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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第2章 学校編
29/79

18 実力主義ってそういうこと?

だんだん題名を考えるのが面倒になってきました。

次からもっと適当になると思います。


でも、その分中身の質は上げたいと思います

「よお、俺が教師のサンバールだ」

「ども、アイラです」

「これから数年、よろしく頼むぜえ」


今僕の前の前にいるのは、サンバールという()だ。

そう、女だ。

見た目こそがっしりとした男なのだが、中身は男。胸は全部胸筋になってしまったんですかと思わず聞いてしまいたくなる。

言動も全部男のそれだし、僕としてはどうしたらいいのか全くわからない。

これなら、まだルノウ会長の方が良かったかもしれない。あの人は何を考えているのかわからないが、安心はできる。信頼もできる。

しかし、サンバールはどうだろうか。見た目で嘘をついていることから、僕の生存本能が信用とかそれどころじゃない、逃げろと訴えてくる。そんな気がする。


「まあ、途中からの編入でも気にすんなよ。俺の教室にいる奴に限ってはそんなの気にせずに友達になってくれる」

「は、はぁ」


僕としてはあなたが1番不安ですけどね。貞操的な意味合いで。


とはいえ、クラスのみんなと仲良くしたいのは本心だ。そこに嘘偽りは無い。

まずは、最初の自己紹介が肝心だ。現代でもそうだった。


『僕の名前はアイラです。皆さん、僕は腕には自信があるので、ぜひ頼ってくださいね!』

『なんだあいつ』

『シメるか』


はい没です。


ダメだ、これだと僕の実力をただ自慢しているだけ。これではバカとなんら変わらん。

ならば、謙虚にいくか?


『僕の名前はアイラです。すごく弱いので、ケンカとかはご遠慮したいです』

『なんだあいつ』

『シメるか』


はい没。


あれ、これって正解ないんじゃね?

現代ではどんな自己紹介が受け入れられてたかな。

えっと、確か....


『はじめまして、僕の名前はアイラです。皆さんに自慢できるような特技はありませんが、強いて言うなら勉強が得意です。

ですので、分からないところがあれば、是非とも聞いてくれると嬉しいです』

『なんだあいつ』

『勉強出来ない俺たちへのあてつけか?』

『シメるか』


ダメじゃないか。現代流でもダメなのか...。


「おい、何してんだ?」

「あ、なんでもないです。それで、何でしたっけ?」

「ここが俺の教室だ。だが、入る前にいくつかの約束がある」

「約束ですか?」

「そうだ」


サンバールさんは、改めて僕の方を向く。

ごめんなさい、僕にその気はありません。


「うちの教室では、基本実力主義なこの学校を更に激しくしたものになっている」

「...つまり?」


何が言いたいのかはなんとなく察しはした。だが、一応聞いておこう。


「力があるやつがなお優遇されるというわけだ。だから、お前みたいなやつには厳しいかもしれん。それでも...」

「あ、その辺りは大丈夫なので、心配しないでください」

「...そうか」


そして、サンバールさんが教室の扉を開く。

しかし、僕はまだ外にいろと言われた。

なんでやねん。


「少し俺から話しておく。場を温めておくから、お前はその間に何を喋るか決めておけ」

「わかりました」


なんて気の利く先生なんだ。

さて、場を温めるなんて言っていたが、あまり長くはないだろう。さっさと考えることにしよう。

さて、伝えるべきことをまずは考えよう。

まず名前だ。これは欠かせない。言わなかったら、僕の名前が正しく覚えられないぐらいだ。

次に...年齢?

ダメだ、名前以外に言うべきことが思いつかない。いっそのこと、無口キャラで通すか?

うーむ、その状況で僕が耐えられるかどうかわからない。

僕は喋りたがりという訳では無いが、それでも人並みには喋りたい。特に可愛い女の子とかね。


「さて、どうしたものか...おや、サンバールの声が聞こえる」


防音性は低い模様。あまり騒ぐと、ここを通りかかった会長とかにシメられてしまうかもしれない。


『これからお前達に、転入生を紹介する』

『転入生?』『せんせーい、どんな人なんですか?』『男か、女か!』


ふむ、こういったノリは現代と変わらないようだが。

僕の自己紹介は考えてもわからないから、もう放り投げよう。それより、どうやって温めてくれるのか気になる。


『まず、女だ』

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』

『じゃぁかあしい!!』


男子うるさ。

というか、男子と女子の比率が知りたい。

声からして...7:3。


『そして超可愛い!』

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』

『ちょっと男子ー』


「うぉぉおおい!!」


何言ってんだあいつ(サンバール)!

