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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第1章
22/79

12 対人間

闘技場とは、この国に入った時に中央で見たものだが、実態はローマと同じだろうか。


奴隷扱いの強者同士を戦わせ、どっちが勝つかをbetする。

現代の人が聞いたら誰もがおかしいと思うだろうが、これがこの世界だ。


正直言うと、なんだかタイムスリップしたみたいで、僕はわくわくしているが。

というか、早く学校生活したい。

高校は特に楽しかった。


「ご主人様がとてもお強いのはわかりましたが、それでしたら私がついていく必要は……」

「あ、いや、少し実験したくてさ」

「実験……あ、ご主人様の言う『れべりんぐ』促進スキルですね」

「そーそー」


レベリングという言葉はこの世界には無いらしく、少しイントネーションがおかしいが、些細な問題だ。


決して、パワーレベリングをするわけじゃない。

いや、状況によってはするけど。


「わかりました。ご一緒させていただきます」

「んじゃ、そゆことで」


もう寝るとしよう。

あとの2人はめっちゃ寝てるし。


「んじゃ、おやすみ」

「はい、おやすみなさいませ」


そのままベッドにダイブした僕は、リナがどこで寝るのかという確認もせずに、適当に寝るだろうと思いそのまま寝た。





「ご主人様、おはようございます」

「……んあ」


朝目覚めると、枕元にリナが座っていた。

……なんで座ってんの?


