21 安易に物を造っちゃいけないのかもしれない
アズリレウス学院に来て早1ヶ月がたとうとしていた。
授業は相変わらずただひたすら訓練で、僕が期待していたような座学は一切ない。
毎日毎日、あの草原へと出てみんなが一斉に戦うものだから、最初は戸惑って魔法の流れ弾に当たるところだった。
リナたちは、しっかりと座学もあるようで、会長がつきっきりで教えてくれているようだ。
僕としては、友達も大事だけど、そっちのクラスにいたかったかもしれない。
とはいえ、僕も遊んでいたわけじゃない。
毎日が訓練といっても、放任主義がだから何の訓練をしてもいいのだ。
最初こそヒジリに無理やり訓練に付き合わされていたが、多少できるがそこらへんの奴と変わらないことを言うと、残念そうな顔をしてどこかへ行ってしまった。
それでも部屋ではいつも通りなのが謎だ。
ちなみに、頂上決定戦はあと2週間後らしい。
さて。
「この1ヶ月の特訓の成果、誰かで試すか」
特訓の成果、それは、手加減の度合いだ。
創造スキルで手加減系のスキルを造り出すことも考えたが、それが取り外せなかったりすると困ると思い、地道に練習していた。
魔力の放出量を自分で抑えたりすることも学んだし、いろんな魔法も教えてもらったから、僕にしてはまあまあな1ヶ月だと思う。
教えてもらいつつ、『アイシクルブレイク』の存在を調べたが、クラスの生徒はもちろんのこと、教師ですら知らない状況だった。
唯一の頼みの会長ですら、『聞いたことがあるが、実際に使える人は見たことがない』と言われてしまった。
意外だったのが、サリナが知っていたことだったが、そのサリナも詳細は知らないらしく、実際に見たのも僕が使ったときが始めただという。
アイシクルブレイクは今でも使える。だが、そのほかの強そうな魔法は使えそうになかった。
知らない魔法を使うというのはいかんせん無理がある。
そんなわけで、手加減をするために新しい魔法を2つ造った。
『マジックアーマー』と『フィジカルアーマー』だ。
バリアではなくアーマーなのは、バリアでは壊されるイメージができなかったので、それでは本末転倒ということで、アーマーを採用した。そのうちバリアも造る。
とりあえず、近くにいたリースにでも実験台になってもらうとしよう。
「ねえ、リース。手合わせしてほしいんだけど」
「ん、いいッスよー」
リースは、僕に大戦を持ちかけられると、素直に承諾した。
戦えば戦うほどに強くなるというのをこのクラスでは信じられており、リースもそれに漏れない人だった。
だが、時には研究も必要だということをそろそろわかってもいいのではないかとも思うが。
さて、防御魔法を2つ造ったのだが、手加減のためと、もう1つ理由がある。
『防御壁』というのだが、これの強度がいかんせん不安だったのだ。
かるい『ファイア』で壊れるし、他の人が使っているのを見ても、脆い。
僕が使っても、『ファイアウォール』で壊れるのだから。
そんなわけで、2つ新しく造ったわけだ。
この2つは名前の通り、それぞれ魔法と物理ダメージを軽減してくれる。
あくまで軽減だ。完全に遮断はしない。
いちいち加減をつけるのも面倒だったので、魔法構築の際に、込められる魔力の上限も決めておいた。
これでついうっかり力を入れすぎても、一定ラインまでの効果しか発動しない。
しかも、使用者の魔力総量に応じて上限も変化するので、他人が真似してもロクな性能にはならないと思われる。
ちなみに僕はそれには適応せず、僕専用の上限があるから、安心だ。
「それじゃあ、全力できてね」
「大丈夫ッスか?」
「何が...って、ああ、そうか」
リースが不安そうな声を出すのも当然である。
何を隠そうこの僕は、1ヶ月もの間実力を隠し続けた結果、このクラスでは1番弱い奴扱いされているのだ。
リースもこのクラスでは強い方だし、僕を心配するのは当然か。
だが、それがすぐに思い違いであることを教えてあげよう。
「平気だから。全力でお願い」
「わかったッス!」
リースはそれがわかると同時に、魔法の詠唱に入る。
詠唱時間は人それぞれだ。
魔力が大きい人のほうが詠唱速度が上がるのかと言われればそうではないし、技術があれば魔力効率は上がるが、意識をそっちに持ってかれすぎる人が多い。
しかし、リースは遅いわけじゃない。
「いくッスよ、『ファイアバースト』!」
炎が僕めがけて襲いかかってくる。
少し魔力が足りてないが、まあ及第点だとは思う。
それに対する僕は、回避も迎撃もしない。
今回確かめたいのは、リース程度の魔法を防げるかどうかだ。
これぐらいのを防げないと、ヒジリの『朝飯前』で死んでしまう。
いざ、実験の時。
「『マジックアーマー』」
『マジックアーマー』はそのまま魔力でできた鎧であり、普通の鎧が弓矢を弾いてくれるように、魔法を弾いてくれるのだ。
多分。
ゴゥッ!