それは温めているとは言わない、ハードルを上げていると言うのだ!


『...何か聞こえなかったか?』『さぁ...?』


「やっべ」


今はまだ抑えるんだ...これ以上上げないように祈りつつ、どうやってこのハードルを超えるか考える。

というか、超えるのは無理だ。なんとかして無難に乗り切りたい。

そもそも、人の外見は簡単には変わらないし、下手にいじると逆に崩れる恐れがある。

創造スキルで整形系統の魔法か何かを作ることは可能なのだろうが、そんな博打はしたくない。


『そして、声も可愛い! この俺が惚れてしまうところだった!』

『せんせー、それはまずいんじゃ...』『しかし、サンバール先生がこれだけ言うのだもの、とても可愛いに決まっていますわね』


いますわね! わね!

お嬢様がいる!

危険だ、近寄りたくない。

というか、もうこれ以上収集がつかなくなる前に入りたいのだが。


ドンドン、と扉を叩いてみる。


『おっと、お前達に早く会いたくて待ちきれないそうだ。さあ、入りたまえ』


...サンバールは、言動こそ男だが、性別的には女である。

女なのである。


というわけで、扉を開けて中に入る。

さて、僕はこの視線に晒されて死ぬとしよう...。


「ど、どうも」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「やばい、いいぞ!」「これは話に聞く以上だ!」「これは、認めるしかないわね...」「ふ、ふん、私の方がまだ上ですわね」


…はて、これは一体だ?


「あー、お前ら静かにしろ。これからアイラの自己紹介するからな」


サンバールがそう言うと、生徒全員が一斉に静かになり、こちらを見始めた。

いやん、そんなに見られたら穴が空いちゃう。

気持ち悪。


「えっと、僕の名前はアイラです」


「ボクっ娘か(ヒソ」「いいな(ヒソ」


丸聞こえなんですけど…。

ま、まあそれはいい。さっさと自己紹介を済ませて座りたい。


「えっと、剣と魔法を少し嗜んでいますので、みなさんのお役に立てたら嬉しいです。よろしくお願いします」


そう言い、一礼。

これで自己紹介としては完璧だろう。

顔を上げる。

全員がこちらを見ている。

...耐えられないんですけど。


「よし、お前の席は…」

「はいはい!はーい! ここ、空いてるッス!」

そう言いながら手を元気に上げているのは、金髪で、片目が隠れている男だった。

どうせなら女の子に呼ばれたかったが、この流れだと変わらないだろう。


「おお、なら、あいつの隣に座ってくれ」

「わかりました」


彼の席はこの教室の後ろの方だ。後ろの席というのは嫌いじゃないから、それはいい。ちなみに1番嫌いな席は1番前。


独眼竜みたいな彼の隣に座る。すると彼は、お決まりというか、自己紹介し始めた。


「俺の名前はリースッス、よろしくお願いするッス」

「リースッス?」

「リース、ッス」

「リース」

「そうッス」


なるほど、このチャラい言動からは考えられない名前だな。

想像すていたのとは違った。

何を創造していたかって?

キムチャックとかかな。

自分で考えておいてなんだけど、ダサいと思う。


「ところでなんだけど」

「? なんですか?」

「俺と付き合ってくれないッスか?」

「...」


ここで、僕の現状を整理しよう。

まず、僕の中身は紛れもなく男だ。見た目は女でも中身は男だ。

だから、僕は男に告白されても嬉しくも何ともない。

だが、逆に、仮に女の子に告白されて、それを受けるかと言われたら微妙なところだ。

なんてワガママなんだ、僕は。

いや、今はそれはどうでもいい。


「おい、何抜け駆けしてんだよリース」

「いやいや、こういうのは早い者勝ちじゃないッスか?」

「まだ始まってすらいねえだろうが」


しかし、僕が今の告白に反抗する前に、他の男達が反応、というか対抗し始めた。

なんだろう、僕の奪い合いが起きてる子は嬉しいからいい。

しかし、奪い合いしているの男だ。

何度も言おう、僕は中身は男だ。

ホモじゃない。


しかし、これは好都合だ。

今のうちに女子のところへと避難しよう。


「す、すみません、少しの間ここにいていいですか…」

「もちろん、少しと言わず、ずっとここにいてもいいのよ?」


そう言う女の子は一体誰なんだ?


