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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第1章
17/79

7 みっしょんこんぷり〜と?

まずは現状確認。これ大事。


「……」

「……」


僕の他には奴隷のようなガリガリの小さい子が2人……どっちも人族だ。

はて、人族も連れてこられるようになったのだろうか。

まぁ、それはいい。


片方は、黒髪で足まであるだろう長さだ。

髪で隠れて顔は見えないが、手足は衰弱しているはずなのに、しっかりとした体つきなのがわかる。


もう片方は、ボブより少し長くなったかぐらいの青い髪で、ドアから差し込む微量の光でも、それに反応して光っているように見える綺麗な髪だ。


……よし、決めた。この2人だな。


そして僕は、2人に声をかける。

……反応してくれるだろうか。


「僕の名前ははやか……違った。アイラ。少し訳あってここにいる」

「「……」」


黒髪の方は少し動いたが、青髪の方は全く反応しない。

ふむ。


青髪の方の顔を横から両手で挟み、声をかける。


「僕の名前はアイラ。君たちをここから助ける」

「……?」


なんとか認識はしてもらえた。

未だに生気を伴っていない目をしているが、まだ死んではいない。

いくらでもやり直せるはず。


まずは、健康的な生活から、かな。

まぁそれはいいや。

ただ、今のこの状態の2人を連れてなんとかするのは簡単なのだが、どうしてもしたいことがある。

会いたいのだ。

あの男に。


「……さて」


こういう時は、空間スキルと感応スキルの合わせ技だ。

あの男の感覚は覚えている。

ならば、空間スキルで人がいるところ片っ端から感応スキルを利用して、一致した奴のところに飛ぶ。

感応スキルはパッシブだから、空間スキルで見たらわかるのだろうが。


「さて、まずは空間スキル____」


辺りが一瞬で緑の縦と横の線で構成される。

そして、部屋を高速でスキャン。

……スキャンと言っても、感応スキルで一致する奴を探してるだけなのだが。

さて、うまく見つかるかどうか。


「お、いた」


すぐに移動スキルで転移、するわけにもいかない。

この2人を助けると明言した以上、助けないと。

仲間にする予定だし。

だけど、どうしたものか……。


「……アイテムボックスに入れられないかな」


2人に触れ、アイテムボックスを開く。

そして、2人をアイテムボックスにひょいと入れると、そのままアイテムボックスの口は閉じた。


「……生きてるのも入れられるんだ……」


おそらく時間も止まっていると思うし、2人からしたら、異空間に入れられたと思ったらすぐに出されて、場所も変わっている、というような感じか。

擬似的に移動スキルを使っているかのようだ。


さて、それはともかく。


「転移して、その後どうする?適当に誰もいない場所にまた転移して話を聞き出すか?」


自分で適当に言ってたらいい感じの案が浮かんだ。

これでいこう。


「それ」


もうどのスキルより慣れたであろうこのスキル。

目の前には、先程の男がいた。


「……、お、お前、あの部屋に入れたはずじゃ……」

「ごめんなさい、話があるんで」


何か言っていたが、とりあえず無視だ。

この男が他の仲間を呼ぶ可能性もある。

まずは、男の腕を掴み、誰もいない部屋に転移。


「うわっ、な、なんだ?」


続いて、壁に投げつける。


「が、はっ……」


……あぶない、意識を残しておかないと。


とりあえずは起きてるみたいだし、聞きたいことをさっさと聞こう。


「すみません、少し聞きたいことがあって」

「……聞きたいこと?」


よし、問答はできるな。

僕はつとめて笑顔で話すことにした。


「あなたは、この組織を良く思っていますか?いませんか?」

「……」


男は、この部屋に誰もいないことを確認し、隣にいるかもしれないという不安感から、声を潜めて言った。


「……良く思ってはいない。正直いったら、今すぐにでもぶち壊してやりたいところだ」


よっし、これで、組織の中のやつの証言ゲットだぜ。

あとはこいつを女神様の側近ホーレン草……じゃなくて、ローレンスさんに渡すだけだ。


「じゃあ、ここを壊そうとしてる人がいるので、その人に協力してもらっていいです?」

「え? あ、ああ」


まぁ、許可なんて求めてないさ。

無理やり連行して、あとの仕事は女神様の側近の仕事だ。


まずは。


「アイテムボックスへどうぞ」

「え?うわぁぁぁぁ」


足元にアイテムボックスの口を出して落としてやる。

さよなら。

次にあんたが日の出を見るのは、ローレンスさんの目の前でだ……。


まぁ、そんなことより。


「もうここから出てもいいかな」


用事は済んだはずだ。

個人的に、何をしているのか気になるような気はするが……。


「ん、覗いてから帰ろ」


とりあえず、人がいっぱいいるところの手前にでも転移するとしよう。

見つかったとしてもすぐに逃げたらいい話だ。

どうせこの国からは遅かれ早かれ出ていく。


「……うわぁ」


転移して数秒後。

人体実験をしているであろう部屋の扉越しから聞こえてくるのは、叫び声だった。

