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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第1章
16/79

6 任務の詳細と実行


「ちょっと待ってください」

「はい?」

「……()()()()ではって、そういう意味ですか……?」

「ええ、その通りです」

「……?」


サリナはわかっていないようだが、僕にはわかる。

その意味が。


つまり。


「つまり、()()()()の、ということですよね。」

「ええ。そういうことです」


つまり。

この人は、女神様の側近、とまではいかないかもしれないが、かなり近しい人物だとわかる。

だが、僕に協力するためだけに、この国の女王になったわけではあるまい。


「既に女王になっている人間の意識を乗っ取りました」

「こわっ!」


なるほど、女神様関係の者達がその気になれば、人を乗っ取れると……。

サリナを守る準備をしておこう。


「いえ、嘘です。前々から準備していた時に、あなたが巻き込まれたので、丁度いいタイミングだっただけです」

「な、なんだ……」


と、安心すると他の心配事が出てくる。


「えっと、女王様がここにいるのは少々どころか、結構まずいんじゃ……」

「いいえ、私は既に死んだことになっています」

「……」


どゆこと?


「先日、あなたを発見しましたので、ここで女王として統治している意味も無くなりました。本当ならもう少し早い段階で合流し、この国を崩していく予定だったのですが……」

「じゃすともーめんとぷりーず」


ローレンスさんには少し持ってもらおう。

状況を整理する時間が必要だ。


まず、この人……人?

まぁ人ということにしておこう。

この人は、僕のような人間が来るのを待っており、そのタイミングが来たから、行動に移したという。

ただ、女神様達がそこまでできるなら、僕がする意味はなんだ?

なぜ僕にわざわざ、この世界のことに干渉させる?

目的はそれだけか?


……女神様の言いなりはやめた方がいいかもしれない。


「さて、そちらのことは知っているので、早速行動に移りましょうか」

「え、あ、うん」


何をそんなに急いで……るわけでもなさそうだな。

うん、女神様達も待たされるのは嫌いかね。

そうかね。


「まずは、この国の裏のことについてですが……」

「そのことなら、大体は」

「そうですか。それなら話が早いです。あとは潰すだけですし」

「あっはい」


だが、どうするつもりなんだろう?


「やることは簡単です。今現在も実験は行われているので、まだ大丈夫な人たちを助け、その人達に証言させます。あとのことは私にお任せ下さい」

「結構直接的なんですね」

「特に思い入れはありませんし」


ということで、いくつかの注意点があるらしい。


1つは。


「顔を見られないこと。これは絶対です」

「絶対、ですか」

「じゃないと、指名手配されます」

「絶対ですねわかりました」


今回の事が終わったあと、動きにくくなったらそれでは本末転倒……ではないか。

別に目的があるわけじゃないし。


2つ。


「助けた人を、あなたのパーティに加えることを推奨します」

「はえ?」


そりゃどういうことで?


「詳しいことは言えませんが……良いことが起こるとのことです」

「あぁ……なるほど」


女神様からの直々のアドバイスってことね。

オーケーオーケー。


……あれ、サリナは?