「あ、ごめんなさい、私の名前はヒジリ。ヒジリ・アルベドよ」

「よろしくお願いします、ヒジリさん」

「ええ、よろしく、アイラさん」


ヒジリ・アルベド。見た目は茶髪で、目元が温厚そうな人だ。

このヒジリという女の子、中々に強い。

胸部戦闘力が異常に高い。


「しかし、あなたも罪な女ですわね」

「...あなたは?」

「シャルロットですわ。みなさんはシャルと呼びますわね。」


ヒジリの後ろからもう1人増えた。

こちらは深緑と言えばいいのだろうか、そんな感じの色のツインテールだ。

金髪ドリルじゃないんかい。

いや、よくよく考えてみたら金髪ドリルは前に出てきた。女神様の側近として。

そういえば、最近女神様出てこないなぁ。


「どうも、シャルさん。しかし、罪な女というのはいささか語弊が...」


ただ、転入生だからというだけで、少し目立っているだけ。

数週間もしたら落ち着いているだろう。


「何かあったら、私に頼りなさいな」

「はは、ありがとうございます」


お世辞でも嬉しいものだな。

さて、まずはこの2人からだ。


「あの」

「どうかしましたか?」

「あら、早速ですわね」


ここ2人と友達になる。

まずは、そこからだろう。ルームメイトはいないが、だからこそここでできるだけ早いうちに作っておくことが必要だ。


「僕とお友達になってくれませんか」

「もちろん」

「それぐらいのこと、私にかかえれば楽勝ですわね」


というわけで、難なくお友達ゲットだぜ。

しかし、それを聞きつけたのか、他の女子達が集まってきた。


「なになに、お友達? 私ともなってよー」

「私も私もー」

「ぜ、ぜひ!」


なんだかよくわからないが、一気に女子の友達が増えた。なんて嬉しいんだ。

現代の僕では、まず女子に話しかけること自体勇気がいる行為だった。なので、仲のいい女子は昔から知っている人に限られた。

しかし、都会に出た僕の周りには顔なじみのある友達なんぞいるわけがなく、同じ趣味の友達数人しかいなかった。

まあ、そんな僕の昔はどうでもいい。

大事なのは今だ。


「しかし、男子達はいつまでやってんのかしらね」

「ええ、まったくですわ」


ヒジリとシャルがため息を漏らす。この2人は仲がいいのだろうということは、僕でも予測できた。

しかし、確かに2人の言う通りである。

今は授業中なのかどうかは知らないが、サンバールがどう思っているのかが心配だ。

もし怒っているのだとしたら、取り返しのつかなくなる前になんとかしなくては。

少なくとも、この事態を引き起こしたのは僕であることは...いや、リースのチャラさが原因だった。

じゃあ、もうしばらく放置しようか。


「しかし、サンバール先生も何も言わないんですね」

「まあ、この教室は無法地帯と同じですし」

「無法地帯」

「そうですね、確かにその通りですね」

「否定してくれないんだ」


シャルが言い出したことを、オウム返しに聞いてもヒジリは否定しない。

なんてことだ。僕は会長に地獄に放り込まれたのではないのだろうか。

いや、そんなはずはない。まだそう決めるには早すぎる。


「なら、この中で1番強いやつがアイラさんと付き合える、これで異論ないな」

「ああ」「俺もそれで構わない」「俺もだ」


男子の言い争いもそろそろ飽きてきた僕は、じこのクラスの人数を数えていたのだが、とんでもないことが聞こえた。

僕と付き合うだって?


