表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/38

ため息しか出ない四霊

あの日。


鳳凰と霊亀が下した言葉は。



四神全員へ伝わった。



青龍。


玄武。


白虎。


朱雀。



そして後継者達へ。



『桜庭六花を試すな』



『疑うな』



『利用するな』



それは警告だった。



四霊からの。



絶対的な警告。



当然。


奏多も。


朱里も。



不満はあった。



本当なら見たかった。



力の限界。



実力。



どこまで戦えるのか。



だが。



許されない。



そして何より。



今は違う意味で興味があった。



桜庭六花という人間に。



だから。



協力依頼は出す。



しかし判断は四霊。



六花は四霊の言葉を絶対に守る。



それが分かっていた。



「厄介だな」



奏多は苦笑する。



「意外と頑固だしな」



朱里も同意した。



二人ともまだ気付いていない。



既に六花中心で物事を考え始めていることに。



その頃。



六花は大学帰りだった。



今日はバイトも休み。



少し遠回りして帰ろう。



そんな気分だった。



夕暮れ。



人通りの少ない河川敷。



そこで。



違和感を覚える。



嫌な気配。



重い空気。



背筋を撫でる寒気。



六花は足を止めた。



「……悪霊?」



かなり強い。



しかも。



二つの神気も感じる。



見覚えがある。



最近。



居酒屋へ来る常連客。



名前は知らない。



だが顔は知っている。



六花は慌てて走った。



すると。



そこにいた。



奏多。



朱里。



そして。



巨大な悪霊。



黒い瘴気。



歪な人型。



怨念の塊。



白虎の力が走る。



朱雀の炎が舞う。



だが。



相手が悪い。



強すぎる。



何度浄化しても。



再生する。



奏多が舌打ちした。



「面倒だな」



汗が流れる。



既に消耗していた。



朱里も同じだった。



「核が見つからない」



焦りが滲む。



そして。



悪霊が動く。



二人へ襲い掛かる。



間に合わない。



そう思った瞬間。



白い光が走った。



「――浄化」



優しい声。



空気が変わる。



悪霊の動きが止まる。



六花だった。



奏多が目を見開く。



「お前……!」



朱里も驚く。



六花は二人を見る。



そして。



少し困ったように笑った。



「大丈夫?」



まるで。



怪我をした友達を見るような声。



奏多は呆然とする。



敵の強さより。



六花の反応の方が理解できない。



普通。



怖がる。



逃げる。



巻き込まれたくないと思う。



それが当たり前。



だが。



六花は違う。



心配している。



自分達を。



六花はゆっくりと手を伸ばす。



教わった通り。



鳳凰。


霊亀。


麒麟。


応龍。



四霊の力を借りる。



光が広がる。



悪霊の核が露わになる。



「そこ」



奏多と朱里は反射的に動く。



白虎。



朱雀。



二つの力が重なる。



核が砕ける。



悪霊は悲鳴を上げ。



消滅した。



静寂。



風だけが吹く。



六花は安堵した。



「良かった」



本気でそう思っていた。



奏多は言葉を失う。



助けられた。



西園寺家の後継者である自分が。



朱里も同じだった。



紅原家の後継者である自分が。



そして。



六花は何事もなかったように笑う。



「怪我ない?」



その言葉に。



二人はさらに混乱した。



自分の心配をしろ。



そう言いたかった。



だが。



六花は本気で心配している。



だから言えない。



奏多が先に口を開く。



「助かった」



六花は首を傾げる。



「そう?」



「そうだ」



奏多は真っ直ぐ言う。



「ありがとう」



朱里も続く。



「本当に助かった」



六花は照れたように笑う。



「私は自分に出来ることをしただけだよ」



それだけ。



見返りもない。



恩を売る気もない。



純粋だった。



「また」



六花が言う。



「居酒屋に来てね」



奏多と朱里が固まる。



居酒屋。



そう。



彼女にとって自分達は。



『お客様』



それだけだった。



西園寺家も。



紅原家も。



後継者も。



何も知らない。



だからこそ。



余計に眩しかった。



「じゃあね」



六花は手を振る。



そのまま帰っていく。



残された二人。



しばらく動けない。



奏多が苦笑する。



「参ったな」



「何が?」



朱里が聞く。



奏多は空を見上げる。



「ますます気になる」



朱里も否定できなかった。



もっと知りたい。



話したい。



笑ってほしい。



そんな感情が芽生えていた。



その頃。



少し離れた木の上。



鳳凰がいた。



隣には霊亀。



二柱は全て見ていた。



沈黙。



長い沈黙。



そして。



鳳凰が言う。



「増えたな」



霊亀が深く頷く。



「増えたのう」



再び沈黙。



遠ざかる奏多と朱里を見る。



明らかに目が違う。



四霊を見る目ではない。



六花を見る目だ。



鳳凰が頭を抱える。



「面倒だ」



霊亀も同じだった。



「非常に面倒じゃ」



さらに。



二人とも気付いている。



玲弥。



智樹。



奏多。



朱里。



四人とも同じ目になり始めている。



そして当の本人。



六花は。



何も気付いていない。



「またお店来てくれるかなー」



そんなことを考えながら帰っている。



鳳凰と霊亀は同時にため息を吐いた。



悪霊より。



今の方が厄介かもしれない。


そんな予感しかしなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