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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
35/79

24 シャル、覚醒

ユサ対シャルの試合が始まって数分。

2人は会場の観客を虜にしていた。

もちろん、僕も含めて。


しかし、ヒジリは少し退屈さが薄れたかな程度だった。


「あの2人、良い動きはしてるんだけど、まだ足りないのよね。このまま行くならユサが勝つかな」

「ふーん」


戦いの行方なんて、その道の素人が見てもわからないのだが、ヒジリはわかるみたいだ。

優勝するだけの経験をし、さらにはシャルもユサも普段から近くで見てきたのだろう。

なるほど、それなら予想は僕でもできる。

かもしれない。


「このままなら、ね...」

「?」


ヒジリが何やら意味深なことを言うと、ユサがシャルを追いこんでいた。

長剣を振りまわし、シャルを壁へ壁へと追い込んでいく。

身体強化でもしているんのか、ユサの振りまわすスピードがかなり早い。そのせいで、シャルは逃げることで精いっぱいのようだった。


このままでは、あと数秒で壁に追い詰められてしまうだろう。

しかし、シャルの瞳から、諦めた感じは伝わってこない。


「ふふ、面白いわね」

「え?」


ヒジリがぽつりと漏らす。

相変わらずヒジリの面白いのラインがわからないが、これはもしかして、戦闘狂からしての面白いなのだろうか。

だとしたら、理解は一生したくない。


「ほら、みてみて」

「うん?」


ヒジリの促されてみた先では、まだシャルが逃げている。

...まだ、逃げている?


「あれ、さっきまではもう壁際だったのに、なんで中央でお互い動かず...」

「そりゃ、ユサが決め手に欠けてあんだけ振りまわしたら、いやでもあのスピードに慣れちゃうって」

「なるほど...」


それって、慣れたから今すぐどうにかできることなのか?


「だから、このままいけば、って言ったの。ユサはたしかに強いけど、戦ってきた相手が私だけだったから、長期戦のやり方は誰とも練習していないの」

「なるほど...」


短期決戦タイプてことかな。

まあ、戦闘での駆け引きなんて、誰かに言われて出来るようになるなんて稀だし、基本は自分で見つけていくものだ。

自分で見つけていく機会を、シャルの方が経験していた、というだけの話。


...また、経験か。


「そりゃ、経験してる方が有利なのはわかりきってることだけどさ...」


僕は、そういうのはあまり好きじゃない。経験してるから有利って言うのは、少し違う気がする。


まあ、それで負けてたら、実戦では死んでるのと同じなんだけど。


「さ、ここからが面白いよ」

「ここからねえ」


ヒジリがそういうと、シャルの動きが突然、目に見えて良くなり始めた。

ユサの持ち味であるスピードを、上回ろうとしているのだ。

ユサの斬撃を、見てから回避するようになっていく。


シャルが何かを纏っているように見えるのは気のせいだろうか。


「追い詰められて覚醒への扉が開いたか」

「覚醒への?」


僕達のそんな会話のの中でも、戦況は一気に変化していく。


今度はユサが逆に追い詰められ始めたのだ。

一見、ユサが長剣を振りまわし、シャルがそれを避ける。それ事態に変化は無い。

だが、シャルがどんどん接近していくのだ。

ユサが剣を振れば、シャルはそれを避けて一歩、また一歩と踏み込んでくる。


そうなると、獲物が長い分ユサには不利だ。

それを理解しているのか、はたまた本能か、ユサは剣を振る度に、後ろへと下がっていく。

今のところは、シャルのスピードがこれ以上上がる様子は無いため、近づいては離れてを繰り返しているが、それも時間の問題だ。


ユサの後ろに壁が迫る。


「っ!」


ついに、ユサの背中に壁がぶつかる。

ぶつかった瞬間、ユサの意識が背中に向いた瞬間、シャルは一気に距離を詰める。

ユサはそれに慌てて気がつき、長剣を無理に振るが、それも無駄に終わる。

余裕のある避け方でユサの攻撃を避け、首元に手を添える。

決着がついたみたいだ。


「ふぅ...」

「はあ、はあ」


ヒジリはその結果を見届けると、寝るとだけ言い残して再び戻っていった。





「そういえば、リナとサリナは出るのかな」


あの2人のことだ。

サリナは『眠い』とか言ってでなさそうだし、リナは『ご主人様の隣を離れるわけにはいきません』とか言いそうだ。

まあ、リナとはここ最近離れているし、もしかしたら出ているかもしれない。


「お、噂をすればなんとやら」


そんなことを考えていたら、前方にリナとサリナの姿が。

サリナが起きているのは珍しい。いや、起きているのが当たり前だし、最近はどうなのか知らないけどさ。


「おーい、リナー、サリナー」

「あ、ご主人様。お久しぶりです」

「...ん、久しぶり」

「うん、久しぶり」


リナもサリナもいつもと変わらず安心したところで、2人は何に出るのか聞いてみると、予想通りの答えが返ってきた。


「眠い」

「うん、そうだろうと思ったよ」

「ご主人様の隣が私の場所です。先ほどまでは、サリナ様の隣でしたが」

「うん、リナも予想通りだね」


この2人は元気そうだ。


さて、ユサの様子も見に行った方がいいかな。


「いえ、ユサはしばらく放置していた方が良いかと」

「なんで?」

「あれでいてユサは、悔しいときはすごく泣きますから」

「...なるほどね」


確かに、僕も高校時代の時の部活で、最後の試合で負けたときは悔しくて1日中泣いていたな。

ちなみに、その時所属していた部活はサッカー部。ポジションはど真ん中。ボランチと言うやつだ。


とまあ、思い出を振り返るのはやめて、次の予定を一応2人にも聞いておくとしよう。


「私はこのままご主人様についていきます」

「...私も」

「そっか、わかった」


まあ、1人で見るのもいいんだけど、さみしいから、ありがたい。


時間は既に昼過ぎ。いったん昼食を取ることにした僕達だった。


しかし、試合は続く。昼の時間でも、選手は昼食の時間をずらして行わなければならない。

苦行だ。

いや、そうでもないか。


「しかし、なぜご主人様は出なかったのですか?」


この学校では生徒として扱われているリナだが、さすがに僕が近くにいるとそういうわけにもいかないのか、僕が椅子に座ると、その隣で立っている。

出来れば座ってほしいのだが。


「いや、少し事情があってね」

「なるほど、ご主人様のお考えがあったのですね。大変失礼いたしました」

「あ、うん。それより、座ってよ。せっかく食べ物も持ってきたんだし」


今回の昼食は、カレー。に似た何か。

においも味もカレーなのに、名前が違うという謎の食べ物。

ちなみに、名前はカルェー。カレーで良いじゃん。



これはもしかして、シャルがヒジリに勝つパターン来た...?


なんだか、最近は本当にあついですね。

熱中症にならないように、しっかりと水分補給もしていきたいと...あれ、なんだか前にもこんなこと後書きに打った記憶...


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