8 奴隷
「カモン!アイテムボーックス!」
どさどさ。
現在、朝ごはんを食べ終わった僕達は、アイテムボックスから落ちてきた2人を見ていた。
サリナには、外で散歩していたら餓死しそうな子が2人居たと説明した。
自分でも無理やりだとは思うが、そこはスキルの出番で、なんとかなった。
「……?」
「……」
ふむ、黒髪の子はこの状況に戸惑いを持てるぐらいは元気があるのか。
やはりと言うべきか、青髪の子は全く反応しない。
なんとかできないか……。
「あ」
こういう時こそスキルを使うのである。
創造スキルで、新しいスキルを作り出す。
材料は揃っているはずだ。
僕がいるからな。
衰弱も多分状態異常に入るだろう……。
一時的にでもいいから、栄養を与えることが出来ればいい。
それも含めた回復魔法でも作るとしよう。
「聖魔法『オールヒーリング』」
魔法を唱えると、2人の体はみるみると健康的な色をし始め、ついには2人とも起き上がるまで回復した。
「……??」
「……」
黒髪の子は目に見えて驚いているが、青髪の子はあまり感情が顔に出ないタイプなのか、よくわからない。
が、まあ驚いているだろう。多分。
「よく聞いてくれ」
僕がそう言うと、2人はバッ!とこちらを向いた。
いや、なんか怖い……。
「……んん、えっと、今日から君たちを、僕達のパーティに入れたいと思う」
「……???」
「……」
今回はわかった。
2人とも訳分からんって顔してる。
青髪の子に至っては何言ってんだこいつみたいな顔もしてらぁ。
この世界での勧誘方法がわからない以上、こうするしかないんじゃ……。
ただ、2人の立場がわからない。
庶民みたいな位置なのか、はたまた奴隷なのか……。
とりあえず、聞いてみるか。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、2人って奴隷なの?」
「……」
「……ん」
まだ声を出せないのか、2人はこくこくと頷くだけ……あ、奴隷なの。
そうか。
……そうか。
「えっと……奴隷か……」
奴隷だと、パーティメンバーに入れられないとかあるんだろうか。
……まぁ、そこはギルドに聞いてみよう。
パーティとかの話は全てギルドでやっているのだ。
以前、僕とサリナでパーティを組む時も、そこで契約を交わした(スキルによるものだと思われるが、特に調べてはいない)。
パーティ名は保留。
「よし、ちょっとまってて」
そして僕は、ギルドに行くことにした。
数十分後。
ギルドについた僕は、受付嬢の人に聞いてみた。
ちなみにここの受付嬢は、金髪のポニーテールで、美人な感じだ。
ただ、なぜか恋人はおらず、恋愛のれの字も関わっていないらしい。
本人曰く、結婚したいらしいが、歳は幾つなのだろうか……。
いや、そんなことより。
「すみません、奴隷の子達ってパーティに入れられます?」
「あ、アイラさん。入れられませんよ。奴隷買ったんですか?」
「いえ、拾いました」
「はぁ。奴隷は主人の持ち物なので、メンバーには加えられませんよ」
「あぁ……」
「そんなことより、パーティ名を決めてください」
「……」
僕はギルドを後にし……ていない。
まだ、聞きたいことがあったのだ。
「すみません、奴隷ってどうやったら他人のものから僕のものにできます?」
「主人が死ぬか、主人が解除を承認したらです」
「なるほど」
ちょっと殺してこよう。
「上書きもできると聞いたことがありますが……そんなスキルは確認されていないので、どうしても、というのなら、奴隷商会にでも行くといいですよ」
「なるほど」
奴隷商会。
前の国のタリシタンには無かったが、こちらのスヴェールにはあるようだ。
その名の通り、奴隷を扱っており、お金で買える。
先程の受付嬢の、買ったのですか、はそういう意味だ。
まずは、そこに行くとしよう。
幸いお金は溜まっているし。
……足りるだろうか。
今なら、この世界で一軒家が軽々買える程度には持っているが……。
まぁ、そういうのって奴隷の状態とかにもよるし、多少は安く……しまった、健康にしてしまった。
「やっちまったなぁ……」
しかし、行かないわけにはいかない。
ダジャレじゃないよ。ホントだよ。
奴隷商会。
街の中央通りから少し離れたところに位置しているが、かなりの人の賑わいを見せている。
ここだけ見たら、ここも中央通りのようだ。
入口に入ると、支配人のような男が絡んできた。
ちょうどいい。あの件を聞いてみよう。
「あの、上書きについて」
「ダメですよォ、お子ちゃんがこんなとこ来ちゃァ」
「……旅してるんで、気にしないでください」
「ありゃ、ここで暮らしてるんじゃないんですかィ……。それで、今日はどんな用でェ?」
「奴隷の主人の上書きって、どれくらいかかる?」
「そうですねェ……奴隷にもよりますが、まぁ3000ミルぐらいですかなァ?」
ちなみに、今いる家は1000ミルだ。
クソッタレが。ぼったくってないか?
