35 白髪が街中で見かけないのはそういう理由なのか
「さあ、さっそく情報収集よ」
「まあ、そうだね」
RPGで情報を集めると言えば酒場のような気がするのだが、この世界にはギルドというものがある。
そのギルドには、僕も何度もお世話になったものだ。
受付嬢の説明が足りなかったり、いろんなことがあったが。
「それじゃあ、私は奥の方に行ってくるから」
「ちょっと待って、その魔眼の人の特徴を教えてもらってないんだけど」
「ああ、それもそうね」
聞いた話だから、あまり信用できないけど、と言って、ルノウ会長が教えてくれた特徴はこんな感じだ。
性別は不明。髪の毛は白で、身長はそう高くない。
ルノウ会長が言うには、髪の毛が白というだけで、すぐにわかるだろうとのことなのだが。
「なぜ?」
「そりゃあ、髪の毛が元から白い人なんていないからよ」
「ふむ?」
会長いわく、こうらしい。
「髪の毛が白いっていうのは、魔法を使いすぎて、魔力に関する人体の機関が故障して、魔法を使えなくなった人のことなのよ」
「...なるほど」
つまり、そういう事態に遭遇したということになるわけか。
魔力を使いすぎると、髪の毛が白くなるだけなのだろうか。
「いえ、それだけじゃないわ。視界はぼやけるし、まともな思考ができなくなる。まあ、戦闘中にそんなことになったら、間違いなく死ぬ。そういう理由で、髪の毛が白くなるっていうのは、珍しいのよ。
逆に、それだけの死闘を経験しても生きていたっていう証明にもなるみたいだけどね」
「へぇ...」
魔力の使いすぎ、か。
そもそも、僕は魔力が尽きるということがあるんだろうか。
これまでいろんな魔法を使ってきたが、魔力が無くなってきたなんて感じたことは一度も無い。
創造スキルに関しては、魔力を消費しないみたいだし。
何か、そう言った時の兆候とかは無いのだろうか。
「ま、この話はまた今度ね。
それと、魔法を使うときは魔眼が赤く光るみたいだから、そのことも憶えておいてね」
「わかった」
魔法を使えないのに、魔法を使う。魔眼のおかげってわけか。
魔眼がその魔力を使う機関の代わりを成している...。
「それじゃあ、私は奥に行くわね」
「じゃあ、僕とリナはこの手前で」
「わかりました」
そんなわけで情報収集を開始した僕らだったが、情報は思ったよりも早く集まった。
「ルノウ、こっちは結構集まったけど」
「ええ、私もよ」
近くのテーブルとイスに腰を落ち着かせ、情報の照らし合わせをする僕とルノウ会長。
その間、リナはずっと僕の隣に立っている。
僕が落ち着かないので、座ってほしいのだが。
「それじゃあ、まずは、私からね。
その白髪さんは、特に隠れているわけではなさそうね。ここ何日か、目撃情報があったのだけど、多すぎるわ。
それに、ここにも出入りしているみたい」
「その話を僕もさっきちらっと。ということは、ここで待っていたら会える可能性も」
「ええ、あるわね」
ルノウ会長は、少し難しそうな顔をしながら続ける。
「でも、聞き込みをした人たち全員が、その人が魔眼持ちだってことに気づいていないのよ」
「そういえば、気になってたんですけど、魔眼って持ってたら何か悪影響でもあるんですか?」
「...いいこと、アイラ。魔眼っていうのは、魔族しか所有できないの」
「...つまり、その子は魔族の可能性があるのに、誰も気づかずに溶け込まれているってこと?」
「そうなるわね」
少し難しい話になりそうなのだが。
こういった話は、僕ではなくリナに任せるのが1番だ。
僕は、隣で立っているリナに声をかける。
「リナは、どう思う?」
「私としては、その人が魔族の可能性が高いと思います。
これだけの目撃者がいるのに、性別が判明していないのもおかしいですし」
「なるほど、確かに言われてみれば」
誰も、男だとも女だとも言わず、性別のことなんかわからなくてもいいような感じだったのだが、それは流石におかしい。
誰か1人だけならまだ普通だろうが、このギルドに今いる全員が気にならないなんて話、信じられない。
