17 学校って生徒会長とか美人なイメージだけど本当にそんなんだ
翌日。
「皆さん、お揃いですね」
僕達(シドは不在。遅刻と思われる)は再びギアスの元を訪れていた。
正確に言うと、アズリレウス学院を。
「それでは、いきましょうか」
ギアスは笑顔のまま、僕達を中へと促す。
相変わらず僕とは目を合わせようとはしない。
中に入ると、外からは人がいるのかどうか心配になるほどの静けさだったが、意外にも騒がしいものだった。
「外へは防音魔法の影響で、滅多に音は漏れません。ついこの間、爆発事故が起きた時は、さすがに漏れたと思いますが」
なるほど、前に聞いたあの爆発音は、魔法で減衰された音だったのか。近くで聞きたくはないな。
というか、事故だったのか。
「けが人は1人もいません。後ほどお渡ししますが、我が校に入学した際に配るブローチが、防壁の意味を成しますから。身を守ると同時に、我が校の生徒であることを証明する道具にもなりますね」
なるほど。ようするに、校章みたいなので守ってるってことか。
そのシステム、学校側でオンオフ切り替えられる、とか無いよな?
「さて、それでは、まずは生徒会長に挨拶をしていただきます」
ギアスに連れられる途中、校内をチラチラと見ていたが、壁はとにかく白、白、白。
なんだか頭がおかしくなりそうだ。
おかしくなる前に迷子になるだろうが。
「こちらです」
白い壁に紅一点、ではないが、黒い扉があった。自己主張が激しいとか思わざるを得ない。
そして、黒のドアノブ。見にくいだろう。
しかし、ギアスは開けてくれる様子もないので、自分で入るしかない。
いや、入りたくない訳じゃないけど、挨拶とか面倒なんだよね。
大人とか、頭が固いから好きじゃない。
いや、嘘。大好き。
というか、なぜ最初に会うのが生徒会長なのだろうか。
校長とかではないのか。
「……入ってみるしかないか」
ドアノブを捻り、扉を開く。
中は思っていたより質素な作りで、黒っぽい緑の絨毯が敷いてあり、その奥に少し大きな机が1つ。
あとは、壁際に本棚がある程度だ。
……ふむ。もう少し豪華かと思ってたいたのだが。
「ようこそ、転入生の諸君」
奥の机に座っていたらしき人物は、椅子から立ち上がり、僕達に向けて挨拶をした。
本当に、いつからいたのだろうか。
「私が、ここの学院の生徒会長。ルノウ・ヴァイオレットと申します」
「……僕の名前は……」
「いえ、存じておりますので、仰る必要はありません」
「……あ、さいですか」
自己紹介ぐらいさせろよ。
とは思うものの、自己紹介したあとに、『存じております』とか言われても、じゃあ先に言えやみたいなことも思うんだけど。
なんてワガママだ。
「さて、あなた達は少し飛び出た能力を持っておられるようですね」
「……飛び出た?」
「ええ。試験の結果、見させてもらいました」
ああ、あれか。
……あれか。
「いや、あれはですね会長。たまたまなんですよ」
「この国で1番の武人の技を、獲物ごと弾いたことがですか?」
「……いやぁ、はっはっは。見間違いなんじゃ……」
「そんなわけがないでしょう?」
はい、詰んだ。
ラノベとかでよくある、まさに俺TUEEEE系の奴ならこの路線でもいいさ。
けど、僕は静かに生きたいんだ。
後ろで黙ってる3人と愉快に楽しくイチャつきながら旅がしたい。
いや、よく考えたら、それだとただ女の子4人が仲良く旅してるだけにしか見えないのか?