炎が僕を包み込む。
しかし、特に変化はない。
よし、成功だな。
なら、次は物理だ。
「これはどうッスか!」
リースは、自分の魔法が効かなかったことを見るや否や、背にしていた剣を抜いて特攻してきた。
さて。
「『フィジカルアーマー』」
全身を魔力で包み込み、魔法以外を通さない状態にする。
これで完成だ。
どうせならどっちも通さない状態にしろよとか思うかもしれないが、魔力効率が違う。
僕からしたら些細なことだが、そのうちサリナたちにも教えようと思っているのだ。
無駄な魔力はつかわないに越したことはない。
リースの振り下ろす剣を、人差し指で受け止める。
甲高い音をたて、火花を散らす僕の指とリースの剣。
うーん、どうなってんだこれ。
「なっ!?」
リースが驚いた声を出す。
そりゃ驚くだろうな。
僕だって、倒すつもりで振り下ろした剣が指1本で止められたら驚く。
しかし、僕は落ち着く暇なんて与えない。
指で剣を払い、そのまま接近。
お互いの息がかかるような距離で、鳩尾にパンチ。
「コフッ」
ドスンという音と共に、吹き飛んで行くリース。
しまった、やりすぎたか。
とはいえ、実験は成功だ。
これで、そこらへんの奴らを倒せる程度だということは分かった。
後は、攻撃魔法だけなのだが。
「...まあ、これは後で自分でやるとしましょう」
さすがに加減をミスったら殺してしまう可能性がある限り、他人を実験台に立たせるわけにはいかない。
こればっかりは、ぶっつけ本番だ。
部屋に戻ってきた僕は、シャワーで汗を流していた。
別に汗が滴るほどではないが、日光の下で多少の運動をしたら汗ばんでしまうのだ。
そんな状況で生活するのはちょっとつらいので、シャワーを浴びに来たのだ。
現在の時刻は昼過ぎ。
生徒は昼食を食べに行っているだろうから、少し時間をずらしてからいくには最適だ。
学食はいつでもやっているようなのだが、さすがに夜間はやっていないので、その点では注意が必要だ。
「フンフーン」
鼻息交じりでシャワーを浴びる。
なぜこんな上機嫌なのか説明してあげよう。
なぜなら、シャンプー、コンディショナー、ボディソープを造り出すことに成功したからである。
「いやはや、気持ちいなあ」
もちろん、体を洗うやつ(名前は忘れた)も造り出すのを忘れていない。
これがないと洗えないし。
お風呂があればなお良いのだが、ここにはシャワーしかないので、そのうち造ろうと思う。
「あら、いいにおい」
扉の向こうからヒジリの声がする。
そうだ、ヒジリにもこれを使わせてみよう。
きっとヒジリも気にいるはずだ。
「ヒジリー、一緒にシャワー浴びない?」
「わ、私も?」
一緒に浴びようと誘ったら、少し戸惑った声が聞こえた。
ふむ、確かにここは狭いかもしれないな。
だが、僕達2人程度なら入れるはずだ、気にすることは無い。
最近は女の子の体にも慣れてきたし。
「ま、まさかアイラちゃんはそっちの方向...?」
「何言ってんの?」
ヒジリがいつまでもぶつぶつ言っているので、仕方なく無理やり連れていくことに。
もちろん服も脱がす。
「や、ちょ、私まだ入るなんて...あれ服は!?」
「さっき脱がしたよ。ほら、早く早く」