「……ぼったくってないか?」
「おや、気づくのが早いですなァ」
おい、カマかけたのか。
ぶっ飛ばすぞ。
「こわいこわい、そんな顔しないで下さいよォ」
「あ、すみません」
んで、ホントのところは?
「そうですなァ……」
くそ、この喋り方いらいらする。
そ↑うで↓すなァって感じ。
「30ミルですな」
「安っ」
「いやいや、主人の上書きなんて、私たちとしても利益にはなりませんしなァ……安くして、ほかの奴隷も一緒に買ってもらうんですよォ」
「は〜、なるほど」
上手いことやるんだな。
いや、商売ってそういうもんか。
「じゃあ、2人連れてくるから、その時は頼むよ」
「あい、わかりやしたァ」
変な喋り方をする支配人(?)を背に、歩き出す。
なんだろう、なんか嫌な予感がする。
「……ただい……ま……」
「……あ、おかえり」
「おかえりなさい!」
「さい!」
家に帰ると、狭い部屋中で、黒髪の子と青髪の子がこちらに挨拶していた。
黒髪の子はこちらが見えているのだろうか……ではなく。
そういうのはメイド服でやりなさ……でもなく。
「……喋れるようになったんだね」
「あい!」
「あい!」
「……ん、喋れるようになったから、挨拶を教えた」
「……あ、うん。ありがとう。それはありがとう」
いや、まあ……いいや。
あんまり難しいことを考えるのは得意じゃない。
とりあえず、奴隷商会に連れていこうか……。
「これから出かけるよ」
「……?」
「どこー?」
「どこー?」
「奴隷商会」
「……新しく買うの?」
「売られるのー?」
「のー!!」
……とりあえず、連れていこう。
「おやァ、早かったですねェ」
「それじゃ、よろしく」
先程会った男に、2人と一緒に付いていく。
サリナはふらふら〜っとどこかへ行ってしまった。
用事が終われば後で探しに行こう。
そして、後ろの2人は不安そうだ。
何か一言言っておいた方がいいだろうか?
「大丈夫、売ったりしないから」
「売らない?」
「わーい!」
黒髪の子はまだ不安そうだが、青髪の子は元気になったようだ。
素直だなぁ。
「では、奴隷をこちらへ」
「はい」
男は、それまでの訳分からん喋り方から一転、引き締まった声で喋った。
仕事には、真面目なのだろう。
奴隷の2人を男の前へ出す。
2人はこちらを見つめ続ける……やめろ!その目で僕を見るなぁ!
男はそんなことお構い無しに、2人の背中に手を当てる。
「では、いきます」
すると、2人の体が淡く光ったと思ったら、2人は一瞬だが、顔を歪めた。
……なんだ?