「ご主人様、朝食の準備は出来ておりませんが、これからご用意しますか」

「ちょっとストップ。その前に、寝た?」

「はい」

「あぁ、それならいいか……。あ、ご飯は僕が用意するよ」


この部屋には、ベッドに、机に椅子、普通の一般家庭のようなものを想像してもらえればいいだろうか。

ただ、ベッドが多少固く、大きいぐらいの違いだが。

昨日は話をしたくて、部屋をあまり見ていなかった。

上着をかけるところは無いので、椅子にかけるのだろうか。


「……」


実際に闘技場に出ると言っても、どうやったら出られるのかは不明だ。

そもそも出られるかも知らないが。


僕は改めて、自身のスキルが書かれたカードを取り出す。

気になるのは、『統帥スキル』。

このスキルが、僕はレベリング推進スキルになっているのではないかと思う。

名前から察するに、指示が通りやすくなるとかだと思うのだが。カリスマ的なね。


「それじゃ、向かおうか」

「サリナ様のお食事はどうされますか?」

「あ、忘れてた。2人の分は、そこの机に置いておこう。僕達のは、歩きながらかな」

「わかりました」


それじゃあ、出発だ。





闘技場は年中無休で動いている。

常に熱狂に包まれており、雪が降る地域なのに、闘技場内だけ雪が溶けているとまで言われる。


ちなみに、サンドイッチ美味しかったです。

具材は、ハムっぽいものと、レタスっぽいもの。


外から見ただけだと、ただ声が聞こえてくるだけだが、中に入るとその声は何倍にも膨れ上がったように耳を突く。

ふむ、防音魔法でも張ってんのかね。

入場料なんてものは無い。

賭け金だけで運営が成立しているのだろう。


「さて、どうしたら出られんのかな」

「ご主人様、あちらを」

「ん?」


リナに言われた方向を見てみると、会場のホントに端の方。

一般人の参加は推奨していないかのような場所に、『飛び入り参加受付』と書いてあるところがある。

というか、リナよく読めたな。


「リナ、読み書きが出来るの?」

「……多少です」

「そっか。それじゃあ、受付だ」


リナは優秀だな。


そう思いながら、リナの手を掴み、足早に人混みを避けつつ向かう。

そうしてたどり着いた受付は、周りに人はいなかった。

中にいるのは、中年のおっさん。別に太っているわけでもないが、特段動けるというわけでも無さそうな見た目。


「すみません、参加したいんですけど」

「……あ?」


男は寝ていたのか、寝ぼけた声でこちらを向いた。

そして、僕達2人をジロジロと見て、口を開いた。


「……2人で出んのか?」

「ええ、まぁ」

「なら、倍率は2.05だな。参加料はいらねぇ。ただし、怪我とかは自己責任だ。勝ったら良い報酬が待ってる。せいぜい頑張りな。これに名前をかけ」

「はい」


なるほど、僕達が勝てば、僕達に賭けてる人はその倍率で金が貰えると。

賭け方がいまいち分からないが、まぁいいだろう。

それより、参加は名前を書くだけでいいのだろうか。


「はい、書きました」

「……アイラと、リナか。やる時になったらアナウンスが入る。名前では呼ばずに、番号で呼ぶからな。これがお前らの番号だ」


そう言う男から渡されたのは、『2』の番号が書かれた小さなパネルだ。


「番号を呼ばれたら、ここに来い。俺の後ろにある扉から、中に入れる」


なるほど。ここが入口みたいなものなのか。

それまでどれくらいなのかは分からないが、適当に観戦してるとしよう。


「ありがとうございます」


僕は、一応10ミルだけ受付の人に渡してその場を去った。


お金のことについては全くわからないが、情報料とやらを払うのは聞いたことがあるし、ラノベの世界でもよくあった。

日本円に換算すれば、10倍だが、この世界での相場は現代に比べると1/10。

つまり、単純に価値を知りたいなら、100倍したら、わかるのである。

ガチャガチャが1ミルや、2ミルで出来るみたいな。

そんな感じで、それ以上の低い金額、日本円で1円や10円の価値を有する貨幣は、残念ながらアイラはまだ持っていない。

というか、そもそも無いのかもしれないが。


「ご主人様、始まります」


ボケーッと空を見ながら考え事をしていたら、リナに服を引っ張られて我に返った。

視線を正面に戻すと、屈強そうな男3人が立っているのが見えた。


「あ、そうだ、戻ってきたんだった」


受付から戻ってきても呼ばれるどころか始まりもしないので、考え事をしていたようだ。





戦いが始まった。

男達をこの際、選手と呼ぶことにしよう。

開始の合図は、選手達が、円形のフィールドの中で三角形を作るように壁に背中を預け、その中央で爆発が起きる。

それが合図だ。


「「「ォォォ!」」」


男達は、その合図がなるや否やすぐさま中央に走り出した。

そういえば、こいつら武器持ってないな。


「全員、格闘が得意なのですね。魔法も多少扱うようですが」


リナによると、そういうことらしい。


選手達が、中央でぶつかる。

そして、闘技場内のテンションは高まる。

ついでに僕のテンションは下がる。


あの取っ組み合いをやらなきゃいけないのかと思うと、怖いのだが。


「……私たちは武器がありますし、あんなことをせずともいいかもしれませんね」

「あ、なるほど」


己の拳より殺傷能力が高いものが、既に手にあるのだ。

わざわざ拳を使うものはおるまい。

いや、そんな奴がいるからこそ、拳法というものは出来たのかもしれない。

拳で語る、なんて言葉もあるみたいだしな。


「すみません、私の勉強不足ですね……初めて聞きました。どこかの言い回しだったりするんでしょうか」


この世界には無いみたいだ。


さて、そんな馬鹿なことを考えていると、決着がつきそうだ。

そうだな、男達を仮に、ABCとそれぞれアルファベットをふるとしよう。

Aの男は、かなり奮闘している。

BとCの男から挟まれているのに、そのどちらの攻撃を防ぐどころか、反撃すらしている。

かなり戦いなれしているようだが、一体何があってここにいるのだろうか。

それに比べBは、パワーが足りなく、Aの完全劣化版と言ったところか。

Cは、他の2人とは少し違うような気がする。

動きが、少し機敏なのだ。

少し、と言っても、僕基準だが。


「……おや」


分析をしていると、予想通り決着はついた。

Aが、それぞれの攻撃タイミングを調整し、BとCが同じタイミングでAに攻撃が来ると同時に、BとCでクロスカウンターみたいなことをさせていた。

その衝撃でふらっときた2人に、Aがしっかりと拳を叩きつけ、終了。

思ったより頭脳戦が入り込んでいるようだ。


もしあの男が敵にいたら、少し気を遣わないといけないかもしれない。


『番号、2。受付へどうぞ』


先程の男と思われる声のアナウンスが響く。

なるほど、これの次だったのか。

意外と空きがあるのか?


