27 おめでとう、ヒジリ
「いやはや、大変だったね」
「そうねー」
穴だらけで、まさかの容疑者に突っ込まれるような事態が起きた数分後、僕とヒジリは学食で冷え切ったさんまを食べていた。もう面倒なので、日本での名前で済ます。
冷えているので美味しくないが、その美味しくなさも現代のさんまによく似ている。
ここは地球なのだろうか。
もしかしてなのだが、もし地球に魔法というものが存在していたらその世界なのかもしれない。
まあ、僕からしたらそんなことどうでもいいのだが。
今が楽しければ、それで十分だ。それ以上は望まない。
「まあ、私は楽しかったけどね?」
「まあ、それは別にいいんだけどさ」
誰かが死んでいるのに、楽しかったとはこれまた不謹慎だが、この世界なのだから良いのだろう。
僕も、本格的なごっこ遊びみたいだなって思ってしまったし。
でも、この世界の人のように、他人の死に無関心なわけではない。
「ヒジリ、授賞式ってあと何分だっけ」
「もうすぐだから、移動した方がいいかも」
僕達は速やかに冷えたさんまを片づけ、会場に向かう。
さよなら、さんま。僕は君のことを忘れない。多分。
会場に着いた僕達は、すぐに別行動に。
ヒジリは受賞するため、その控室に。
僕は、それを見届けるために、生徒が待っている場所で、僕もまた待つ。
すると、ほどなくして会長がステージに上がる。
「皆様、今日は楽しんでいただけたかと思います」
現代では、楽しんでいただけたでしょうか、だったような気がするが、こっちではもう決定しちゃうのか。
まあ、それでもいいんだけどさ。
「さて、今回の大会の優勝者の登場です。皆様、拍手でお迎えください」
ぱちぱちぱち。
ここにはかなりの人が集まっている。なので、かなりの拍手の数になるのは分かっていたのだが、このまままともに聞いていたら鼓膜が破れる気がする。
こっそり強化魔法で耳を強化しておく僕だった。
「今回も、私は血のにじむような努力のおかげで___」
ヒジリが、前もって準備していた文章を読み上げる。
ヒジリが努力をしているのは、同じルームメイトである僕が知っているが、血のにじむようなというのは嘘だ。
勉強している僕の邪魔をするし、というかすぐに胸を揉んでくるし。
気持ちよくないと言えば嘘になるが、邪魔なものは邪魔なので、いずれやめてもらおう。
「次回も、こうして皆様に挨拶できるように、精進していきます」
この上ない上っ面だけの挨拶を済ませたヒジリは、たくさんの人の拍手を受けながら降壇した。
その足でそのまま僕のもとへと向かってくる。
「あれ、もう戻ってきていいの?」
「うん、大丈夫よ。まあ、これからエキシビションもあるし、私は準備に行かなきゃなんだけど」
「ふーん...」
ちなみに、エキシビションの相手は僕だ。
しかし、これからあるのか...。明日とかにしてくれないだろうか。
「僕もう眠いんだけど、ヒジリは元気だね」
「もちろん。これからやる相手がもしかしたら強い人かもしれないじゃない」
ヒジリはそういうと、そのまま会場を出て行った。
ステージでは、まだルノウ会長が挨拶している。
いや、挨拶というより、これからやるエキシビションの説明かもしれないが。
「この授賞式の後、エキシビションマッチを行います。そこでは、私の腕輪の拘束は無く、学院の生徒の本来の力が見られますので、かなりの大迫力かと思われます。
もちろん、フィールドの外には被害が出ないように結界も張っておきますので、皆様安心してご覧いただけたら幸いです」
会長はそう言って、降壇した。
そしてそのまま、僕のところに来る。
僕に何か用だろうか。
「アイラさん。少し話があるの」
「わかりました」
僕としては、断る理由が無い。
ヒジリのように、特に準備することも無いし。
「ここら辺でいいかしら」
「辺りに人もいませんしね」
僕達が来たのは、授賞式を行っていた会場のすぐ外だが、静かな場所だ。
誰かに盗み聞きされる心配は無いだろう。されてても会長なら気づきそうだし。
「さて、あなたを呼んだのは、これからのエキシビションマッチのことなんだけど」
「ええ、わかってます」
まあ、その呼んでいたのはわかる。というか、誰でもわかる。
状況を知っていたら。
「それなら話が早いわ。全力でやってちょうだい」
「それは構わないんですけど、本当にいいんですか?」
僕が全力で魔法をうって、結界とやらを破壊してしまわないかだけが心配だ。
「平気よ。あなたが全力でうっても、結界だけは壊れないわ。神の遺産よ?
あーてぃふぁくと?
「まあ、そういうわけだから、気にしないでちょうだい」
そう言って、ルノウ会長は歩いて行った。
あーてぃふぁくと。
また1つ謎が増えてしまった。エキシビションマッチを早いところ終わらせて、すぐに調べに行きたいところなのだが。
「そうもいかないんだろうなあ」
僕が出来る手加減の範囲は、この学院の生徒を相手にしても勝てる程度の練習しかしていない。
その生徒の中に、もちろんヒジリは含まれていないし、もし僕が全力を出さざるを得ない状況になった場合、とっておきを出す必要がある。
そのとっておきは、出来れば出したくない。
「...全ては、僕次第、かな」
手加減して、なんて甘いことを考えていたら危ないかもしれない。
さて、次は僕の苦手な戦闘描写ですね。
...頑張ります。
アイラちゃんも頑張っていることですしね。