「寝てるし……」

「……まぁ、聞かれては困るような話も出来る、と考えればよいではないですか」

「それはそうなんですけどね」


ベッドですやすや眠るサリナを見る。

なんのために、そういったワードに触れないように気をつけてたのかわからなくなるが……その寝顔を見ると許してしまう。


「かわいいなぁ」

「……それでは、私はこれで」

「えっと、ローレンスさんはどうするんです?」


スヴェール女王としてのこの人は既に死んでいることになっているはずだ。

今更どうこう出来るとは思えないのだが。


「私が死んでいないことを知っている、忠実な家臣がいます。あなたの後始末をすると言ったのは、その家臣がいるからです」

「逆に言えば、その家臣がいなくなれば、僕の後始末はしないと」

「いえ、女神様からの命令なので、最後まで面倒をみます」


なるほど。

アフターケアもばっちりってか。


「それでは」

「はい」


ローレンスさんは、ちゃんとしたドアを開けて出ていく。

隣の窓もちゃんとしてるよ。割れてないよ。


「……とりあえず、今何時かな」


ベッドの枕側の壁に取り付けられた時計を見る。

現在は昼の12時過ぎ。

ちょうど昼飯だな。


「サリナ、起きて」

「……?」

「ご飯だよご飯。食べに行こ」

「……うん」


のそのそとベッドから降りるサリナを見つつ、今後のことについて、まとめていこう。






いつ決行するのかはわからないが、その時は向こうから連絡が来るだろう。


現在、この2ヶ月、ここで暮らしていたら見つけた、米を取り扱う店で昼食中だ。

もちろん、アイテムボックスにも大量に入っている。

アイテムボックスに入れると、問答無用で時間が止まるみたいだし。


「不便っちゃ不便だけどね」

「……?」


しかしこの米、日本で食べていたものと比べるといかんせん固い。

なので、食堂では、スープに浸して食べるのが一般的なのだ。

なのだが。


「……やっぱ、米と味噌汁だよなぁ」

「……ミソ?」

「味噌っていうのは、まぁ調味料みたいなもんかな」

「……?」


調味料知らないのか?

んなアホな。

……いや、料理していなかったらそりゃ知らんか。


食事はいい。

リラックスできる。


とはいえ、それでいい案が思いつくのかと言うと微妙なところで。

結局、サリナをどう守ればいいのかはわからなかった。

そもそも、神の干渉できる力に対抗できるような力って、神か、神と対の何かだけだ。

まぁ、大体は悪魔と相場が決まっているが、悪魔なんかにはなりたくはない。

が、神にもなりたくはない。


「どうしたもんかなぁ……」


とりあえずは、命令に従う方がいいだろう。

下手に敵対行動をして、サリナを乗っ取られでもしたら、僕の命はない。


だが、その後は……。


「……その後のことは、その後考えることにしよう」


結局、僕は投げた。






その日の晩。


「……くぅ」

「いやぁサリナの寝顔はかわいいなぁ写真で撮りたいなぁくっそ写真という技術を復興させろよ全くこの世界の人間は何を」

「失礼」

「わぁぁぁあ!?」


ベッドでサリナの寝顔を眺めながら寝るということを日課としていた僕は、背後から近づいてくる何者かに気が付かなかった!


「毒を飲まされ、目が覚めた時には……」

「何を言っているのかは存じ上げませぬが、決行は今です」

「……あれ」


ローレンスさんでした。

とはいえ、ノックぐらいはしていいんじゃないかなぁ……。


「失礼、ノックはしたのですが、反応が無かったので」

「それは失礼しました」


多分、サリナの寝顔鑑賞会に夢中になってたからかな。

こりゃ失敬。


「あなたがすることは、朝話したことだけです。それ以上のことは……」

「あぁ、はい。わかってます」


僕としても、余計なことをして自分の首をしめるつもりはない。

サリナはここに置いていくしね。


「それでは、参りましょうか」

「はい」


そう言うと、ローレンスさんは金髪をひらりと翻して、家を出ていく。

……ふむ。


「なかなかの髪力……1500と言ったところか」


自分で言って訳がわかりませんでした。

なんだ、髪力って。






「それでは、こちらから侵入してください。」

「いや、これ壁ですけど」

「女神様から受け取った能力ステータスなら、これくらい余裕だと思いますが」

「……まぁ、そうなんですけどね」


ローレンスさんについてきて、到着したのは、この国の女王が住んでいる、王城。

さすがは元女王様。

抜け道をいくつも知ってるんですねすごい。

だったら中までの道も作っといてください。


とまぁ、内心文句を言いつつ、動きは止めない。

飛び越える前に、ローレンスさんに一声かける。


「それでは、いってきます」

「はい。お気をつけください」


……社交辞令ってやつかな。

なんとなくなんだけど、そんな気がする。


「さて、それじゃあいきますか」


足に力を込め、壁を超えた。






壁を超えた先には、兵士さんがいっぱいいました。


「フハハハ!のこのこ現れるとは、マヌケなやつめ!」

「……んっ!?」


僕は改めて兵士を見る。

兵士の数はせいぜい10人いるかいないか。

こんな数で僕を止められると思っているのならば心外だが、それぐらいの数で、この世界ではちょうどいいのだろう。

だが、なぜいるのかが問題だ。


……まさか、ローレンスさんが流したのか?