「ご主人様……」

「まぁ、死にはしないさ」


さっきの男も、殺してはいなかったし、意外とスポーツ感覚なのかもしれない。

そうじゃなくても、リナには傷1つ付けやしないが。

いや、1つぐらいは付けた方がいいのだろうか……。


「よし、来たな。入れ」


男は、自分の後ろの扉を指さす。

……特に案内とかはしてくれる様子はない。

仕方ないので、扉を自分で開け、入る。


「……」


中に入ると、道は一本道で、奥に誰かが立っている。

そして、さらにその奥から光が差し込んでいる。あれが、闘技場への入口だ。

しかし、こうまで一本道だと、引き返そうにも……


「あ、こっち側からは取っ手はないのね」


既にしまった扉は、壁へと化していた。

なるほど、逃げられないと。

それならそれでいい。

そういうことは事前に行っておくものだが、ここは日本ではないのだ。

もしかしたら、一般常識として教えこまれているかもしれないし。


「ようこそ、闘技場へ。それではまず、こちらをお読みください」


闘技場への道の途中で立っていた男に渡されたのは、1枚の紙。


「ご主人様、それは……」

「……大会参加承諾書みたいなものかな」

「……大会というのは、いささか物騒ですけれど」

「言えてる」


参加承諾書、と言っても、そんなに細やかに書かれている訳では無い。

戦闘中に死んでも、こちらは一切保証はしないとのこと。

先頭に勝った場合、入ってきた場所に戻り、そこで報酬を受け取る。

それだけだ。


「おーけー。それじゃ、もう行ってもいいの?」

「はい。ご健闘をお祈りしております」


んなこと思ってないんだろうなぁ。

ま、見た目が見た目だし。

だけど、見た目で判断するうちは、3流だ。

いや、何言ってるんだ僕。


「……うわ」


急に明るいところに出たからか、視界が少しくらむ。

それは一瞬で、その後に目に映ったのは、筋骨隆々とした男2人組だった。

おい、こっちは女の子2人だぞ、なんとかなんなかっ……たか。なるわけないか。

この世界では、そうだもんな。


「なら、則ってみようか」

「……?」


リナは、不安げにこちらを見る。

……さて、どうしたものか。


僕は少し考えた後、リナに1本の短剣を渡した。

1本は斬れないが丈夫、もう1本はとんでもシリーズでは、バランスが悪い。

それならばと、斬れ味は普通の短剣を渡したのだ。


「……わかりました」


そのことをリナに言うと、リナは頷き、短剣を握りしめた。

その顔には、少し緊張があるように見える。

見えるが、緊張は大事だ。

緊張感がなくなるというのは、敵の小さな動きを見逃す可能性がある。

それ故に、ジャイアントキリングなんてことが起こりうる。

そんなことは、僕がいる限りしないし、させない。


そして、向こうの男2人を見た時、開始のゴングは鳴った。

そんなものあったのか、と思ったが、まぁ無いと不便だろう。

もしなくても、魔法でそういった音を作れそうだが、闘技場にゴングは合わないと思う。


別に、ボクシングをやろうってわけじゃない。


「こっちからいくぜ、お嬢ちゃんたち! 死んでも恨むなよ!」


そう言いながら突っ込んでくるのは、こちらから見て左の男。

ボクシングのような構え方でこちらに走ってくる……相手はやる気だったのか、ボクシング。


「……ご主人様には指1本触れさせません」


リナがそう言いながら、僕の前に立つ。

その手には、先程渡した短剣と、丈夫なだけな短剣の2本。

よし、ちょうど1体1だし、リナのカードは僕の手元にある。

もし勝てたら、カードをよく見てみよう。


「せやっ!」

「はっ!」


リナと男の声が重なる。

男は、手に鉄の塊を巻き付け、リナの短剣に対応しているが、硬さで負けているのか、段々欠けてきている。

しかし、それを壊すのには時間がかかりすぎる。

そう思ったのか、リナは、相手のストレートのギリギリで避けると、そのまま一直線に体に向かって斬りつけた。

決して斬れないわけではない短剣により、男の腕はぱっくりと割れている。


「がぁあっ!」