ただ叫んでいるものもいれば、たすけて、いたい、死にたくない、と叫んでいるのもいる。

なるほど、地獄絵図だな。


「……入りたくないような、入りたいような」


それでも、好奇心は旺盛な僕であった。

扉に手をかけ、ゆっくりと開く。

扉で遮断されていた分の音が一気に届く。

それは、電気がバチバチいっているような音だった。


「なんだ、あれ」


子供を台に固定し、石のようなものを無理やり腕や足、はたまた胸に直接埋め込んでいる。

その石は、見たところ薄く紫に光っている黒色の石のようだが。


「……ここにはもういたくないな」


正直言うと吐きそう。


半ば急ぎ気味に転移し、仮拠点に戻ってくる。

もう日の出が来ており、窓から入る朝の光がサリナの寝ている横顔を照らしている。

なんて可愛いんだ……。


「よし、リフレッシュだ」


まぁ寝よう。

これから寝ようって時にローレンスさんが来たから一睡もしていない。

あんなもの見たあとに眠れるのか、と言われれば微妙だが、そんなものはサリナのおかげで吹き飛んだ。


「おやすみなさい」


サリナの隣に寝転がると、サリナが抱きついてきた。

いやぁ、なんて可愛いんだ。


「むふふ……」


サリナの体温を感じながら、眠りについた……。


「まだ起きてますか?」

「うわぁ!?」


と思ったら、ドアの前にローレンスさんが立っていた。

だからノックをしろと。


「すみません、ノックをしなくてもいいかと思いまして」

「いやしてください常識です」

「わかりました。以後気をつけます」


以後があるのか……。

とはいえ、タイミング良すぎやしないか?


「ちょうど、女神様から、帰ってきたと報告を受けましたので」

「えぇ……」


女神様は僕のストーカーですか?

僕のプライバシーなんてなかった。


「それで、何しに来たんです?僕は眠いんですが」

「すみません、女神様が、男を連れてきたと言っていたので、その男に事情聴取でも行おうかと」


こっちの世界でも事情聴取なんてあるんだ……。

じゃなくて。


「いや、僕の行動筒抜けじゃないですか」

「まぁ、そうですね」


やめてほしい。


「じゃあ、出しますね」

「え? あ、はい」


まぁ、僕を見ているということは、大変なことになったら助けを求めやすいという事にもなる。

全て僕に一任していたら、意味が無いが……。


アイテムボックスから、男を出す。

男は開いた口を下向きにしていたからか、落ちてくるかのように地面に落ちた。

ちょうど、僕がこの世界に落ちてきたかのように。

もしかしたら、時間だけでなく、運動エネルギーもそのままなのかもしれない。

そうだとすると、相手の弓矢をアイテムボックスに入れて、相手の方向に向けてアイテムボックスを再び開けば、相手の方に向かう計算になる。

……まあ、それは後でいいや。


「……え、なんだここ?」

「あ、ここ私の家です」

「えっ?」

「……それでは、この方をお借りしていきますね」

「はい、どうぞ」


僕が許可を出すと、ローレンスさんは首根っこを掴み、引きずっていく。

男が何やら、説明を頼む、とか言っているが、適当に相槌を打っているだけだ。

強引だなぁ。


「まぁ、それぐらいじゃないとやっていけないのかもしれないな」


側近っていうのは。


それに関して言えば、僕達の旅には関係ない。

その国に居づらくなったら出ていけばいい。

住みやすい場所を探すことには探すが、永住するつもりは無いし。

自由気ままに行きたいのだ。


「かわい子ちゃん連れてね」


欲望のままに。


そんなことを考えていると、サリナがもぞもぞと動き出した。

時計を見ると……もう8時か。

日の出からそんなに時間が立ったようには感じなかったが……今は日の出が遅い時期なのだろうか?


「ん……」

「や、おはよう」


サリナが起きてしまってはしょうがない。

寝るわけにはいかない。

それに、もうこの国からは出る。

今決めた。


「サリナ、今日か明日にこの国を出るよ」

「……わかった」


よし、許可も取れたし、今日は準備をして、出発は明日にしよう。


例によって道具とかは全部アイテムボックス行きだ。


……?


「あ、忘れてた」


奴隷(仮)の2人を出さないと。

危ない危ない。


「……お腹減った」

「はいはい」


さて、サリナが朝ごはんを所望のようだし、作るとしましょう。

適当に目玉焼きにでもしようか。


「次の国は……平和だといいなぁ」


次の国がどんな国か、店先で情報を集めようと思いつつ、目玉焼きが半熟で焼けるのを見計らって、皿に移す。


果たして、半熟をサリナが受け入れてくれるだろうか。

かけるのは、醤油。

この世界には、醤油、味噌、塩はあるのに、ケチャップとか、マヨネーズはない。

創造スキルで試したところ作れず、多分だがどこかの特産品にでもなっているとみた。


「どう?」

「……トロトロ」


サリナは、トロトロが気に入ったようで、僕の分まで食べてしまった。


サリナ、僕は何を食べたらいい?

※あと数話で2章に行きます。

短い?

なんのなんの。

2章はこれの5倍ありますよ。


嘘です盛りました。

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