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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
47/79

36 対魔族

※今回はルノウ目線です

手が、震えている。


「さあ、それでは、やりましょうか」

「...ええ、そうね」


今目の前にいるのは、あの魔眼持ち。

髪が白くなるほどの戦闘をした、そんな人。

しかし、魔族の可能性もある。

1流の冒険者か、魔族か。

そのどちらでも、私では勝ち目は薄い。それでも。


「生徒を守るために、生徒会長はいる」

「...」


私の後ろには、生徒がいる。

その実力はよくわからないが、もしかしたらこの相手にさえ余裕で勝ってしまいそうな気がしてしまう。

だけど、生徒なのだ。私が生徒会長を務めている、学院の。

なら、私が戦うべきなのだ。

例え、死んでも。


まあ、私が死んでも、アイラならうまくやってくれそうなのだが。


「『ブラストバーン』!」


まずは、『ブラストバーン』で攻める。

手のひらから出る魔力が、一瞬で獄炎へと変わる。

しかし、その炎は相手を捕えられずに、草原を焦がしていくだけ。


この魔法は通じないか。なら。


「うんうん、基本は出来ているようだ。人間もやるなあ」

「...なるほど、魔族なのね」

「確かに僕は魔族だけど、悪い魔族じゃない」

「それで、はいそうですかって見逃すわけがないじゃない」


『宝物庫』から、1本の剣を取り出す。

『宝物庫』は、魔法の一種で、私ぐらいなら馬車1台なら収納可能な、所謂宝物庫だ。

空間魔法の一種だから、相手に干渉を受ける可能性もあるのだが、今回は受けなかったようだ。


「...これで、いけるといいんだけど」

「なんです、その剣。なんだかいやな予感がするんですが」

「あなたが知る必要は無いわ。死ぬんだもの」


魔法で身体強化を施し、一気に距離を詰める。

剣を素早く振るが、あと少しのところで避けられてしまう。


そもそも、人間1人で魔族1体に勝つというのは無茶な話なのだ。


「ちっ、ちょこまかと」

「ふふ、その剣は確かにいい剣ですが、当たらなければどうにもなりませんね」

「...ええ、そうね」


魔族というものも、人間と同じように階級が存在する。


下級、上級、超級、覇王級と上がっていき、最後に魔王だ。

今の私だと、下級と上級、超級はなんとか相手に出来る程度なのだ...。


(この魔族の階級は、どの程度なのかしらね)


