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一度でいいからと望んだであろう世界で  作者: すずはっぱ
第1章
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13/79

3 いざ、出撃

※サリナの武器はあくまで店先で買った武器ですので、おかしな斬れ味はありません。

購入タイミングは、アイラの1人会議の際です。


※アイラが創り出した刀の金属は、不明です。

ロンズデーライトよりは硬いです。

おはようございます。

いえ、もうこんにちはの時間帯でしょうか。

現在の時刻は昼過ぎと言ったところでしょうか。

私は現在進行形でサリナの抱き枕と化しています。

このままだと今日1日このままで過ごし、明日から活動開始になりそうなので、そろそろ起こそうと思います。

……別に、自分1人じゃサリナを剥がせないとか思ってこの口調なわけじゃないんです。


「サリナ、そろそろ」

「……んん……」


誰に説明するでもなく、脳内で状況を軽く整理しながら起こすが、僕の胸に顔を埋めて起床を拒否。

……僕の胸って、何カップなんだろう。

C……あるだろうか。


まぁそんなことはいいのだ。


「ほら、起きて、出発しないと」

「……ん」


しょうがないので、チート能力ステータスを使い、無理やり体を起こし、シーツを剥がす。

どうやら、自分で支度をするつもりはないようだ。


「……しょうがないなぁ」


僕は、合法的に女の子の着替えを手伝ったのだった。






結果、僕達が出発したのは3時過ぎだった。

いざ出発しようと部屋から降りてきて、受付娘に鍵を返す時に時計がチラリと目に入った時には、もう慌てたもんで。

とにかく、この国の裏を知る必要がある僕は、あまり人目に付く場所にはいられないのであった。


そして、移動してきたのは僻地も僻地。

城壁にぴったりとくっついた空き家にひっそりと入り込んで、作戦会議を1人でしていた。


サリナ?ギルドに行ったよ。

お金稼いでくるって。サリナが強いのかはわかんないけど、本人は自信満々だし、任せても大丈夫だろう。

ダメそうなら空高く魔法を撃てと言っておいたし。


さて。


女神様からの指令は確か、この国で良くないことをしてるから、それをなんとかしろってことだったはず。

なんとかするのはいいんだが、それが他国に告発したところでなんとかなる力の比率なのかどうかだし、そもそも、僕が調べたところで、というのもある。

いや、チート能力ステータスを使えば難なく分かるんだろうけど、僕はあまり頭が良くないから、自分が調べたとかがバレずになんとかしたいんだよなぁ。


……ん、待てよ。


指令を出すと一緒に、協力者も用意するって言ってたな。

同時に、その人がパーティメンバーになるように計らうみたいな。

この世界では神様が夢に出てきたら信じるんだろうか……。

いや、多分未来予知とかして、信憑性を持たせてから、行動を指示するんだろうな。


「……まずは、協力者を探さないとな」


こちらの情報は既にあちらに与えられてるとして、どうやって知らせるかだけど……。


「あぁ、ギルドを使えばいいのか」


ギルドで今話題の新人。

アイラとサリナ。

こうやって売り出せば、あぁ、女神様が言っていた人達だ、ってなるはず。

よし、そうと決まれば、ギルドへ行くとしよう。




ギルドは。

サリナに抱き枕にされた宿から数分でつく場所にある。

タリシタンに比べると小さいように見えるが、地下施設が充実しているようだ。

なんとこのギルド、その地下からある迷宮に繋がる道があるらしい。

出入口はギルドの地下からの1つだけらしいので、かなり儲かっているのだ。


ギルドの扉を開ける。

タリシタンとは違い、中の人達から特に見られることなく、中へと進む。

タリシタンがおかしいのか、それともこちらか。

そんなことはどうでも良い。

カウンター……のような場所を見つけると、そこには既にサリナがいた。


どこにも出かけていないのはこちらとしても僥倖なのだが、僕が1人で作戦会議して、時間が経っているはずなのだ。

ずっとここにいたのか?


