5 女神様からの来客
初めての武器創造から2ヶ月。
あれから任務をいくつか、というか何個も受けた。
その中で、最も辛かったのは、自身の能力に振り回されたことだ。
まぁ、その時はあまりにも酷かったもんで、次の日の依頼はサリナ1人に任せて、後ろで見ることになるほどの精神的ダメージを負った。
あれは酷かった。
「そろそろランクが上がりそうだな……」
今はギルドの依頼板で、受けられる依頼を探している。
前々から思っていたのだが、依頼を詳しく分けると任務というものに変わるのが毎回訳が分からない。
とまあ、それはさておき。
「……あと、1つか2つ、って言ってた」
サリナが後から言う。
そう、前回の依頼を達成した時、受付嬢に言われたのだ。
『あ、今回のであと一歩ですね、頑張って貢献ポイントを貯めてくださいね〜。
あ、でも、Bランクからは検定試験がありますので、そちらもお忘れなく〜』
検定試験とは。
まぁその名の通りだ。
CランクからBに上がる際、そしてそれ以降のランクアップに付きまとう試験。
とはいえ、最高はAランクで、試験は計2回なのだが。
「……あっちが気づくまで上げるとなると、Aランクも近いなぁ」
「……あっち?」
「あ、いや、なんでも」
サリナからの質問を適当にはぐらかしつつ、依頼書を見る。
うーん、面白いものは何も無いなぁ。
「すみません……アイラさんであってますか?」
「? はい、僕がアイラですけど……」
声をかけられたので、振り返る。
そこには、金髪のゴスロリがいた。
何この子。貴族?
「失礼、私の名前はローレンス・ギルリィア。しがない普通の貴族ですわ」
「……」
貴族かぁ……。
日本でいくつものアニメやラノベを見てきた僕は、貴族に対してあまりいい思い出はない。
……偏見だよそーだよ。
見た目は完全に金髪ドリル……お帰りください。
「あぁ、貴族さんの受付なら、向こうでやってますよ」
「……どうしてそんな嘘をつくのかは存じ上げませんが、私の話を聞いて頂けます?」
「……まぁ、聞くだけなら」
くそう、こういう時にバシッとごめんなさいが出来ればいいんだが、そんなことが出来れば苦労はしない。
これが、日本に生まれたものの末路か……。
「……ここでする話ではありませんわね。あなたの家、もしくは泊まっている宿の部屋まで案内してもらっても?」
「あ、はい」
しまった、適当にはぐらかして逃げても、これで僕達のアジトを知ってるから会いに来れてしまう!
くそっ、今からでも場所の変更を申し出るか?
そもそも、密室になった途端に襲いかかってくることだってある。
「……」
「あら、どうされました?」
家の方へ向かおうとした足が止まる。
……人の少ない裏通りに入ったら、この人を縛り上げて目的を吐かせるか。
「いえ、なんでもありません」
「……そうですか」
ギルド本部(というらしい。もしかしてギルドって規模は国並み?)から出て、裏通りへと入る。
途端、見てわかるほど貴族の人が怯えだした。
ローレンス、さんだったかな。
「どうかしたんですか?」
「い、いえ……あの、家は本当にこちらなんですの?」
「ええ、そうですよ」
まだ、ギルドに近い。
もう少し離れてからにしよう。
家とはほぼ真逆の裏通り、現代ではスラムのような場所に入っていく。
まぁ、スラムよりは格段にいいだろうが、治安は悪いことは確かだ。
さて。
「それでは、こちらです」
「えっ」
ローレンスさんが驚くのも無理はない。
僕だって、ここが家ですなんて言われたら平常を保っていられる自信はない。
その家は、木製ではあるが、既に腐りかけで、今にも崩れそうな外見。
ドアは辛うじて残っているが、隣の窓があったと思わしきところには何も無いので、そちらから入った方がいいのではとも思える穴がある。
屋根もよく見たら穴だらけだ。
もし雨が降れば、雨漏りとか、そんなレベルじゃなくなることは明白なほど。
「……」
「さ、どうぞ」
ドアを開けるのは面倒なので、隣の穴から入る。
ローレンスさんは、もう何も言えないようで、無言で後をついてくる。
そして、入った瞬間、床に押し倒し、両腕を掴み馬乗りになる。
「すみません、いきなりこんなこと失礼なんですけど、目的を聞かせてもらってもいいですか」
「なっ、なっ、なっ……」
ローレンスさんはわなわなと唇を震わせているが、そんなことはどうでもいい。
貴族を怒らせたところで……いや、困ることには困るが、まぁそれはいい。
さて、何が目的か、しっかり吐かせないと。
「それで、何が目的なんです?」
「……こんなの聞いてないですわ…」
「は?」
「……女神様からの協力者、と言ったらわかりますの?」
「……」
ハッタリか。
ハッタリだな。
両腕を片手で抑え、空いた手を首に添える。
「ホントのこと言わないと、ちょん切りますけど」
「!?」
喉に触れる。
はぁスベスベ。
こんな肌をお持ちなんですね貴族ったらあー羨ましい。
「ほ、ホントのことなの!」
「その、女神様って、誰なんです?」
「し、知らないなんて言わせませんわよ!
あなた、告白したそうですし!?」
「な、なぜそれを!」
「ふふ、認めましたわね!」
「がああっ、しまった!」
しまった、つい反応してしまった。
いや、なんの。
まだこの貴族さんの命は我が手中の中。
フハハハ!
「ええい、いっそ殺して全て闇の中に……」
「そ、そろそろ意地張るのやめて、状況を理解してくれませんこと!?」
「……はぁ、わかりました」
喉から手を離す。
ついでに、馬乗り状態から戻る。
……まぁ、結果オーライ。
「ところで、1つ聞いてもよろしくて?」
「はい?」
「ここ、本当にあなたの家でして?」
「……いや、違いますけど」
「ですわよね」
とりあえず、本拠地にでも移動するとしよう。
……そういや、サリナは?
「すみません、サリナ見ませんでした?」
「サリナ……あなたと同じ、銀髪の子ですわね。……そういえば、ギルド内にはいたのに、気づいたらいませんでしたわね」
「あるぇー?」
……ま、いいか。
約30分後。
僕達の家につき、ローレンスさんを招き入れる。
僕達の家は狭く、入口からキッチンから机、すぐにベッドとなっている。
そのベッドの上に、サリナはいた。
「あれ、帰ってたの?」
「……ん」
まぁ、無事ならなんでもいいけどさ。
ローレンスさんを、ベッドに座るように促す。
サリナにも協力してもらう予定だが、女神様という点は伏せながら話すとしよう。
……あ、ローレンスさんに何も言ってないや。
「……ではまずは、私の説明からですわね」
「あぁ、お願いします」
ローレンスさんは、そう言うと改めてこちらへ向き、言った。
「まずは、偽名を名乗らせてもらったことを謝罪いたします」
「偽名?」
「はい。」
ローレンスさんは、それまでの口調を変え、続ける。
「私の名前はリ・ダルバート・スヴェール。この世界では、この国を統治している女王をしています」
「……は?」