「あなた、階級は?」

「超級」


魔族は、その一言だけ言うとすぐに、魔法を放ってきた。


その魔法は見たことも無いものだったが、本能が警鐘を鳴らす。

『あれはやばい』と。


その本能に従いすぐさま回避行動をとるが、少し遅かったようだ。

魔族の手のひらから放たれたその魔法が右腕をかすったが、それだけで腕が持って行かれそうなぐらいの威力。

そのまま地面にぶつかり、辺りはとてつもない強風が吹く。


この魔法を打ち消そうと思っていたら、今頃私は死んでいたかもしれない。


「...強化魔法『飛翔』」


『飛翔』は、空中戦をするために私が3年もの年月をつぎ込んで開発した魔法だ。

この国にくるまでで、その魔法が必要な状況に出会ってしまったのだから、仕方が無い。


しかし、デメリットもある。

魔力消費が大きいし、とてつもないスピードで空を飛ぶのだ。私自身の体が持たない可能性もある。

全力で飛ばしたことはまだない。


「でも、やるしかないわね。『飛べ』!」


『飛翔』は、私自身の『飛べ』というコマンド操作によって、その真の力を発揮する。

後は、私自身。


「ふっ!」

「...な、に?」


瞬間、私の体は魔族の後ろへと飛んでいた。

その擦れ違った瞬間に、体を肩から斜めに斬った。


手ごたえあり、だ。


「き、きさま...その魔法は何だ...!?」

「あら、余裕がなくなったら喋り方にも変化が出るのね」

「...!」


魔族はそれに気づくなり、すぐに私の方へ襲いかかってくるが、ただ飛んで襲いかかってくるだけなら怖くは無い。

魔族の特性は、魔力量なのだ。それを利用せずに、単純なスピード勝負をするのならば、私の『飛翔』は負けない。

しかし。


「...ふぅ」

「少し、息が上がってきたなぁ?」

「うるさいわね」


魔族の言うとおり、私の限界が見え始めた。

ただでさえ魔力消費の大きい『飛翔』を使い、それの数倍は使う加速のコマンドも使った。

攻撃手段が魔力を使わないという点により、今はまだこうして戦えているのだ。


「...さっさと決めないと」


こちらの魔力が尽きては、何もできなくなってしまう。

私の剣の腕なんて、普通の一般兵士と変わらないようなものだ。

笑って回避され、後はなぶり殺されるのだろう。


「...剣の先から、私の魔力を流し込んで、爆発させるしか」


だが、魔力が持つだろうか。

剣の先から、ということは、まずは魔族の体に剣を突き刺す必要がある。

それには、コマンドを使うことにも繋がる。

加えて、魔族の体の内側から爆発させられるほどの魔法。


「...」


可能性は低い。でも、やるしかないだろう。


まずは。


「...我が手に集まれ、万物を破壊するだけの力よ」


生徒会長のこの私でさえ、詠唱を必要とする魔法。

この魔法は、超越魔法と呼ばれている。

何とか、この魔法を使うだけの魔法が集まった。

後はこのまま、剣を突き刺すだけ。


「...なにかしようとしているな?」

「...」


流石にばれているか。戦闘経験では、向こうの方が格段に上だろう。

しかしやらねばなるまい。


「『飛べ』!」

「!」


そして、今度はしっかりと、魔族の目の前でその勢いは止まる。

先ほどのように勢いで切り抜けはしない。

両手に持つ剣を、魔族の体に思い切り突き刺す。


「ぐおぁぁぁぁあああ!!!!」

「....っ!」


しかし、突き刺した剣を掴まれてしまった。

魔法を起動しきる前に、剣が破壊されてしまうと、行き場の失った魔力が暴発してしまう。


「なら、その前にやる!」


素早く魔法を起動。

魔法名は。


「『ディストーション・インパクト』!」


本来、特殊なフィールドを張り、音の歪みを故意に作って相手を殺すという技なのだが、今回に限っては、フィールドは魔族の体内だ。


「う、ぅぅぅううおおああああ」


膨大な音が、魔族の体内で暴れている。

このまま行けば、絶大な爆発が魔族の体内で起きるのだが、予想通りの爆発ならこのまま接近しているのは良くない。

下手をしたら私も死んでしまうかもしれない。


すぐに離れようと、剣を手放し、その場から離れるために『飛翔』を使おうとした時だった。


「ニ、ガサン...!」

「なっ!?」


魔族の魔眼の目が一段と光ったと思うと、そこから伸びた光線は、私の胸を貫いた。

激痛が胸に走る。

そのせいで、『飛翔』をコントロールするだけの集中力も維持できなくなり、落下しようとした瞬間、魔族の体が爆発した。


「うっ...!」


その爆発せいで、かなりのスピードで地面に叩きつけられる。


「がはっ...」


意識が遠のいていく。

胸を貫かれたのに、まだこんなに意識が残っているということは、心臓は無事なのかもしれない。

いや、貫かれてからここに叩きつけられるまで、1秒しかたっていないかもしれない。


でも、もうそれもどうでもよくなるんだろうか。


私は、死ぬんだろうか。


まだ、やり残したことは、たくさんあるのに。

まず、学院のこと。私がいなければ、今の学院はまともに機能しなくなる。

それに女王のこともそうだ。私がいなければ、アイラ達に対するアクションももっと激しくなるだろう。


色々と、やり残したことが多すぎて、何が出来たのかわからないぐらいだが、1つだけ、夢はかなえられた。

それは、この学院に来る前から、決めていた、1番最初の夢。


『友達が欲しいです』


最初は、とんでもない化け物だと思った。

この国でも1番だと言われていた剣の使い手を負かしたのだから。

でも、中身はそうでもないようだった。

最近では毎日オフロにも入った。

楽しかった。


それを思えば、もうやり残したことなんて、些細なのかもしれない。


ああ、とても、暖かい気分だ。

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