「……これにしよう」


と思ったら、今まで受ける依頼を考えていたようだ。

カウンターの左にある掲示板に貼られていた紙を複数取って、その中からどれにしようか迷っていたのだろう。

そして、今選び終わった、と。

ごめん、サリナ、その依頼、また後で。


「ごめんサリナ、遅れた」

「……あ、アイラ」


はて、サリナに僕の名前を呼ばれたのはこれが初めてだっただろうか。

嬉しいが、僕自身もアイラという名前を自身の名前だと認識しきれていない部分があるから、まだ完全には喜べないな……。


「依頼、僕もいるから、もう少し難しいのを受けても大丈夫だよ」

「……用事は」

「終わったから、今度はこっち」


僕が示すこっちというのは、名前を売るということ。

その真意を汲み取ったわけではないだろうが、名前を売るという行為自体はこの世界にもあるのか、僕の顔を見て頷いた。


「……そういうことなら、こっち」

「……どれどれ」


【依頼書】

[内容]キラーパック討伐

[達成条件]5匹の討伐(部位証明出来るものを提示)

[推奨条件]キラーパックは集団で行動するため、パーティメンバー4人が好ましい。

[受注条件]特に無し。



「……ふむ」


キラーパックとは。

まずはそこからだな。

僕は一目見たところじゃわからないので、サリナに詳しく説明を頼むことにした。


「……キラーパックは、4つ足で寝そべっているような感じ。鱗はドラゴンのような感じだけど、そこまで固くはない。動きは鈍重だけど、1度噛んだら離さないような強靭な顎に注意」

