7 みっしょんこんぷり〜と?
まずは現状確認。これ大事。
「……」
「……」
僕の他には奴隷のようなガリガリの小さい子が2人……どっちも人族だ。
はて、人族も連れてこられるようになったのだろうか。
まぁ、それはいい。
片方は、黒髪で足まであるだろう長さだ。
髪で隠れて顔は見えないが、手足は衰弱しているはずなのに、しっかりとした体つきなのがわかる。
もう片方は、ボブより少し長くなったかぐらいの青い髪で、ドアから差し込む微量の光でも、それに反応して光っているように見える綺麗な髪だ。
……よし、決めた。この2人だな。
そして僕は、2人に声をかける。
……反応してくれるだろうか。
「僕の名前ははやか……違った。アイラ。少し訳あってここにいる」
「「……」」
黒髪の方は少し動いたが、青髪の方は全く反応しない。
ふむ。
青髪の方の顔を横から両手で挟み、声をかける。
「僕の名前はアイラ。君たちをここから助ける」
「……?」
なんとか認識はしてもらえた。
未だに生気を伴っていない目をしているが、まだ死んではいない。
いくらでもやり直せるはず。
まずは、健康的な生活から、かな。
まぁそれはいいや。
ただ、今のこの状態の2人を連れてなんとかするのは簡単なのだが、どうしてもしたいことがある。
会いたいのだ。
あの男に。
「……さて」
こういう時は、空間スキルと感応スキルの合わせ技だ。
あの男の感覚は覚えている。
ならば、空間スキルで人がいるところ片っ端から感応スキルを利用して、一致した奴のところに飛ぶ。
感応スキルはパッシブだから、空間スキルで見たらわかるのだろうが。
「さて、まずは空間スキル____」
辺りが一瞬で緑の縦と横の線で構成される。
そして、部屋を高速でスキャン。
……スキャンと言っても、感応スキルで一致する奴を探してるだけなのだが。
さて、うまく見つかるかどうか。
「お、いた」
すぐに移動スキルで転移、するわけにもいかない。
この2人を助けると明言した以上、助けないと。
仲間にする予定だし。
だけど、どうしたものか……。
「……アイテムボックスに入れられないかな」
2人に触れ、アイテムボックスを開く。
そして、2人をアイテムボックスにひょいと入れると、そのままアイテムボックスの口は閉じた。
「……生きてるのも入れられるんだ……」
おそらく時間も止まっていると思うし、2人からしたら、異空間に入れられたと思ったらすぐに出されて、場所も変わっている、というような感じか。
擬似的に移動スキルを使っているかのようだ。
さて、それはともかく。
「転移して、その後どうする?適当に誰もいない場所にまた転移して話を聞き出すか?」
自分で適当に言ってたらいい感じの案が浮かんだ。
これでいこう。
「それ」
もうどのスキルより慣れたであろうこのスキル。
目の前には、先程の男がいた。
「……、お、お前、あの部屋に入れたはずじゃ……」
「ごめんなさい、話があるんで」
何か言っていたが、とりあえず無視だ。
この男が他の仲間を呼ぶ可能性もある。
まずは、男の腕を掴み、誰もいない部屋に転移。
「うわっ、な、なんだ?」
続いて、壁に投げつける。
「が、はっ……」
……あぶない、意識を残しておかないと。
とりあえずは起きてるみたいだし、聞きたいことをさっさと聞こう。
「すみません、少し聞きたいことがあって」
「……聞きたいこと?」
よし、問答はできるな。
僕はつとめて笑顔で話すことにした。
「あなたは、この組織を良く思っていますか?いませんか?」
「……」
男は、この部屋に誰もいないことを確認し、隣にいるかもしれないという不安感から、声を潜めて言った。
「……良く思ってはいない。正直いったら、今すぐにでもぶち壊してやりたいところだ」
よっし、これで、組織の中のやつの証言ゲットだぜ。
あとはこいつを女神様の側近ホーレン草……じゃなくて、ローレンスさんに渡すだけだ。
「じゃあ、ここを壊そうとしてる人がいるので、その人に協力してもらっていいです?」
「え? あ、ああ」
まぁ、許可なんて求めてないさ。
無理やり連行して、あとの仕事は女神様の側近の仕事だ。
まずは。
「アイテムボックスへどうぞ」
「え?うわぁぁぁぁ」
足元にアイテムボックスの口を出して落としてやる。
さよなら。
次にあんたが日の出を見るのは、ローレンスさんの目の前でだ……。
まぁ、そんなことより。
「もうここから出てもいいかな」
用事は済んだはずだ。
個人的に、何をしているのか気になるような気はするが……。
「ん、覗いてから帰ろ」
とりあえず、人がいっぱいいるところの手前にでも転移するとしよう。
見つかったとしてもすぐに逃げたらいい話だ。
どうせこの国からは遅かれ早かれ出ていく。
「……うわぁ」
転移して数秒後。
人体実験をしているであろう部屋の扉越しから聞こえてくるのは、叫び声だった。
ただ叫んでいるものもいれば、たすけて、いたい、死にたくない、と叫んでいるのもいる。
