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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
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29 自宅謹慎に似てない?

朝日。この光を浴びた朝は、なんだかいいことがありそうな気がするのだが、僕だけだろうか。

まあ、気持ちの問題と言われたらそれまでの話である。


「...まさか、学校が休校になるなんて」


前回、僕はヒジリと割と真面目のバトルをしたのだが、その際にフィールドを激しく破壊し、さらには結界を突き抜けて学校が半壊しているのだとか。

僕が放った魔法なんて、『ファイアボール』ぐらいなのだが、それをうったときは大丈夫だったはずだ。

一体、何があったのだろうか。


現在、僕は自分の部屋で待機中だ。

というか、それ以外に行く場所が無い。

学院の外には無断で出てはいけないし、前に事件が起きた時に外に出たが、あの時は大会があったから大丈夫だっただけだ。

まあ、僕には『創造スキル』というこれだけでなんでも出来てしまうようなチートスキルがあるんだけど。


「確かに、驚きよねえ」


ベッドで寝転がっているヒジリが言う。

ヒジリは戦闘狂だし、動けなくてもどかしいのだろうか。


まあ、草原に出て模擬戦をするくらいなら別に許してくれるんだろうけど。

敷地内だし。


「あ、今は部屋からも出ちゃダメなのよ?」

「え、そうなの?」


草原の方を見ていると、ヒジリがそんなことを言った。

そうなのか、部屋からも出ちゃいけないのか。


「そういえば、アイラはどうやって強くなったんだっけ」

「え、僕?」


どうやって、と言われましても。

本当のことを言うなら、女神様にもらいました、なんだけど、そんなこと信じてくれない気がする。

というか、僕なら信じない。


「うーんとね、生きるのに必死になったから、かな」

「生きるのに必死...か」


僕には親はいないことになっている。兄弟や姉妹もいないし、血のつながった知り合いもいない。

山なかでずっと1人で生きてきたことにしておけば、たいていの人は納得してくれるだろう。


「そっかぁ...」

「まあ、冒険者とかそうなんじゃないかな」


ここに来る前はたしかに冒険者だったが、比較的ぬるい生活をしてきた。

そんな僕が言ってもあれなのだろうが、この際だ。嘘を嘘で塗り固めてやろう。


「なるほどねえ。あ、そういえばさ、アイラはなんでメイドの件を断ったの?」

「うーんとね」


第1目的は、ハーレムを作ること。

でも、そのほかに、観光をしたいというのも含まれているし、色々知りたいこともある。

例えば、今僕達がいるのは地球なのか、とかね。


「まあ、いろんなところを見たいとかかな」

「ふーん。つまり、旅をしたいってこと?」

「まあそうとも言える」


旅、か。なるほど、確かにその通りだ。

今度からは旅がしたいですってことにしよう。

そのうち幼女様からもなんで断ったのか聞かれる気がするし。


その時、間延びしたチャイムが鳴り響き、続いて会長の声が響く。


『サンバール先生の担当しているクラスの生徒、アイラとヒジリ。以上の2名は、至急会長室まで来てください。以上』


「...」

「呼ばれたよ、行かないの?」


いや、行く。行きはするのだが、なんだろう、会長が怒っているかのようなアナウンスだったから、すごく怖い。

気のせいだろうか。そうであってほしい。


「いや、行くよ」





「失礼します」

「失礼しまーす」

「2人とも、よく来てくれました」


挨拶が伸びているのがヒジリだ。


しかし、なぜ呼ばれたのだろうか。


「今回2人を呼んだのは、サイ様の件についてなの」

「ああ、なるほど」


以前、僕達2人は、そろってこの国の王からの指名採用を断った。

素直に受けていれば、将来は約束されたようなものだが、目的があるため断ったのである。