「なるほど」


つまり、見た目ドラゴンのワニってところか。

動きが遅いなら、遠くから魔法で……いや、魔法は不用意に使えないんだった。

じゃあ、高速で後に回って、ぶん殴って終わらせよう。

そして、アイテムボックス行きだな。



この依頼を受注することを承諾した僕は、早速サリナに依頼を受けさせた。

僕は受けたことが無かったので、後ろで見学だ。

こういうのは、慣れている人の動作を後から見ているに限る。

将来的にも、自分1人で受けるつもりはないしね。





「さぁ、出発だ!」

「……ん」


今回の討伐目標は、キラーパック。

まぁワニだ。

感応スキルで、ワニのいる方向もわかるし、今回で戦い方を学べれば上々だろう。


とはいえ、油断はしない。

パッシブに回復スキルが無いので、怪我をしても自分で治すしか無い。

いや、怪我する前に反射スキルが反応して、相手を殺っちゃうかもしれない。

それはまあいいや。


「……いた」

「だろうね」


先程からワニのいる方向へ歩いていたのだ。

いないと困る。


敵を確認すると、サリナは店で買っていたのか、剣を抜き放つ。

……かっこいいな、それ。


「そうだ、こういう時のためのスキル」

「……?」

「あ、サリナはやってていいよ」


サリナは分からない、というような顔をしつつ、ワニと戦闘を開始した。

ワニは鈍重と聞いていた通りの遅さだが、剣が鎧を通らないようで、サリナも苦戦していた。

とはいえ、やられるような感じではない。


ならば、今は自分のことだ。


「スキル〜スキル〜鍛冶スキルみたいなのないですか〜」


ありませんでした。

その代わり。


「……創造スキル。これで作れないかな」


パッシブではなく、普通にスキル欄にあったものだ。

言わずもがなLvは10。

Lvはどうしたら上がるのかは今のところよくわからないが、使い続ければ上がるようなものだろう。

Lvというのを熟練度と言い換えてもいい。

まぁ、予想だが。


さて。

創造スキルが10ということは、創造したらある程度のことはその通りのものが出来るということなのだろうか。


「試しに……」


想像するのは、カップラーメン。

お湯を入れて3分で出来る、アレだ。

しかし、それはいつまでたっても出てこない。


ふむ。

わからん。


「……何なら出来るんだろう」


試しに、土で出来た剣を創造することに。

すると、それはすぐさま目の前に現れた。


「……」


この後の数回、内容を変えて行った実験から分かったことは、その場に材料が無いと作り出せないということ。

その範囲は不明。

それは創造と言うのかどうかと言われれば微妙だが……材料さえあれば想像通りのものができるのは便利だ。


さて、実験の副産物たちをどうしようか。

まず、最初に土で出来た剣。

そして、鉄、銅、金と、金属を変えて作りすぎた剣4本。

武器を自分の創造通りに作れるというのは、男の血が騒ぐが、銃は作らないことにした。

ファンタジーの世界に合わないかと思ったのもあるが、単純に銃は嫌いなのだ。


……以前、PvPコンテンツをプレイしていた時、試しにとガンアクション系に手を出したのがきっかけだった。

立ち回り方は知っていたからこそ、叩かれはしなかったが、数多のトラウマを植え付けられた。



まぁ、そんなことはどうでもいい。

この剣4本をまずどうしよう。

他にも副産物はあるが、こちらは生活用品に使うようなものばかりだし、アイテムボックス行きだ。

フライパンとか作ってて楽しかった。


とりあえず、土剣は土に戻した。

特に用途もないし、意外と脆かったりしたのが理由だ。

そして、次に鉄。

使えることには使えるが……チート能力ステータスのせいで軽く感じる。

振ってたら案の定すっぽ抜けたので鉄インゴットにして地面に送り返した(物理)。

銅は、普通に使えそう、というか、持っていて不自然じゃなさそうなので、銅剣を持ち歩くことに。

金は金インゴットにしてアイテムボックスへ。

いざと言う時の資金源だ。

まぁ、こんなことが出来るのなら、いざと言う時の備えなんて要らない気がするが。


さて、それじゃあ、最強の武器を作るとしよう。

まずは硬い金属から。

ダイヤモンドは硬いって聞くけど、確か割れやすいとも聞いたことがある。

ので、ダイヤモンドは除外だ。

……だが、そうなると、僕の持ち前の知識では硬い金属は出てこない。

ただそれは元の世界での話であって、この世界ではダイヤモンドは10番目ぐらいかもしれない。

ならば、おまかせだ。

がんばれ創造スキル。

全てはお前にかかっている。


「さぁ、いくぞ!」


気合を込めて、武器を創り出す。

武器の形は、日本刀をイメージ。

構造も日本刀と同じだ。

日本刀の中身は色々重なっているような画像を前にネットサーフィンしていた時に見た気がするが、まぁそこもおまかせだ。

なんとかなるだろう。

続いて、硬い金属をイメージ。

これに関しては余裕だ。

イメージするだけなら世界で1番だと自負できる。

そして、最後に斬れるイメージ。

スパッと。


「……」


気づいた時には、目の前には、黒光りする鞘をつけた、日本刀が置いてある。

はて、いつの間にここにあったのか、イメージに集中していたから、よく覚えていない。

だが、この剣が異質な存在なのは分かる。

しっかりと刀となっている日本刀を手に取る。

鞘をから抜くと、黒光りする刃がこちらを覗いた。

深淵が覗く時_______いや、それはどうでもいい。


ただ、身震いする。

日本刀は西洋剣とは違い、片刃である。

だが、それがいいのだ。

鞘にしまい、手に持ったまま立ち上がる。

さて、サリナは……。


「はぁっ!」


サリナの裂帛の気合と共に地鳴りが響く。

はて、何をしているのだろう。

刀を作り始めた時は見渡せば視界に収められる位置にいたはずなのだが……。


音のする方へ移動すると、そこにはキラーパック10数体を倒し、まだ足りないとでも言うかのように、3匹のキラーパック相手に戦っているサリナがいた。


「ふーっ……ふーっ……」


しかし、サリナは限界ギリギリのように見える。

至る所に擦り傷を作っており、体力は限界だ。

ただ、大怪我をしていなかったのは幸いか。

しかし、このまま戦い続ければ、疲労が積み重なり、いずれ取り返しのつかないことが起きるかもしれない。

回復スキルがいくらLv.10だからと言っても、どこまで治るか僕自身ですら把握していないのだ。


「サリナ、交代」

「……!」


僕が声をかけると、心做しか表情が和らいだような気がするが……そんなにギリギリだったのだろうか。

そこまでやる必要はないのだが。

指定討伐数は5体……これはやりすぎだ。


まぁいい。

何か言われたら経験を積むためだとか言って誤魔化すとしよう。


そう思い直し、刀を構える。

鞘から抜き放ち、体の正面へ。

切っ先を真っ直ぐと、真ん中のキラーパックへ。

まるでそれが、この刀の構え方だと言わんばかりに。


「______」


一閃。

一瞬でキラーパックの後ろへと斬り抜ける。

キラーパックの動きは遅い。

ならば、3体同時に斬ることも、不可能ではない。

斬り抜け、数拍の後、キラーパック3体はようやく斬られたことに気づいたかのように、ぱっくり割れて沈んだ。


「……なかなか」


この刀はいい刀だ。

初めて創ったにしては、適度な重さに、よく斬れる。

手入れはどうしたらいいのかわからないが、下手に触れるとスッパりいきそうなので下手に触れない。

斬れない布でも作ってからにしよう。


しかし……


「斬った手応えが全くない」


斬れすぎるというのも、問題だ。


ともあれ。


「帰ろっか」

「……うん」


パーティを組んでの初陣は、まぁまぁ上手くいったと言うところだろう。


個々としては。

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