「前の主人を消しました。続いて、契約いたしましょう」
「ちょいまち、今のは?」
「前の主人を消す魔法ですが……魔法名は伏せさせていただいております」
「なるほど……」
まぁ、商売だしな。
この人は僕が検索のようなことを出来ること知らないんだろう。
なら、当たり前の行動とも言える。
まぁ、特許みたいなものだろう。
僕はそんなもの遠慮する気はないけれど。
2人が顔を歪めたのは、痛みが走ったからのようだ。
まあ、無理やり前の主人から切り離すのだから、それ相応の何かがあって当然か。
例え、奴隷が離れたいと思っていても。
ちなみに、以前2人に魔法を使ったのに奴隷のままというのは、奴隷というのは状態異常扱いじゃないのだろう。
「それでは、契約に移ります」
「お願いします」
「まずは、奴隷の背中に手を触れてください」
「2人同時でいい?」
「はい」
2人の背中に触れる。
2人とも回復魔法を使ったからか、スベスベ肌だ。回復魔法って便利〜。
「くすぐったーい」
「たーい」
黒髪の子が喋って、青髪の子が喋ると……。
やまびこみたいだな、これ。
「はい、終了です」
「あ、どうも」
契約の時は特に変化はないんだな。
「確認したければ、ギルドで冒険者登録でもするといいですよォ。まぁ、登録自体はできませんが、能力は見ることが出来ますしィ」
「ああ、なるほど」
喋り方戻すんかい……。
まあ、情報はありがたいけどさ。
「えっと、これ代金」
「はいィ。それと一緒に、別の奴隷もいかがですかァ?」
ですよねぇ……。
正直言って、そんなに必要というわけじゃない。
と言うか、あんまり奴隷って好きじゃないんだよなぁ……。
や、これ日本人だからかもしれないけどね。
「いや、今は必要としてないからいいよ。その時になったらくる」
「そうですかァ」
よし!
こんなこともあろうかと準備していたセリフが役に立った。
こんなところはさっさと出ていくに限る。
2人の手を引き、男の声を背に受けながら出ようとした時、思い出した。
「あ、サリナ」
「サリナ?」
「?」
そう、ふらーっとどこかへ行ったっきりで、戻る時にでも探せばいいだろうとか考えていたのだ。
2人の手を引いたまま、うろうろする。
はて、サリナはどこへ?
「1番仕入れのいい奴隷はこいつでさぁ!」
歩いていると、横に一際目立つ人だかりがあった。
ふむ、いい奴隷、か。
見たいような、見たくないような……。
などと、心の中で葛藤している間にも、足はそちらへと進む。
すると、目に飛び込んできたのは、とんでもないものだった。
「……なにやってんの」
「……あ、アイラ」
手錠を付けられたそれはもう可愛い女の子が座っていると思ったら、その顔はよく知っている人に似ていたのだ。
もっと言えば、パーティメンバー。
サリナは、手錠をどうするでもなく、ただ台の上に座らされてこちらを見ている。
……え、なんでそこにいるの?
「サリナ、帰るよ」
「……ん」
サリナが手錠を無理やり壊し、僕に付いてこようとした時、横にいたデブっちょな男が慌てて止めに入った。
「お、お待ちくださいお客様!こちらは大切な商品でございます!勝手に連れていかれるわけには!」
「ちょっと待て、商品?」
「はい!先程、運び屋が連れてきた中に、とびきり上玉のこいつがいたもんで、今回の目玉なんでさぁ!」
はぁ?
さっきまで一緒にいたんだ。運び屋なんかに運ばれるわけが無いし、そもそも奴隷契約なんかもしていないはずだ。
……していないよな?
「奴隷になったの?」
「……なってない」
と、本人は言うが……。
奴隷ってのは、本人の意思なく契約可能なのだろうか。
契約解除は意思が必要なようだが。
「そんなばかな!」
「なら、確かめましょう」
とりあえず僕は、ギルドへ行くことにした。
「すみません、この子達の能力を見たいんですけど」
「はい、少々お待ちください」
再びギルドへと戻ってきた僕達は、早速、能力を見ることに。
もし奴隷であれば、名前の下に【〇〇の奴隷】とあるはずだが。
「3人ですよね。こちらにお1人ずつ、手をかざしてください」
カードに手をかざしていく3人。
淡い光が静まり、奴隷であるはずの2人がこちらにカードを渡してくる。
まぁ、これは後でいいだろう。
問題は……。
「……」
「……サリナ?」
カードを横から見る。
そこには。
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サリナ・リラ 17
【ストモルの奴隷】
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「書いてあんじゃねーか!!!」
次回!
サリナがハマった罠とは!
みたいな。