「2人が断った理由は言わなくていいわ。むしろ、断ってくれてありがとうと言いたいくらい」

「ありがとう、ですか?」

「ええ」


会長は、椅子に座り、少し疲れたような表情で続ける。


「そうねこの際だから、あなたたちには改めて言っておくわね。

いい? 生徒の才能は、この学院の宝なの。そして同時に、犯罪者への牽制にもなる」

「子供ですらこんなに出来るんだから、大人はもっと出来るってことね?」

「その通りよ、ヒジリ」


それが事実と違うとき、ばれたときはすごそうだが。


「もちろん、この国での犯罪件数がとてつもなく少ないのは、この学院のおかげと言っても過言ではないし、私は会長になったおかげでこの国の王ともコンタクトが取れるようになった。

でも、普通の大人も確かに強い。そのことも相まって、このサイという国は、全世界で最も平和な国と言われるようになった」

「ふむふむ」


しかし、これ以上に無いくらいの犯罪抑止力になるであろう僕とヒジリを、なぜあの幼女様は引き抜こうとしたのだろうか。


「あの人は、気にいったものは常に手元に置いておきたい主義なの。子供なのよ」

「ああ、そういうことなんですね」


なるほど、わがままなのか。


「多分また近いうちに誘われるともうけど、出来ればまた断ってほしいの」

「もちろんです。僕にも目的がありますし」

「そうね、私もアイラと一緒にいたいわ」


僕とヒジリが、考えるそぶりもせずに意思を伝えると、会長は安堵した顔をした。


「ふふ、ありがとう」


しかし、会長はすぐに仕事の顔に戻る。


「話は以上よ。時間をとらせて悪かったわね」

「...」

「アイラ?」


この学院は、基本的に同年代でまとめられている。だから、教室にも僕と年齢が近しい人たちが多い。

それぞれの教室に1人の教師がついているが、この学校を運営しているのは基本会長1人だ。

たまにサンバール先生に相談したりするのを、つい先日見たが、それ限りだ。


僕が学校を半壊させたのも、会長の負担になっているだろう。

何か、手伝えることは無いだろうか。


「ああ、手伝おうとしてくれてるなら、その気持ちだけで十分よ。ありがとう」


しかし、会長に笑顔でそう言われてしまった。

本人にそう言われては何もできないのだが、現代には過労死なるものも存在した。

回復魔法を使うぐらいなら許してくれるだろうか。


「せめて、これだけはさせてください。『オールヒーリング』」


僕が創造した、回復系では最高の魔法だ。

体力や魔力の回復はもちろん、ゲームで言う状態異常に分類されるようなもの全て解除できるようになっている。

さすがに、空腹はなんとも出来ないが。


僕の足元に魔法陣が浮かぶ上がり、続いて会長の足元に同じものが出現する。


「な、なにを...?」

「大丈夫です、すぐに終わります」


さすがに見たことの無い魔法を目の前で使われると、いかに会長でも驚くのか。

でもまあ、言ったとおりすぐに終わったのだが。


会長はすこしボーっとしていたが、すぐに我に返ると、自分の体に何が起きたのかを理解した。


「...あれだけ頭痛がひどかったのに、今はなんともない...?」

「...頭痛がひどかったんですか」


魔法を使っておいて良かったかもしれない。


会長にお礼を言われ、この恩はいつか返すとまで言われてしまったので、早々に立ち去ることにした僕。

部屋に戻る途中、ヒジリが先ほどの魔法について聞いてきた。


「さっきの魔法、見たことも聞いたことも無い魔法だったけど、何の魔法?」

「えっとね、秘密」

「えー!?」


なんでもかんでもペラペラ喋るのは良くないのかもしれないと思い、黙っておくことに。

まあ、別に喋ってもいいかもしれないけどさ。

ヒジリなら悪用はしないだろうし。


それでも、誰にでも話してしまう癖とかついたりしたら困るのは僕じゃなく世界の可能性もあるので、やはり気をつけなきゃいけないようだ。

僕は自宅待機なんて言われたことないですけどね。

むしろ家から出ることを推奨されてきました

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