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四霊達の過去-最強の巫女との出会い

六花の部屋。


テーブルの上にはお菓子が並んでいた。


ポテトチップス。


クッキー。


チョコレート。


最近では恒例となった四霊達とのお菓子パーティ。


六花は楽しそうにクッキーを口に運んでいた。


鳳凰は紅茶を飲み。


霊亀は饅頭を食べ。


麒麟は羊羹。


応龍はどら焼きを抱えている。


なんとも不思議な光景だった。


そんな穏やかな時間。


六花はふと前から気になっていたことを思い出した。


「ねぇ。」


四霊達が顔を向ける。


「みんなって昔から仲良しさんなの?」


その瞬間だった。


部屋の空気が変わる。


誰も喋らない。


麒麟が羊羹を置く。


応龍が目を伏せる。


鳳凰も静かになる。


六花は首を傾げた。


「あれ?」


まず口を開いたのは霊亀だった。


「……そこまではなかったな。」


珍しく遠くを見るような目。


「昔は、たまにしか会わぬ程度じゃ。」


六花は驚いた。


今の四霊達からは想像できない。


家族のような関係なのに。


麒麟が小さく笑った。


「むしろ仲は悪かった方かもしれぬな。」


「えっ!?」


六花が声を上げる。


鳳凰が呆れたようにため息を吐いた。


「麒麟とは何度も言い争った。」


「鳳凰の頑固さが悪い。」


「なんだと?」


「ほれ、今も変わらぬ。」


麒麟が笑う。


六花も思わず笑ってしまった。


しかし。


応龍だけは笑わなかった。


「笑い話ではない。」


静かな声だった。


「我らは本気で争っておった。」


六花が息を飲む。


応龍の声に込められた重さ。


それは冗談ではないと分かった。


「人間どもの策略に巻き込まれたのだ。」


応龍が続ける。


「我ら四霊は、それぞれ別の地を守っていた。」


「互いを尊重はしていたが、信頼はしておらんかった。」


鳳凰が頷く。


「そして人間達はそれを利用した。」


六花は真剣に耳を傾ける。


鳳凰の瞳が遠い昔を映す。


「ある村で異変が起きた。」


「作物が枯れ。」


「病が流行り。」


「人が死んだ。」


「村人達は原因を探した。」


「そして誰かが言った。」


『鳳凰が怒っている』


「別の者は言った。」


『麒麟の呪いだ』


『応龍の祟りだ』


『霊亀が見放した』


六花は眉を寄せる。


「そんな……」


霊亀が苦笑した。


「人は恐れると理由を求める。」


「それが間違いでもな。」


応龍が続ける。


「誰かが意図的に噂を流した。」


「そして我らは互いを疑った。」


鳳凰が目を閉じる。


「あの頃の我は愚かだった。」


「人間の言葉を信じた。」


麒麟も苦く笑う。


「我もだ。」


「鳳凰が何か企んでいると思った。」


四霊。


本来は人々を守る存在。


だが。


疑心暗鬼は神獣でさえ狂わせる。


やがて。


争いが始まった。


応龍の嵐。


鳳凰の炎。


麒麟の神気。


霊亀の結界。


山が砕け。


川が溢れ。


空が割れた。


六花は想像もできなかった。


今目の前にいる優しい四霊達からは。


その時だった。


鳳凰の表情が変わる。


少しだけ。


優しくなった。


「そんな我らに話しかけてきた者がいた。」


六花は息を呑む。


鳳凰が静かに名前を呼ぶ。


「桜。」


霊亀が懐かしそうに笑う。


「変わった巫女じゃった。」


麒麟も頷く。


「我らを見るなり怒った。」


「えっ?」


六花が目を丸くする。


応龍まで少し笑う。


「普通の人間なら逃げる。」


「だが桜は違った。」


その時の光景が脳裏に浮かぶようだった。


荒れ果てた山。


傷だらけの四霊。


その中央へ。


一人の少女が歩いてくる。


誰よりも小さく。


誰よりも弱い存在。


それなのに。


少女は腰に手を当てて怒鳴った。


『うるさい!!』


四霊全員が固まった。


『神様だからって喧嘩していい理由にならないでしょ!!』


鳳凰が思わず笑う。


「我は初めて人間に怒鳴られた。」


霊亀も笑った。


「我もじゃ。」


麒麟は目を細める。


「今思えば、あの時からだったのだろうな。」


六花は静かに聞いていた。


胸が少し温かい。


なぜだろう。


まだ会ったこともないはずなのに。


その巫女のことをもっと知りたいと思った。


鳳凰が続ける。


「桜は不思議な娘だった。」


「我らを神として見なかった。」


「家族のように接した。」


霊亀が頷く。


「怪我をした我を叱りながら手当てした。」


麒麟が笑う。


「鳳凰には野菜も食べろと言っておったな。」


「余計なことを思い出すな。」


鳳凰が顔をしかめる。


応龍は静かに空を見上げた。


「気付けば。」


「我らは集まるようになった。」


「桜の元へ。」


六花の胸が少しだけ締め付けられる。


それは。


今の自分と同じだったから。


誰からともなく集まり。


気付けば笑っている。


まるで。


今と同じ。


そんな六花を見て。


四霊達は誰も言葉にしなかった。


桜と六花。


あまりにも似ていることを。


まだ。


話すには早かった。


桜が迎える運命も。


天王寺という男の存在も。


そして。


桜の血が今も目の前にいることも。


四霊達はまだ語らない。


だが。


遠い昔の因縁は。


静かに動き始めていた。

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