だてに寝ぼけたサリナの服を脱がし続けていない。
最近は無かったが、その技術は衰えていないようだ。
いらない技術が身に付いたもんだよ、まったく。
「さ、これに座って」
「これ、昨日まではなかったような...」
もちろん椅子も用意してある。
ずっと立ってるのもつらいしね。
座ったヒジリの頭を濡らす。
「ひゃっ」
「目つぶってないと目に入るよ?」
濡らしたら、今度はシャンプーで頭を洗う。
シャンプーは髪の毛を洗うのはほどほどに。真に洗うのは頭皮だ。多分。
ごしごし。
「な、なんだかこれ癖になっちゃうかも...」
「でしょ」
造り出した僕でさえ、できた最初の日は何分も洗っていたものだ。
さすがに洗いすぎは良くないかと思ったので、数回でやめたが。
そして、シャワーで泡を洗い流し、今度はコンディショナーをつける。
これで髪の毛のつやをキープだ。
「これ、さっきみたいに泡無いけど、別の物なの?」
「そう。さっきは頭の汚れを落とすもの。これは髪の毛を保護するものなんだよ」
現代にあるやつよりも、その効果は上がっていると思われる。
魔力を多少は入れているから、成分が活性化しているはずなのだ。
コンディショナーが終わったので洗い流し、今度は体を洗う。
「ひゃっ!?」
「はい、今度は体を洗うから、立ってね」
スポンジで泡だたせ、体を丁寧にごしごししていく。
何だろう、自分の体じゃないからか、変な気分になってきた。
「あ、あの、アイラちゃん?」
「何?」
「ひ、1人でもできるよ?」
「いいえ、最後までやらせてください」
変な気持ちにはなる。だけど、いやじゃない。これは、興奮に近い____。
「ちょ、ちょっと、アイラちゃん目つきがへんだよ!?」
「はっ」
なんとか自我を失う前に立ち直った僕。
危なかった、もう少しで能力に物をいわせてヒジリをわがものにしてしまうところだった。
そんなことしたら、サリナになにを言われるかわかったものではない。
リナにはほめられそう。
「さ、終わったから、シャワーで流してね」
「う、うん、ありがとう」
まあ、笑顔だったし、よしとしよう。
きっといいことをしたと思う。
僕は先に、シャワー室から出て、体の水分を拭き取り、着替える。
いやはや、堪能した。
「...」
「あ、どうだった、ヒジリ?」
シャワー室から出てきたヒジリに感想をさっそく聞いてみる。
まあ、聞かなくてもわかるけど。
「まあ、悪くなかったわ」
まーたそんなこと言っちゃって。
お顔が真っ赤ですよヒジリさん。
「だけど」
「ん?」
ヒジリは続けて、僕に向かって言った。
「次は、もう少し優しく洗ってほしいわ...」
「...」
ヒジリは、そういうと、顔を真っ赤にしてベッドへと行ってしまった。
...優しく?
どういうこと?
まさか、ヒジリにはそっちの方向の趣味があったの?
「...わかった、次は優しくだね」
そうは言ったものの、次はなんだか怖くてできないんだろうなと思ったアイラであった。
昨日は普通に寝込んでました。ごめんなさい。
夏風邪ですかね。
そういえば、僕もPCで打てるようになりました。
やっぱり文字を打つのはPCのほうが早いし進みますね。




