30 浄化の儀 前編
自室で待機する日が続き、今日はちょうどその3週間目。
外はもうそろそろ秋になろうとしていた。
「ねえ、この退屈な日はいつまで続くの?」
「さあ...僕もわからないや」
自室で待機するのは、この学院が半壊しているからだとてっきり思っていたのだが、学食を食べにいつもの場所に行く途中、校舎を見たのだが、特に壊れている様子は無かった。
もしかして、僕達に校舎内を歩かれたら困る理由でもあるのだろうか?
「ねえ、アイラ」
「なにー、ヒジリ」
ヒジリが何かを決心したかのように僕に話しかける。
はて、この退屈を打破できるような何かを思いついたのだろうか。
「私考えたんだけど...この学校、怪しすぎない?」
「怪しいって、何が?」
「3週間も自室待機だけど、私たちには何も知らされてないし、校舎を見て回っても特に変なことは無い。これって、怪しいって言うか変だと思うんだけど」
ふむ、奇遇だね、僕もちょうど同じことを考えていたよ。
しかし、そうはいっても何をする気なのだろうか。
まさか、先生の目を盗んで校内を探索とか?
「だから、私たちでなんでなのか、確かめてみない?」
「...まあ、僕も暇していたからいいけどさ、どうやって確かめるの?」
「まずは、先生の机の上とかに情報が無いかだね」
なるほど、探索系か。
いいね、そういうゲームは好きだよ。
得意とは言っていない。
「それでもわからなかったら、会長の机をあさる」
「...それはばれたら殺されるのでは」
「まあ、ばれなきゃいいのよ。んで、それでもわからなかったら、先生の1人を縛り上げて情報を聞き出す」
「おっと強行手段」
僕達が作戦を立て始めてから4時間が経過した。
既に辺りは暗くなっている。
「...準備はいい?」
「アイラこそ」
「僕は大丈夫だよ」
「なら、作戦開始よ!」
僕達は、部屋を出た。
闇に同化するために、服は黒めにしてある。
ヒジリは自前の洋服に黒系統の服があったため、それを着ていたが、僕は適当に創造スキルで作った服だ。
体のラインが少し出てしまうので、恥ずかしいことには恥ずかしいが、まあ暗いからよしとしよう。
この場限りの使用だ。後で捨てる。
「ここが先生たちの机があるところね」
「意外と夜の作業をしている人はいないんだね」
「そうみたいね」
所謂職員室に侵入した僕達は、特にカギもかかっていないドアを開け、先生たちの机を物色し始めた。
手元にある懐中電灯(魔法で作成)が近場を照らす中、1枚の紙が目に入った。
その紙には『浄化の儀』と書かれていた。
一体、何を浄化する気なのだろうか。
「ヒジリ、この紙...」
「...何をしようとしているのかしら」
さらに読み進めると、場所と時間は事前に知らされていたのか、『指定の日時と場所に集合 遅刻厳禁 遅れたものには会長の罰が下る』とだけ書いてあった。
場所はわからないが、時間は間違いなく今だろう。
夜と行っても、まだ22時だ。先生方が帰るにはまだ早い。
ヒジリも同じことを考えていたのか、どこかに場所が書いてある紙は無いかと探し始めた。
「どこかにあると思うんだけど」
「うーん...」
僕のスキルを使えば、どこにいるかなんてすぐにわかるが、そんなのはつまらないだろう。
例えばれても、それはそれで青春な気がするのだ。
しかし、今わかっている情報をまとめると、1つ朗報があった。
「ねえヒジリ、今なら会長の部屋にも入れるんじゃない?」
「あ、そっか。『遅れた人には会長の罰』だもんね」
会長の罰が下るというのであれば、会長がその場にいるのが通り。
会長はマメな人だ。机とかにメモがあるかもしれない。
「ここ、会長の部屋?」
「そうよ」
職員室から会長室まで移動し、さらにその奥にある会長の部屋の侵入した僕達。
一般的に見たらただの不法侵入だが、それは侵入されたと気づいたからそうなるだけで、気づかれていないのならそれは何もなかったことになる。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが。
「しかし、意外と部屋は可愛いんだな...」
「そうね...まあ、年もあまり離れていないし、趣味は普通なのかもしれないわね。今度遊びに誘ってみましょうか」
「確かに、会長なら外出許可とか簡単に出してくれそう」
会長の部屋は、暗く全体的な色合いとかはわからないが、明りで照らすとピンク色の物が多かった。
クマっぽいぬいぐるみもあるし、こういったものが好きなのかもしれない。
今度こういったものをプレゼントしようと思う。
「アイラ、ぬいぐるみに顔をうずめてどうしたの?」
「はっ、しまった」
ついうっかり会長のいいにおいに誘惑されて顔をうずめてしまったが、それ以外にはめぼしいものは見つからなかった。
ここにも無いとしたら、後思いつく場所は....。
「あ、待ってアイラ、このメモ帳、そうじゃない?」
「どれどれ...『浄化の儀 地下4階』」
地下か...地下に行くような入口があるのだろうか。
というかマップのようなものも職員室で探しておけばよかった。
「これ、この学院のマップかしら」
「さすがヒジリ」
ヒジリが会長の机の棚からマップを取り出す。
図面をしっかり憶えて、元の場所にしっかりと戻しておく。
ばれない為の工作が必要かもしれない。
とにかく、元の状態から変化させるのはあまりほめられた行為じゃないことは確かだ。
誰にほめられるのかは知らないが。
「...これで、大体来た時と一緒になったかな」
「そうねえ。さ、どんどん行きましょ」
「そうだね」
ヒジリに先を促され、部屋を後にした僕達だった。
アイラと、助手のヒジリみたいな関係。
助手のほうが有能だったりします。