……まぁそれもそれで
「さて、そのことなんですが」
「あっはい」
会長が喋り出したから、一旦中断だ。
……しかし、改めて見ると会長さんもかなりレベル高い美人さんだな。
赤い髪は、サリナの元メンバーを思い出させるが……。
強気な目、自信に満ち溢れている顔、少し寂しそうな胸……。
「……少し不快な感じがするのですが」
「えっ!? な、なんででしょうかね!?」
なんてことを考えていたらすごい睨まれた。
「私のことは、ルノウとお呼びください」
「あ、わかりました」
「それと、あなた達のこれからなのですが」
ルノウさんは、椅子から腰を上げ、こちらに歩いてきた。
腰まである赤い髪が、リズムよく揺れる。
「これからあなた達は特別クラスに編入していただきます」
「特別クラス?」
「はい。あなた達の実力は、この学院の生徒を大きく上回るものです。なので、私が直々に見ます」
「あー、なるほど」
つまり、監視か。
僕達の力は、確かに異常だ。主に僕が。
この中で1番弱いのはユサだとしても、グレゴリウスには勝てるだろう。
多分。
「なので、授業は明日から行います。そういう訳ですので、寝泊まりもこの学院でしていただきます」
「……なるほど」
ここまでくると監禁かな。
いや、最初から監禁か。
「説明は以上です。何か必要であれば私を呼んでください」
「わかりました」
話が終わったことにより、部屋から追い出された。
目の前に広がっているのは、ただただ、白い壁。
くそっ、アイツはどこいった?
確か名前は……。
「ギアス」
「はい、私に何か?」
「!?」
名前を呼んだら隣から声がした……何この人、ワープでもしたの?
「いつからここに?」
「いえ、最初からですが」
「……あ、そう」
つまり、話している間ずっとここにいたのか。
……暇じゃないのか。
そんなことより、部屋に案内してもらわないと。
「あの、僕達の部屋なんですけど」
「ああ、こちらです」
部屋を尋ねると、すぐに歩き出したギアス。
置いていかれると、2度と見つけられる気がしないので、必死に追う僕。
うーむ、何というか。
「ここです」
「……え、ここですか?」
ギアスの後を追ってついたのは、会長ことルノウさんの部屋から20mも離れていない場所だった。
これなら、追わなくても見失うことは無かった。いや、そうではない。
「あの、なんで会長の部屋の隣なんです?」
「分からないところがあれば、すぐに聞けるようにとのご配慮です」
「あっはぁ、そうですか」
くっそう、いらん配慮を。
というか、ホントに監視なんだな……。そんなに監視されるようなことしたかな?
「それでは、私はこれで」
「あ、どうも」
ギアスが帰り、僕達の部屋の扉を見る。
扉は、壁と完全に同じ、という訳では無いが、白。ドアノブが銀色に輝いている(ように見える)だけで、他に特筆することはない。
なんだ、この学院は宗教にでも入ってるのか。
そうだな、そのうち魔法で全部黒くしてやろう。
卒業する時にしようかな。
「ご主人様?」
「あ、うん、入るよ、うん、入る」
リナに促されて(いない)、中に入る。
扉を開け、その先に広がっていたのは。
「……白じゃないんかい」
普通。
ここに来る前に泊まった宿と同じくらい普通。
ベッドは2つ。またかよ。
それに勉強机が3つ。なんで?
引き出しが6つあるタンスが2つ。
ふむ、普通の寮の部屋って感じだろうか。
ベッドの奥にある窓を開ける。
「……これは」
そこには、青空の下、草原が広がっていた。
そんなに、この学院の私有地はでかいのだろうか。
「いい眺めですね、ご主人様」
「うん、そうだね」
まあ、どうでもいいか。
取り敢えず、明日に向けて準備することがないかどうかの確認だけ……
「ぐぅ……」
「……」
「したいんだけどなぁ……」
振り向くと、既に2名、ベッドにインしていた。
君たち、疲れていたのかい?
ちなみに、2名は言わずもがなユサとサリナだ。
「……」
……お互いに抱き合っちゃって、仲良しなこと。
「もう、寝ちゃおうか」
「その前にご主人様、お食事をされた方がいいかと」
「それもそうだね」
カモーンヌ、アイテムボォーックス(ネイティヴ)!