「な、なんでそんなことに」

しかし、僕が戸惑っている最中でも、事態は進んでいく。

ただ僕1人置いてかれる中、シャルが名乗りを上げる。


「あら、それって私達も参加可能ですわよね」

「...勝っても女子的には微妙な報酬だが、まあいいだろう」

「ふふ、これで、カワイイコレクションが増えますわね」

「!?」


今、シャルの口からからとんでもないことが出てきたと思うのだが、それは気のせいだろうか…。

いや、気のせいだろう。

現に、他の生徒も特に気にした様子はない。

なるほど、安心した。きっと何か別のことを言ったに違いない。


「なら、俺は着せ替え人形にでもするかな」

「じゃあ俺は、多分初めてであろうアイラちゃんの初めてをもらうとしよう」


おっと誰か変なことを言ったようだ。今言ったやつは誰かはわからんが、後で血祭りにでもあげるとしよう。

しかし、これには自分も参加可能なのだろうか。


「あの、僕も参加しても…」

「ダメに決まっているだろう」


短髪な男の子に拒否されてしまった。残念。


「大丈夫、安心してアイラちゃん」

「ヒジリさん...え、ちゃん?」

「私が優勝して、アイラちゃんを守るわね」


もうこの際、ちゃんでもなんでも構わない。僕を守ってくれるのなら誰でもいい。

僕は、早くも僕の全てをヒジリさんにお願いすることになった。


「お願いします、ヒジリさん!!!」

「はい、任されました♡」


そして、クラスの全員が教室から出ていく。

はて、みなさんどこへ?