男はそれでも、残った腕を突き出してくる。

学習はしないのだろうか。


「ふっ」


リナは先程よりも余裕を持ちつつ、同じように斬りつける。

先程よりも深く。痛そう。


あ、なんか気持ち悪い。


「肉とか丸見えだからかな……」


肉どころか、骨も見えてる。

いやぁ、グロい。

というか、このまま殺すんだろうか。


「ご主人様にその命を捧げなさい」


殺る気だね、アレ。


リナは、足を曲がらない方向に蹴り、身長差があって首に届かなかった距離を、膝をつかせて埋めた。

そして、短剣を振り上げる。


「……死ね」


そのまま、斜めに振り下ろし、首を斬る。

かろうじて繋がっているような状況だ。

まさに『首の皮一枚繋がった』。

いや、そんなの実際に体現されるとこんな感じでグロいことになるんだが。


「終わりました、ご主人様」

「あ、うん。お疲れ様」


カードを見るのは……もういいや。後で。

男の死体はグロいから、とりあえず視線を逸らす。

すると、その先には、もう1人の男がたっているのが見えた。

初期位置から変わっていない。

ゲームとかで、ある程度近づかないとこちらに気付かず、その場でずっと佇んでいるかのようだ。


「……それじゃあ、やろうか、あんた」

「え、僕?」


いや、別に嫌なわけじゃない。

やるのはいいのだが……。

そう、例えるならば、育てたいキャラがいるのに、レベルMAXのキャラで敵を倒すみたいな。

無駄な経験値が入るみたいな。

いや、別にこいつらで経験値が入るって決まったわけじゃないんだけども。


「……わかったわかりましたよ。やればいいんでしょ?」

「ふん……先程のものと同じと思ってもらっては困る」

「ふむん?」


先程のものと、ってことは、多少はやれるのか。

自信満々なやつって、大抵自分の力を過信しているタイプが多い。

周りが平均より下回っているやつしかいなかったとかね。

見た目からして歳は既に40後半だろうが、仮にその通りだとしたら、その歳までそんな勘違いしているとしたら恥ずかしいにも程がある。


僕?

僕は強いことがわかってるからいいんだよ。

無理もしないし、他人に無闇に言う必要性も感じないしね。


「でもまぁ、その前にこの子とやってよ」

「ご、ご主人様?」


すっかり僕がやるだろうと思っていたのか、リナは既に短剣を鞘に閉まったあとだった。

ごめんね、リナ。

でも、別に僕に経験値はいらないよね?


「いえ、なんでもありません。私にお任せ下さい」


リナは、改めて気合いを入れると、短剣を2本とも抜いた。

僕はその場から少し離れる。

男がどの程度か、見たいのもあるが、リナの実力をもっと見たい。

レベルなんて、見せかけの数字だし。

僕に至っては無いし。


「死ねや!」


とか考えていたら、男がリナに、いつの間にか持っていた剣を振り下ろす。

見た感じ、よく斬れるわけじゃないが、斬れないわけでもないようだ。

しかし、この男の実力では、斬れ味がいかによかろうとも、意味は無いだろう。

なぜなら。


「ふっ」


男の腕がぼとりと落ちる。

剣をしっかりと握っていたその腕は、握ったまま、地面へと落ち、そのまま転がって行った。


なぜなら、リナには当たらないからだ。

剣や刀といった刃物の戦いは、当たれば一撃必殺のようなものが多い。

しかし、当たらなければ意味は無い。

そう、通常の3倍の人も言ったではないか。


「ご主人様、終わりました」

「……あぁ、首もはねちゃったのね」


赤い人を思い出していたら、既にリナは、腕を落とすにとどまらず、頭も落としていた。

うーむ、恐ろしい子。

でもこれで、リナはなかなかに強いということが分かった。

これなら、多少の訓練でかなりの強さを発揮するはずだ。

そうなれば、料理に割り振る時間も多くできる。


「ひとまず、戻ろうか」

「はい」

作者はグロいのは苦手です



あれ、よく考えたら私、苦手多い?

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