なるほど、地獄絵図だな。
「……入りたくないような、入りたいような」
それでも、好奇心は旺盛な僕であった。
扉に手をかけ、ゆっくりと開く。
扉で遮断されていた分の音が一気に届く。
それは、電気がバチバチいっているような音だった。
「なんだ、あれ」
子供を台に固定し、石のようなものを無理やり腕や足、はたまた胸に直接埋め込んでいる。
その石は、見たところ薄く紫に光っている黒色の石のようだが。
「……ここにはもういたくないな」
正直言うと吐きそう。
半ば急ぎ気味に転移し、仮拠点に戻ってくる。
もう日の出が来ており、窓から入る朝の光がサリナの寝ている横顔を照らしている。
なんて可愛いんだ……。
「よし、リフレッシュだ」
まぁ寝よう。
これから寝ようって時にローレンスさんが来たから一睡もしていない。
あんなもの見たあとに眠れるのか、と言われれば微妙だが、そんなものはサリナのおかげで吹き飛んだ。
「おやすみなさい」
サリナの隣に寝転がると、サリナが抱きついてきた。
いやぁ、なんて可愛いんだ。
「むふふ……」
サリナの体温を感じながら、眠りについた……。
「まだ起きてますか?」
「うわぁ!?」
と思ったら、ドアの前にローレンスさんが立っていた。
だからノックをしろと。
「すみません、ノックをしなくてもいいかと思いまして」
「いやしてください常識です」
「わかりました。以後気をつけます」
以後があるのか……。
とはいえ、タイミング良すぎやしないか?
「ちょうど、女神様から、帰ってきたと報告を受けましたので」
「えぇ……」
女神様は僕のストーカーですか?
僕のプライバシーなんてなかった。
「それで、何しに来たんです?僕は眠いんですが」
「すみません、女神様が、男を連れてきたと言っていたので、その男に事情聴取でも行おうかと」
こっちの世界でも事情聴取なんてあるんだ……。
じゃなくて。
「いや、僕の行動筒抜けじゃないですか」
「まぁ、そうですね」
やめてほしい。
「じゃあ、出しますね」
「え? あ、はい」
まぁ、僕を見ているということは、大変なことになったら助けを求めやすいという事にもなる。
全て僕に一任していたら、意味が無いが……。
アイテムボックスから、男を出す。
男は開いた口を下向きにしていたからか、落ちてくるかのように地面に落ちた。
ちょうど、僕がこの世界に落ちてきたかのように。
もしかしたら、時間だけでなく、運動エネルギーもそのままなのかもしれない。
そうだとすると、相手の弓矢をアイテムボックスに入れて、相手の方向に向けてアイテムボックスを再び開けば、相手の方に向かう計算になる。
……まあ、それは後でいいや。
「……え、なんだここ?」
「あ、ここ私の家です」
「えっ?」
「……それでは、この方をお借りしていきますね」
「はい、どうぞ」
僕が許可を出すと、ローレンスさんは首根っこを掴み、引きずっていく。
男が何やら、説明を頼む、とか言っているが、適当に相槌を打っているだけだ。
強引だなぁ。
「まぁ、それぐらいじゃないとやっていけないのかもしれないな」
側近っていうのは。
それに関して言えば、僕達の旅には関係ない。
その国に居づらくなったら出ていけばいい。
住みやすい場所を探すことには探すが、永住するつもりは無いし。
自由気ままに行きたいのだ。
「かわい子ちゃん連れてね」
欲望のままに。
そんなことを考えていると、サリナがもぞもぞと動き出した。
時計を見ると……もう8時か。
日の出からそんなに時間が立ったようには感じなかったが……今は日の出が遅い時期なのだろうか?
「ん……」
「や、おはよう」
サリナが起きてしまってはしょうがない。
寝るわけにはいかない。
それに、もうこの国からは出る。
今決めた。
「サリナ、今日か明日にこの国を出るよ」
「……わかった」
よし、許可も取れたし、今日は準備をして、出発は明日にしよう。
例によって道具とかは全部アイテムボックス行きだ。
……?
「あ、忘れてた」
奴隷(仮)の2人を出さないと。
危ない危ない。
「……お腹減った」
「はいはい」
さて、サリナが朝ごはんを所望のようだし、作るとしましょう。
適当に目玉焼きにでもしようか。
「次の国は……平和だといいなぁ」
次の国がどんな国か、店先で情報を集めようと思いつつ、目玉焼きが半熟で焼けるのを見計らって、皿に移す。
果たして、半熟をサリナが受け入れてくれるだろうか。
かけるのは、醤油。
この世界には、醤油、味噌、塩はあるのに、ケチャップとか、マヨネーズはない。
創造スキルで試したところ作れず、多分だがどこかの特産品にでもなっているとみた。
「どう?」
「……トロトロ」
サリナは、トロトロが気に入ったようで、僕の分まで食べてしまった。
サリナ、僕は何を食べたらいい?
※あと数話で2章に行きます。
短い?
なんのなんの。
2章はこれの5倍ありますよ。
嘘です盛りました。