アイテムボックスから出したオムレツ(出来たて)を机に並べ、熟睡している2人を起こし、食事を取る。
しかし、まだこれは昼食だ。
さっきはついいつもの癖で『寝るか』なんて言い出したが、仮に寝たとしても、明日になる前に目が覚めてしまうのが目に見えている。
「……おいしい」
「んまー!」
「ユサ、静かに食べなさい」
……。
「元気だなぁ」
サリナはいつも通りとして、ユサはとにかく元気だ。
とにかく元気なユサ。見えちゃいけないものを隠したりはしない。
「ごちそうさまでした」
そんな感じで、昼食も食べ終わり、このあとは何をしようかと言ったところなのだが……。
「そうだ、鍛錬でもしよう」
折角学院に通うのだ、知識はできるだけ吸収したい。
その際、実技で遅れをとるわけには行かない。
遅れどころか、先生も簡単に倒せる程度にはなっておかないと、座学に集中出来ないだろう。
いや、これは偏見か。
「とにかく、実技に関しては余裕を」
「ご主人様、どこかへ行かれるのですか?」
「あ、うん」
そんな訳で、修行することをリナに説明した。
修行する場所は、窓を開けたら広がっていた草原の下で。
すると、リナはこんなことを言った。
「それでは、ユサを同行させることをおすすめ致します」
「……ユサを?」
確かに、僕のパーティーメンバーの中では1番の戦闘狂と言っても過言ではないくらいの人員だ。
今は……寝てるけど。食後なのに寝てるけど。
それは別として、食後にすぐ寝ると牛になるって話を聞いたんだけど、あれはどこ発祥なんだろう?
「私とユサでは、ユサの方が弱いのです。これでは、ご主人様を守ることができません」
「いや、僕も戦うんだけどね?」
「なので、ご主人様が鍛えていただければと思いまして」
「リナじゃダメ?」
「私では力量不足ですので」
まあ確かに、僕のようなチートの奴と戦うと、圧倒的力量差の敵とはどう戦ったらいいかも分かるだろう。
しかし、同じような力量差の敵と戦っても、お互いに高め合うことができるとも思う。
それに僕は、スキルで強いだけだから、的確なアドバイスなんてできない。
だから、これまで訓練はサリナ主導のものでやってきたのだ。
もちろん、僕も受けた。
しかしまぁ、僕と戦うということは、知性のないバカ強モンスターと戦うということとほぼ同義だ。
別に、悲しくなったりしない。
「わかった。けど、僕とばかりやってたらおかしい方向に強くなっちゃうから、リナも相手してね?」
「わかりました」
そんな訳で、寝ているユサを起こし、草原へと出かけた僕だった。
「ユサ、僕が訓練を見れるのはあまりないから、僕とは全力でやる機会にしよう」
「はい!」
この世界に1週間の概念があるのかは知らないが、僕があまり見れないことは既に分かっている。
現代の1週間に例えるなら、7日間のうち、1日は僕が見て、残りはリナが。
リナが担当している日は、休息日を与えようが何をしようが好きにしていいのだが、出来れば技術面を鍛えてほしい。
それでは僕は何を鍛えるのかと言うと。
「ほらほら! もっと早く!」
「は、はいぃ!」
耐久力。ただひたすらに耐久力。
今はお互いに剣を持って打ち合っているが、走り込みも追加してもらう予定だ。
1日や2日程度で体力はつかないので、日常的にやってはもらうのだが。
僕との訓練は、必死に、自分の限界の中で、どうしたら僕という強大な敵に勝てるのかを考える訓練だ。
これが効果的なのかは分からない。指導経験皆無だから。
だが。
「やぁぁぁぁああああ!!!」
「……」
ユサの楽しそうな顔を見て、まぁいいか、とも思うのだった。
修行(?)の後、僕は商業区へと足を運んでいた。
お金は幸いある。
だから、勉強道具を揃えておきたいのだ。
もちろん、僕の分だけではない。4人分だ。
お金的に4人分揃えるのが厳しいようなら、最悪僕以外の3人だけでも何とかする。
僕は能力にものを言わせればなんとかなると思う。
なんとか……なるかなぁ。
「おっ、これがペンかな?」
通りに出ている、所謂店頭販売というものの
類であろうところにあったのは、大量のペンだった。
ただ、それは、僕達が普段使うようなペンじゃなくて、羽ペンだったが。
しかし、これで文字を書こうと思うのなら、インクが必要だ。
これだけで、どれくらいのミルだ?
……聞いてみるか。
「あの」
「らっしゃい、手の持ってるやつは全部で3ミルだな」
なるほど、羽ペンが2ミルで、インクが1ミルかな。
「羽ペンが1ミル、インクが2ミルだ」
「逆なんかーい」
でも買う。
4人分買った。これで12ミルだ。
「まいどありー」
しかし、これだけでは足りないだろう。
授業をペンだけで乗り切れるか? 否だ。
例え教科書を配布されたとしても、厳しいだろう。
しかし、僕の懐事情も厳しい。
ただでさえ、最近は宿暮らしをしているにも関わらず、働いていないんだ。
ただのニートだ。
いや、それは違うか?