考えられるのは、その魔族に精神魔法でもかけられているかだが。
「魔族がそういった魔法を使ったなんて記録、どこにも残ってなかった気がするのよねえ」
「確かに、僕も聞かないし...」
「はい、私も聞いたことがありません」
そんな感じで、僕ら3人がうんうん唸っていると、その問題の本人がこのギルドに現れたのだった。
白い紙のショート、中性的な顔立ち、胸があるのかどうかわからない服装。
明らかに異質だ。
「...ルノウ、あれって」
「ええ、ついにおでましね」
「とはいえ、私たちの目的はなんでしたっけ」
「...危険かどうかを、私たちで判断して、危険なようならそのまま始末するわ」
「その役目、ルノウ会長にお譲りします」
白髪は、そのままギルドの受付に向かうようだが、今現在、怪しい動きは無い。
というか、怪しいのは僕達だ。
「それで、これからどうするの?」
「どうするも何も、判断は1日じゃつかないわ。このまま尾行するわよ」
そんなわけで、ストーカー生活が始まった。
と、思っていた。
「あっ、路地裏に入り込んだわ。追うわよ」
「ルノウ、もう暗くなってきたし、そろそろ戻った方がいいんじゃ」
「早く、見失っちゃうわ」
僕達はなぜばれないと思っていたのだろうか。
相手が魔族かもしれないと話していたのに。
「...いない?」
「まさか、まかれた?」
どこに行ってもわかるように、こういった時のための感応スキルなのだが、肝心の探すべき魔力反応を探知していなかった。
これでは、何の意味も無い。
チートスキルがあっても、肝心の使い手がバカだとどうしようもないのだ。
「あなたたちはなんなんです?」
「!」
声が聞こえて、後ろを振りむくと、そこには魔眼持ちの奴が立っていた。
「...この私の後ろをとるなんて、何やり返されてもしらないわよ」
そういうルノウの右手の周りに、電気が走っている。
既に臨戦態勢だ。
しかし、それは相手にも伝わる。
「...こんなところでやりあっても、他の住民の迷惑になるだけです。ちょうど、近くに草原がありますし、そちらに移動しませんか」
「...ええ、そうしましょう」
近くに、と言っても、歩いて1時間はかかる場所にある。
そんな場所でやろうと言うのだから、かなりの自身があると見える。
それは、目の前にいるのがルノウ会長だと知ってなのか、それとも単純に知らないだけなのか。
いずれにせよ、用心しておくことに越したことはない。
それに、僕もいるのだし。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ええ。...悪いんだけど、アイラは来ないで頂戴」
「そんなわけにはいかない。リナ、僕の部屋で寝てるであろうヒジリを起こして、このことを伝えてくれないか」
「わかりました」
そういうと、リナはすぐに学院へと向かって言った。
これで、数十分でヒジリが来る。
そう思っていると、ルノウ会長が何やら怒った様子で喋り始めた。
「いい、アイラ。これは命令よ。学院に戻りなさい」
「いやです」
僕としても、ルノウ会長を放っておくつもりは無い。
それに、いざ助けに入ろうにも、会長が負けていたら、普通の人では介入できない。
だから、僕なのだ。
「僕は、ルノウを放っておくつもりはないから」
「...はあ、わかったわ。好きにしなさい。でも、戦闘には介入しないでね」
「わかってるって」
まあ、嘘なのだが。
しかし、こんなにも早くに魔眼持ちが襲撃してくるとは、これは相手は魔族と考えていいのだろうか。
まだストーカー行為を初めて初日なのだが、魔族も対応が早いなあ。
ルノウ会長やリナ並に早いぞ。
「...勝てるの?」
「...さあ、どうかしら。私も、魔族との殺し合いなんて、生まれて初めてだもの。
最近は、致死性の高い魔法を使っていないし、もしかしたら負けるかもしれない。
まあ、負けたらその時はその時よ。潔く死ぬわ」
「...」
僕は、その話に『そうですか』とは言えなかった。
段々本当にサブタイが適当になり始めました。
次回はルノウ会長視点です。多分。




