゃない。

この能力を使えば、もしかしたら可能なのかもしれないが、いかんせん中身は僕だ。

ここは、僕が身代わりになって注目を集めたほうがいいだろう。


僕がとか適当なことを考えていると、僕が殺したのが判明した途端に、その魔族は僕に向かって突進しながら言った。


「全員、こいつを打ち取れ!」

「オオオオオオオ」

「ガアアアアアア」


「...ええ?」


魔族の群れが、一斉に僕に襲い掛かる。

なるほど、弔い合戦のようなものか。

だけど、そんなことやすやすとやらせるつもりはない。


「『ゴッド・オブ・インパクト』」


僕が唱えたのは、話に聞いていた超越魔法、それを上回る威力の魔法。

神すら滅ぼすほどの威力だと自分では思っている。


魔法を唱えると、莫大な魔力が吸い取られていく。

この僕の魔力量ですら、減っていることを知覚させるほどの量だ。並大抵の人がやれば一瞬で干からびるだろう。

そして、十分な魔力を蓄えたこの魔法は、僕の前方を薙ぎ払う、絶大な強者の一撃。


あまりに強い力なため、僕でさえ目をつぶってしまう。

次に目を開けた時には、もともと草原だったこの場所は跡形もなくえぐれ、隕石でも落ちてきたのかとう状況になっていた。

幸い、森に被害は出ていないようだった。なるほど、範囲はその程度か。


自ら神の名をかたるのは変な気分だが、これが、今僕の中で一番の威力を誇る魔法だ。

そのうち女神の名前でもいれようかと思う。


「...さて」


魔族の証拠を跡形もなく消滅させていれば、騒ぎになる必要もないだろう。


後は、ルノウが倒した魔族の肉片だが。


「ルノウ。ルノウが倒した魔族の肉片は、どうしたら」

「ちょっと待って!」

「...うん?」

「今の魔法、何?」


何、と言われても、自作しましたなんて言えないしなあ。


ともかく、その話はまたあとでした方がよさそうだ。

空間スキルで国の中の様子を見たが、だいぶ大騒ぎになっているようだ。


「ルノウ、その話は僕の部屋でしようか。今は先に戻った方が良さそうだ」

「え、ええ、そうね。そうしましょう」


こうして、魔眼持ちの話は、終わりを告げた。







「何終わらそうとしてるの」

「ダメ?」

「ダメ」


国の中にこっそり戻り、現在は僕の部屋だ。

部屋に戻ってきたとき、ヒジリはいなかったが、代わりにリナがいた。


『あれ、ヒジリは?』

『ヒジリさんなら、ご主人様の後を追いかけてでかけてしまいした。行き先を伝えていないので、今はどこかを走っているかと』

『あ、そう』


といった感じだ。


他の2人は聞かなくてもわかる。

寝ているのだろう。


さて、問題は。


「さあ、説明してもらいましょうか」

「...どうしても?」

「ええ。私がやっとの思いで倒したやつよりも強い魔族を複数を相手にしたのに、それを一瞬で消し去る力。明らかに異常でしょ」

「確かに」

「だったら説明しなさい」


まあ、ルノウなら大丈夫だろうか。立場上、誰かに不用意にばらすなんてことはしないだろうし、ましてや女王様の耳にもはいることは無いだろう。


「えっと、あの魔法は僕が作ったもので」

「作った?」

「うん」


僕がそれだけ言うと、ルノウは僕のベッドに寝転んだ。

そして、深いため息をつく。


「はぁ.......アイラは色々と規格外なのを忘れていたわ」

「なにそれ...」

「こっちの話よ。まあ何はともあれ、私の命を救い、さらにこの国をも救ってくれたのだから、感謝はしないとね。ありがとう、アイラ」

「いやいや、僕としては、ルノウを救っただけだし」

「国はついでってこと...?

まあ、私を優先してくれたのは嬉しいことなのだけど、立場上悩ましい状況ね...まあ、このことは公には出来ないわ」

「まあ、そうだろうね」


魔族が攻めてきた、なんて話は僕は今まで話にも聞いたことがない。

もしかしたら過去にもあったんだろうか。


「ねえ、過去にもしかして」

「...いえ、魔族との戦争の記録なんて無いわ。

そもそも、魔族も人族も温暖なの。お互いがお互いを認めて、それぞれの領地で平和に暮らしていたのだけど」

「...ふむ」


なら、何かしらの不満がたまって、こうして戦争を始めるようなことをしたんだろうか。

いや、そもそも、後から来た魔族だって、『弔い合戦』をしに来たのかもしれないし、あの魔眼持ちの魔族も、僕達が嗅ぎまわらなかったら何も変化は無かったかもしれない。

僕達が、余計なことをしたのかもしれない。


「でもまあ、今日はお疲れ様。もう休んでいいわよ。私は寝るわ」

「え。でもそこ僕のベッド...」

「...すぅ」

「...まじすか」


ルノウはそれだけ疲れていたのだろうか。

僕のベッドで寝転がりながら話していたら、そのまま寝てしまった。

どうしよう。


「ご主人様、私の部屋のベッドを使いますか?」

「あ、いやいいよ」


いくら僕の奴隷といえ、ここではお互い生徒として過ごしてほしいのだ。

そんなことはできないし、させない。となると、僕はルノウの部屋でなるのが道理になるのか。


「それじゃあ、僕はルノウの部屋で寝るよ」

「はい、おやすみなさい、ご主人様」

「うん。リナも早く寝るんだよ」


そして、扉を閉める。


そのまま向かったルノウの部屋の中は、相変わらずピンクしていた。

以前僕が顔をうずめていたぬいぐるみもある。可愛いとは言えないが。


「...」


しかし、今の僕はそんなことはしない。

空間スキルと移動スキルのコンボで、地下4階に転移。

そのまま風呂で汗を流し、出来るだけ綺麗にしておく。

それがすんだら、髪の毛からしっかりと水分をふき取り、木属性魔法の『ウィンド』で髪の毛を乾かす。


そして。


ばふっ。


「...いいにおい」


僕は、安心するようないいにおいの中で、眠りについた。

その後日、ルノウに怒られたのは言うまでもないが、あれはルノウも悪いのではないかと思う。

そのことを言ったらさらに怒られ、げんこつまでされた。

痛かった。

別に、ルノウは死んでもいいかななって思ってるんですけど、こんな序盤で死なれるとアイラも作者も困ることに気づきました。



投稿時間なんですけど、昼と夜の2回で分けて投稿しようかなって思ってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