「ま、やることは変わらないけどね」


能力ステータスにものを言わせて次々と兵士の意識を刈り取っていく。

その際、顔を見られないように。


手加減はしているが、手加減スキルなんてものは持っていないので、死んでもしらん。


「……んーと、こっちか」


実験は地下で行っている。

ならば、地下へ行く道を見つけなければ。

だが、そんな容易に見つかるのならば、他の国が気づいているだろう。


「……移動スキルでも使うか」


空間スキルと併用することで、横だけでなく、縦も移動可能となる。


「ん〜……?」


頭の中に地下の全体像が浮かび上がる。

普通の1部屋を見るだけなら、中にいる人も分かるのだが、いかんせんその地下は大きかった。

地下は2層に分かれており、その2層を合わせればこの国の領土にさえ届きそうだ。


「……1番大きいところに移動しようか」


全体的な大きさが大きければ、部屋も多い。

地下への入口から真っ直ぐの道、その道の途中には幾つもの部屋があり、それらを無視して真っ直ぐ進めば、大部屋みたいなところがある。

これは、2層の内下の層にしかない。


「移動スキル、発動!」


声を出す必要は無いかもしれないが、なんとなく気分で小声で叫ぶ。


視界は一瞬で切り替わり、目の前に飛び込んできたのは。


「……なんじゃこりゃ」


辺りを見渡せども、倒れている人、人、人。

その人らは誰しも、ちゃんとした服を来ておらず、布を身にまとっているような感じ。

……なるほど、この人達が奴隷か。


「……まだバレるわけにはいかないよな」


潜入したのはいいが、入ったところで何をしたらいいのかはわからない。

この国で権力を持っているわけじゃないしな。


「……創造スキル」


自身の服をアイテムボックスにぶち込み、創造スキルで創り出した、周りに合わせた服にする。

うーむ、奴隷。


「む、人の気配」


入口へと続く道、真っ直ぐの道から誰かが来る気配を感じ取り、とりあえず伏せる。


出来ればまだこっちに来ないで欲しい。


「ったく……なんでオレが……」

「おい、適当に3人選べよ」

「あぁ、わかってる」


なるほど、次のモルモットか。

伏せているから、男達の装備はわからないが、片方は野太いおっさん。

もう片方は爽やかだ。


……こんなところにいる時点で爽やかではないだろうが。


「……あ? なんかこいつ、おかしくねぇか」

「どれどれ?」


誰のことを言ってるんだ?


恐る恐る顔を上げると、男2人はこちらを見ていた。

あれー?


「まだ活きてるな。よし、そいつとあと2人選ぶぞ」

「あぁ……」


え、ちょ、ま。


「よし、んじゃあ、お前はそいつを連れてこい。俺は残りの2人を担いでいく」

「あぁ、わかった」


そう言うと、爽やかな方に担がれる。

やばい、詰んでるくさい。


思えば、どうして壁の端の方に行かなかったのか……。

己の愚鈍さを恨むばかりである。


「……すまない」


過去の自分を心の中で呪っていると、爽やかな方から、多分だけど僕だけに聞こえるように言った。


……すまない、か。


「……」

「……」

「おい、早くしろよ!」

「あ、ああ。今行く」


そう言うと、男は歩調を早めた。


部屋の前まで行き、その扉を開けると、小さな部屋があった。

その部屋の中に無造作に放り込まれると、扉を閉められた。


「……うそん」


多分だけど、女神様は人体実験が行われている証拠を取ってこいって言ってたんだろう。

だが結果はどうだ。


移動スキルで転移して、奴隷の格好して、奴隷に間違われて部屋に連れ込まれて。


絶体絶命である。


「いや、目的を無視していいなら全然大丈夫なんだけどなぁ」


1度転移(移動スキルのこと)で逃げ出せばいいのである。


ただ。


「気になる、よなぁ」


すまないの、言葉の意味。


あの人に何とか連絡を取り付ければ、この裏は崩せる気がする。


「まずは」


何をしたらいいか。

考えないと。

アイラの明日はどっちだ!



※誤字があったらごめんなさい。

忙しくて確認する暇が無いのです(言い訳)

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