おかげで教室にはサンバール先生と僕だけになってしまった。

...先生、ここまでやっても何も言わないなんて、すごい放任主義なんだな。


「あの、先生」

「...どうした?」

「みんなはどこへ行くんでしょう」

「あー...訓練場だな」

「訓練場」

「ああ、そうだ」


サンバール先生曰く、この学院にはいろんな施設があり、闘技場もその中の1つ。

土地の範囲は広いが、さらにそこから地下も存在するため、学院内は馬鹿みたいに広くなるんだとか。

そのうち案内してくれるらしいが、その時はクラスの誰かがするとのこと。

しかし。


「僕も訓練場に行きたいんですけど」

「...誰もいないから、俺が連れてくしかないな」

「まあ、そうですね。よろしくお願いします」


そんなわけで、先生のあとについていく僕。

しかし、先生は道中変なことを言い出した。


「...もしかしたら、もう終わってるかもしれないな」

「えっ」


まだみんなが訓練場に移動開始してからせいぜい5分と言ったところだ。

移動時間を含めると更に短くなる。そこまで実力に差が出ているのだろうか。


「あの、そんなに強い生徒がいるんですか」

「ああ、確かにいるな。1人化け物が」


化け物。なんだか、親近感を覚える単語だ。別にそうやって呼ばれていた訳では無いが。

しかし、僕の力を知ってしまえば、誰しも思うだろう。

それは一体誰なのだろうか。


「ヒジリだな」

「なるほど、ヒジリさんが...ええ?」

「あいつなら、他の生徒が束になってかかっても3分あれば余裕で殲滅できる」

「はえー」


全員の実力がわからない以上、想像するしかないが、強いということはわかる。しかも、それが全力ではない可能性もある。

もしかしたら、僕とやりあえるほどに。

...いや、それは無いか。


「とにかく、それなら安心です」

「安心?」

「ええ。私の安全を勝ち取ってくると約束してくれましたから」

「...なるほど、そうか。まあ、お前がそれでいいならそれでいいか」


はて、この先生は何をじ知っているんだろう。今ここで問いたださないと何か危険な気がする。

僕の勘がそう言っている。


「せ、先生。何か知っているなら教えてください。何か命の危険を」

「ほらついたぞ」

「遅かったか...」


しかし、ついてしまったことはしょうがない。話に集中していてまったく道を覚えていないが、まあそんなことより大事なことがある。

できれば僕のなんとなく危険な気がするを気がするだけにしてほしい。

というか、そうでなければ困る。


いざついた訓練場は、意外にも木で囲まれた場所だった。

ただ、魔力でコーティングされているのか、魔法をぶっ飛ばしても壊れる心配はなさそうだ。

ただ、なんとなく僕が全力で魔法を出すと吹き飛んでしまう気がしてならないので、全力は出せないが。

壊れないのは、ここの生徒の実力の範疇で作られているからであって、僕のような存在を想定して作った訳では無いはずだ。


そして、その訓練場の中は盛大に燃えていた。その中に、立っている影が1つ。


「あら、アイラさん。意外と来るのが早かったですわね」


ヒジリだ。

確かに、強いのだろうが、倒した生徒は無事なのだろうか。それが心配だ。


「あの、怪我した人とかは...」

「会長から聞いていないのか?」

「はい?」

「校章だよ」

なるほど、それで守っているのか。しかし、それだと普通に立っている生徒がいてもおかしくないのでは。


「なるほど、その疑問はもっともです。ですが、ブローチも万能ではありません。物理も魔法も、すべて防いでくれる代わりに、装着者にそれ相応の負荷がかかります。

つまり、自身の体は傷つかないけど、疲労や精神的なストレスで襲いかかってくるというわけです」

「なるほど」


そりゃ便利な魔法だ。

しかし、なんにせよヒジリさんが勝ったのはわかる。つまり、僕の貞操だとかその他諸々は守られたことになる。

ああ、ありがとう、ヒジリさん。


「ありがとうございます、ヒジリさん」

「いいのよ、これくらい。少しだけお願いごとを聞いてくれたらね」

「お願いごと.、ですか?」

「そうそう」


まあ、ヒジリさんは命の恩人と言い換えてもいいぐらいだしな。少しぐらいならいいかもしれない。

そう思い、僕は了承することにした。


「少しぐらいならいいですよ。それで、なんです?」

「えっと、まずは、私のルームメイトになって欲しいの」

「...それは、会長に言ってください」

「わかったわ。それと、私のことはヒジリって呼んで欲しいのよ。私のお願い事はこの2つだけ」

「はあ、最後のは簡単ですね」


ルームメイト件は、会長に言わないといけないし、リナにも報告しなければいけない。

え、サリナたちにはいいのかって? いいんだよ、別に寝てるだけだし。


「それでは、教室に戻りましょうか」

「え、他の生徒は」

「いいんだよ、ほおっときゃそのうち目が覚める。うちのクラスは実力主義だからな」


ふむふむ。そうなると、僕が望んでいるような基本的なことは教わらないようですが。僕自主退学していいですか。

しかし、そうか。そうなると、ルームメイトにヒジリさんが、というのは大変魅力的かもしれない。何しろ、この世界のことを教えてくれるかもしれないのだから。

いや、別に教室で教えて貰ってもいいのだが。


「とにかく、さっさと教室に戻るぞ」

「はあ、わかりました」


しかし、本当に放置していてもいいのだろうか。

元日本人の僕の心が、放置してはいけないと...


「言ってないや」


言ってなかったので、放置していくことにした。





教室に戻ってきた3人だったが、特に授業はしないのがサンバール流なのか、僕とヒジリのただの雑談会になっていた。


「それで、アイラさんはどこからいらっしゃったんですか?」

「えっと、かなり遠いことは覚えてるんですけど、街の名前すらわからなくて」


もちろん嘘だ。さすがにヒジリに『日本から』とか言ってもわかるわけないだろうし。

いや、ヒジリが日本から来たという可能性もあるのか。

いやぁ、忘れていた。


「だけど、極東と言われていたことは知っています」

「極東、ですか」

「はい」


日本は極東とも言うから、嘘はついていない。多分。

しかし、これから先もこの嘘で通すには無理があるかもしれない。

ここは、実力主義な学校だけあって、特に出身地とかは聞かれたりしなかったが、もし聞かれたら、特にルノウ会長なんかに聞かれたら絶対にボロが出る。

それは避けたい。穏便な学校生活を送りたいし。

...いや、よくよく考えたら、既に僕が強いというのは会長には知られているのだった。

会長が黙っていてくれることを祈ろう。


「それで、アイラさんはいま何歳なんですか?」

「えっと、多分15です」

「なるほど、私は先月16になったので、少し先輩ですね」

「はあ」


なるほど、先月。

つまり、この世界では日にちを数えるのに月というのを使っていることになる。

いや、しかし、ヒジリが日本人で、僕にカマをかけている可能性もある。

これは、どっちだ?