「そんなことより……」
帰ろう。
もう、お金に困ることは早々ないだろう。
……いや、ある。全然ある。
まだないと決めつけるのは早計というものだ。
「そうだ、教育費……」
現代の学校に通うのなら、義務教育でない学校、高校かそれ以上の学校に通う際、お金が必要になる。
それこそ、ちょっとやそっとの金額ではない。それは、この世界の学校でも同じだろう。
「はぁ……何を慌てているかと思えば、そんなことですか」
「そんなことじゃないです!」
大急ぎで(自室の窓から)戻り、隣の会長の部屋へと乗り込み、お金のことのついて聞いたら、そんなことと言われた。
くそっ、これだから貴族は!(偏見)
「ええ、そんなことです。第一、それが分かっているのだから、ここに来たのでは?」
「……それ?」
「ええ、そうです。 思い出せるように私が教えて差し上げましょう」
会長は面倒そうに椅子から腰を上げ、ティーカップに紅茶を注ぐ。
「まず、この学院は教育費等を払う必要がありません。 私も払っていません、
しかし、それと同時に、卒業後は最低でも3年間はこの国に奉仕することが義務付けられています。
私としては、卒業する前に行方をくらますことをお勧めしますが」
「……それっていいんですか?」
「学院としてはお勧めできませんね」
できないんかい。
しかし、美人は何をやっても綺麗だ。
例え気だるそうに紅茶を飲んでいても、それだけで絵になる。
ずるいなぁ。いや、僕は中身は男だけどね。
「まぁ、この他にもいくつかのルールはありますが、そこら辺の学院と変わりませんので、普通に過ごしていただいて結構です」
「なるほど」
それって、学院の中にある伝説の石とか求めちゃいけないのだろうか。
アイラ・トールと賢者の石。なんつって。
ただし、襲いかかる困難は物理で解決する。
「ああ、それと、変更点が1つ」
「変更点?」
「はい」
ルノウさんは、部屋の窓を開け、爽やかな風に髪を靡かせながら、こちらに振り向く。
「アイラさん、あなたは、普通のクラスに入ってもらいます」
「……は?」
ついさっきまでは、4人のクラスだと言われていた。
だが、僕だけ別のクラス。
つまり、知らない人たちの中に、僕1人。死ぬ。
「そんな絶望したような顔をしなくても……大丈夫、みんな優しいですから」
「いや、そうではなく、なぜです?」
そりゃあ、確かに強さだけでいえば、僕は抜きん出ているのは思うけど。
「あなたみたいな強い人を、一般人の集団に放り込むと、周りはどうなるのかの実験」
「モルモット!」
自分が会長を務める学院の生徒を、実験材料にしようというのか……この会長は要注意だ。
いずれは僕もモルモットにされるかもしれない。
『あなたの力はわかったわ……なら、これは耐えられるかしら?』
『いや……そんなの、僕には入りません……』
自分で想像して変な気持ちになった。会長にはそのうち責任を取ってもらおう。
「そんなわけだから、今日はもう寝なさいな。明日は早いわよ?」
「わかりました、おやすみなさい」
会長の部屋から出て、自室へと戻る。
そこでは、サリナとユサが自身の武器の手入れを、リナはタンスに服を入れてる最中だった。
そういえば、この部屋に来た時に服をアイテムボックスから色々出したんだったか。
ちなみに、その服は全部創造スキル作。
「……あ、そういえば、ペンとか買ってきたよ」
「わ、私たちの分もですか? わざわざ、ありがとうございます、ご主人様」
「いやいや」
今更、創造スキルで作れるのなら、ペンもスキルでやればよかったなとか思うのだが、それも後の祭り。
もう今日は寝ることにしよう。
晩ご飯は抜きで、明日の朝食べる。
「ごめん、僕はもう疲れたから、寝るね……」
「はい、おやすみなさい、ご主人様」
今までのベッドよりは確実に寝心地がいいベッドで、僕は眠りに落ちていくのだった。
夏休みです!
なので、更新頻度が上げられると思います!




