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四霊達の嘆き

夜。



桜庭家。



六花の部屋。



本人はぐっすり眠っていた。



大学。



バイト。



修練。



そして最近増えた人付き合い。



疲れているのだろう。



ベッドで幸せそうに寝息を立てている。



その姿を見ながら。



四霊達は全員黙っていた。



重たい空気。



最初に口を開いたのは鳳凰だった。



「来ているな」



低い声。



霊亀が頷く。



「来ておるな」



麒麟もため息を吐く。



「動き始めた」



応龍だけが静かだった。



だが。



その金色の瞳は細くなっている。



機嫌は良くない。



かなり。



「四神の子らか」



応龍が呟く。



鳳凰が羽を膨らませた。



「面倒だ」



珍しく隠そうともしない。



霊亀が苦笑する。



「四霊が集まった時点で予想は出来ておったがの」



「予想と現実は違う」



鳳凰は不機嫌だった。



非常に。



六花が寝返りを打つ。



すると全員が一斉に見る。



起きていない。



また会議再開。



麒麟が額を押さえる。



「問題は」



「奴らの目的は我ら四霊じゃろ。」



誰も否定しない。



四神の後継者達。



彼らは優秀だ。



実力もある。



人格も悪くない。



しかし。



目的は違う。



六花ではない。



四霊。



自分達だ。



そこが気に入らない。



非常に。



「六花は気付かぬだろうな」



霊亀が呟く。



鳳凰が即答する。



「気付かぬ」



「気付かぬな」



麒麟も断言。



応龍も頷く。



「気付かぬ」



満場一致だった。



六花は人の悪意に鈍い。



善悪は分かる。



だが。



打算と好意が混ざると分からなくなる。



なぜなら。



自分がそういう考え方をしないから。



「利用しようとしている」



「仲良くしたい」



「力が欲しい」



「興味がある」



その違いを。



六花は見落とす。



優しいから。



信じるから。



だから危うい。



鳳凰は小さく息を吐く。



「……昔からそうだ」



「ん?」



霊亀が見る。



鳳凰は六花を見る。



穏やかな寝顔。



「我を拾った時もそうだった」



「悪霊ならどうしようと思った」



そう言いながら。



平然と抱えて帰った。



「普通は警戒する」



「しなかったの」



霊亀が笑う。



「我もじゃ」



弱っている亀を見つけた。



だから助けた。



ただそれだけ。



神獣だからではない。



四霊だからでもない。



利用価値があるからでもない。



ただ。



困っていたから。



助けた。



麒麟が目を閉じる。



「我も初めて会った時に思った」



「変わった子じゃとな」



「今も思っておる」



「同感だ」



応龍が珍しく会話に加わる。



三柱が見る。



応龍は少しだけ気まずそうだった。



そして。



鳳凰がじろりと睨む。



「そもそも」



「お主のせいだ」



応龍が眉を動かした。



「何がだ」



「悪霊事件だ」



鳳凰即答。



霊亀も頷く。



「そうじゃな」



麒麟も頷く。



「そうじゃ」



応龍一人。



圧倒的不利。



「必要だった」



「必要ではない」


鳳凰。



「必要じゃなかった」


霊亀。



「必要なかったのう」


麒麟。



応龍が少し黙る。



「……」



「お主」



鳳凰が指を突きつける。



「六花が三日寝込んだのを忘れたか」



「四日じゃ」


霊亀。



「四日半じゃ」


麒麟。



どんどん盛られる。



「そこまでではない」



応龍が反論する。



しかし弱い。



「結果として」



麒麟が真面目な顔になる。



「界隈に知れ渡った」



空気が変わる。



そう。



問題はそこだった。



六花が強い。



四霊がいる。



悪霊を祓った。



その情報は広がった。



広がり過ぎた。



だから四神が動いた。



だから狙われる。



だから今こうして悩んでいる。



応龍もようやく黙る。



自覚はある。



多少。



かなり。



少しだけ。



「……すまぬ」



ぼそり。



三柱が固まる。



応龍が謝った。



珍事だった。



鳳凰が二度見する。



霊亀もする。



麒麟もする。



応龍が不機嫌になる。



「何だ」



「いや」



鳳凰が言う。



「謝れるのだなと」



「失礼だな」



応龍が言う。



少しだけ空気が和らぐ。



しかし。



問題は消えない。



四神達は動いている。



そして。



六花はまだ知らない。



大学で出会う青年達。



バイト先に来る客。



その全員が。



自分を目的にしているわけではないことを。



鳳凰は寝ている六花を見る。



霊亀も見る。



麒麟も。



応龍も。



そして全員が同じことを思う。



どうすれば守れる。



会わせないのは簡単だ。



だが。



六花は怒るだろう。



「勝手に決めないで」



そう言う。



だから出来ない。



大切だからこそ。



選択肢を奪いたくない。



それが。



今の四霊達の最大の悩みだった。



誰よりも強い神獣達は気付いていた。



悪霊より厄介なのは。


人の恋心と執着かもしれない、と。


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