麒麟の想い
麒麟が現れた夜。
六花の部屋には、いつもより少しだけ賑やかな空気が流れていた。
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窓から差し込む月明かり。
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机の上には鳳ちゃん。
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クッションの上には亀さん。
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そして。
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窓辺には麒麟。
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神々しい獣の姿で静かに座っている。
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初めて会ったはずなのに。
なぜだろう。
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不思議と緊張しない。
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むしろ。
昔から知っていた人のような安心感があった。
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しばらく六花と話した後。
麒麟は鳳ちゃんと亀さんへ視線を向けた。
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「で」
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静かな声。
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「そなたらはいつまでここにおるつもりじゃ」
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鳳ちゃんが首を傾げる。
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「何がだ」
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「決まっておろう」
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麒麟はため息をついた。
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「社じゃ」
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空気が少し変わる。
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「そなたらの社はどうするつもりだ」
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六花は瞬きをした。
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「社?」
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鳳ちゃんは答える。
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「まだこの子の傍におるつもりじゃ」
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「ほう」
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「力を扱うのがまだ未熟だからな」
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鳳ちゃんの視線が六花へ向く。
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「放っておけば無茶をする」
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「してないよ?」
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「しておる」
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即答だった。
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六花は口を閉じる。
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少し心当たりがあった。
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鳳ちゃんは続ける。
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「それに……」
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珍しく言葉を選ぶ。
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「この子の傍は楽しいのでな」
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六花が目を丸くした。
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鳳ちゃんがそんなことを言うとは思わなかった。
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亀さんも頷く。
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「社に関しては問題ない」
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「眷属達が上手く立ち回っておる」
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「時折戻って様子も見ておるしな」
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麒麟は二人を見つめる。
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長い付き合いだ。
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鳳凰も。
霊亀も。
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本来なら一箇所に留まるような存在ではない。
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それなのに。
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今は六花の部屋でくつろいでいる。
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まるで。
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家族のように。
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「……はぁ」
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麒麟は深いため息をついた。
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「そなたらは甘い」
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「そうか?」
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「そうじゃ」
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即答だった。
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鳳ちゃんと亀さんは顔を見合わせる。
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六花には分からない。
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だが麒麟には見えていた。
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鳳凰も。
霊亀も。
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既に六花を大切に思い始めている。
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だから甘い。
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とても。
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「六花の力はまだまだ未熟だ」
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麒麟は六花を見る。
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優しいが真剣な眼差し。
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「そなたらがおらねば危うい場面もある」
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鳳ちゃんが静かに目を細めた。
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「……視えているのだろう?」
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麒麟の問い。
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向けられた先は霊亀。
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未来を見る神獣。
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霊亀はしばらく黙る。
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そして。
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「……まぁ」
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小さく笑った。
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「まだ何とも言えんがな」
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六花だけが事情を理解していない。
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「?」
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「何の話?」
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三柱は答えない。
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代わりに麒麟が近づいてくる。
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「六花」
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「うん?」
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「修練を続けるのじゃ」
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六花は頷く。
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「鳳凰や霊亀と共にな」
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「うん」
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「お主の力は特別じゃ」
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麒麟の瞳が少し鋭くなる。
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「ゆえに」
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「お主の力を欲する者もいる」
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六花は息を飲んだ。
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鳳ちゃんからも聞いていた。
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けれど。
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麒麟の口から言われると重みが違う。
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「だから見極めるのじゃ」
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「見極める?」
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「善き者か」
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「悪しき者か」
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「利用しようとしているのか」
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「本当に助けようとしているのか」
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六花は静かに聞く。
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麒麟は続ける。
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「お主にはその力がある」
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「だからこそ磨くのじゃ」
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六花は少し考えた。
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そして。
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笑った。
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「分かった」
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「頑張る」
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その返事に。
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麒麟は満足そうに目を細めた。
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無理だとは言わない。
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逃げようともしない。
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それが六花だった。
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しばらくして。
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麒麟は立ち上がる。
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帰る時間だ。
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「もう行くの?」
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六花が少し残念そうに言った。
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麒麟は微かに笑う。
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「社があるのでな」
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「そっか」
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六花は少しだけ考え。
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にこりと笑った。
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「麒麟さん」
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「なんじゃ?」
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「ありがとう」
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麒麟は首を傾げる。
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「何がじゃ」
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「会いに来てくれて」
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六花は本当に嬉しそうだった。
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「また夜じゃない時に来てね」
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「鳳ちゃんも亀さんもいるし」
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「みんなでご飯食べよう」
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一瞬。
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麒麟は言葉を失った。
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何百年。
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何千年。
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生きてきた。
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だが。
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自分を神獣としてではなく。
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ただ会いに来た友人のように誘う人間は初めてだった。
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思わず笑みがこぼれる。
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「ふっ」
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「本当に不思議な子じゃ」
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六花は首を傾げる。
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「そうかな?」
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「そうじゃ」
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麒麟は静かに頷いた。
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「また会いに来よう」
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「うん!」
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次の瞬間。
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月明かりの中へ溶けるように。
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麒麟の姿が消えていく。
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静寂が戻る。
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六花は窓の外を見つめた。
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「優しい人だったね」
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鳳ちゃんが頷く。
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「そうだな」
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亀さんも笑う。
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「少々真面目すぎるがの」
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「そう?」
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「そうじゃ」
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三人はしばらく笑い合った。
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その頃。
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遠く離れた山の神域。
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麒麟は本来の社へ戻っていた。
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眷属達が頭を下げる。
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だが麒麟の意識は別の場所にあった。
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六花。
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桜庭六花。
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優しくて。
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強くて。
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少し危なっかしい少女。
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「なるほどな」
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麒麟は夜空を見上げる。
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鳳凰と霊亀が傍を離れない理由が分かった。
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そして。
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未来は静かに動き始めていた。
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まだ六花の知らないところで。
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四霊最後の一柱。
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応龍
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最も強大な龍神もまた、
六花という少女の存在を知ろうとしていた。