「すみません、先月ってなんですか?」

「...知らないんですか?」

「はい」


ここは、僕が無知だということでゴリ押しさせていただく。

幸い、先輩ですね、と言われて同意はしなかったため、ボロは出ていないはずだ。我ながら完璧。


「まず、1秒が一般的に知られている時間の中ではもっとも小さい単位です。

次に、分。これは、秒を60回数えたら1分になりますね。それから____」

「なるほど」


ヒジリから受けた説明は、現代の数え方と変わらないようだ。きっと現代と同じような科学者が発見したんだろう。


「いえ、普通に魔法で計ったみたいですよ」

「あ、そうなんですか」


違った。

しかし、現代と時間感覚が同じというのもありがたい。これで、サナの訓練も当初の計画通り進められるし、色々考えやすい。


「それじゃあ、話の続きね」

「あ、はい」


ヒジリによって思考は強制的に中断されてしまう。まあしょうがない。


「それで、剣や魔法を嗜んでいるって言ってたけど、どのくらい?」

「いや、ホント、少しだけですよ」

「あら、そうなの。なら、今度手合わせしましょ」

「あ、はい」


実力を隠すのは簡単だ。創造スキルで制限系のスキルを作ればいい。

しかし、やりすぎると実力主義なこの学校でやっていけなくなる可能性が出てくる。

理想としては、全員の実力をこの目で見て、それで調整したかったのだが、その大半はヒジリがボコしてしまった。残念。


「まあ、なんだ。もうすぐで昼だし、学食に行ってきたらどうだ」


今まで置物のようだったサンバール先生が、昼食を勧めてきた。しかも、学食を。はて、学食とは。


「学食というのは、この学校で無償で提供されるご飯のことです。朝昼夜と、おかわり自由なんですよ」

「それは夢のようです」


味噌汁はあるだろうか。

いや、ないだろうから、そのうち自分で作るとしよう。


「私のオススメはエビピラフ」

「へえ、エビですか」


こっちの世界にもエビっているんだな。こういった世界って、現代のものと見た目や味は同じなのに、脅威度が桁違いだったりするからなあ。


「アイラも、エビピラフ?」

「はい」


アイラ、サリナ以外にそう呼ばれるのは初めてかもしれない。

リナもユサも、ご主人様としか言わないし。


「おばちゃん、エビピラフ2つ」

「はいよ」


しかし、学食の場所までの道のりは覚えたのはいいが、いい匂いはまったくしない。

これだと迷子になった時匂いで場所を辿るのは難しいかもしれない。

いや、僕は犬じゃないし、そんなことをするぐらいなら感応スキルで人を探せばいいだけなのだが。


そして、1分で出されるエビピラフ。尋常じゃなく早い。

しかも、今さっき焼いて作ったかのようだ。もともと作ってあったわけじゃなさそうというのが更にすごい。

まさか、調理場の魔術師はここにいたというのか。

世界は狭い。


しかし、問題は味である。

いくら早くても、味が悪ければ大問題だ。

いや、ヒジリのあの態度を見ていれば、そんなこと心配するまでもないということがわかるのだが。


兎にも角にも、食べないことには始まらない。

スプーンですくい、口に運ぶ。


「お、おいしい!」

「でしょー?」


ヒジリがまるで自分のことのように喜ぶが、なるほど確かに自慢したくなるし、褒められたら嬉しくなるだろう。

適度に味付けされた米に、プリプリのエビ。しかし、水っぽいかと言えば違う、そんな感じだ。

口の中で噛めば噛むほど、そに香ばしさは頭の上まで突き抜けていくよう。

このチャーハンなら何杯でも食べられそうな気がする。


「ごちそうさまでした」


学食が想像以上に美味しかったので、これから毎日エビピラフを食べたいと思う。

多分、栄養的にも大丈夫だろう。今までが偏食を極めていたのだし。


「満足した?」

「はい、それはもう」

「よかった」


そしてわかったことは、こんなおいしいものを作るおばちゃん、それにそれを紹介してくれるヒジリさんは、悪い人じゃないということだった。

自分でも思っているより早い更新でした。

明日もこの調子で行きますぞ!


しかし、他の掲載している方はPCでやっている方が多いんですかね。

私は携帯なんですけど

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