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変わらない人

変わらない人


神宮寺玲弥と宮原智樹が編入して、一ヶ月。


二人はすでに大学内で有名人になっていた。



「見た?」


「神宮寺くん」



「宮原くんも凄くない?」



「イケメンだし頭もいいらしいよ」



廊下を歩けば噂される。


講義室へ入れば視線を集める。



慣れていた。



神宮寺家。


宮原家。



生まれた頃から注目されてきた。



だから。



女性達の視線も。


好意も。


計算された接近も。



見慣れていた。



しかし。



一人だけ違った。



桜庭六花。



全く興味がない。



本当に。



全く。



「桜庭さん」



講義終わり。


玲弥が声を掛ける。



「ん?」



六花は振り返る。



普通。



本当に普通。



歓声もない。



照れもない。



警戒もない。



「この講義の資料なんだが」



「あ、それなら教授室に予備あるよ」



「そうか」



終わり。



会話終了。



玲弥は固まる。



終わった。



本当に終わった。



周囲の女子なら。



あと五分は話そうとする。



連絡先を聞く。



話題を探す。



しかし六花は違う。



必要な会話しかしない。



そのまま友人の元へ行ってしまった。



玲弥は初めて味わう感覚に戸惑う。



(興味がないのか)



それが少しだけ。



面白くなかった。



一方。



智樹も似た状況だった。



図書館。



偶然を装って隣へ座る。



「その本面白い?」



自然な質問。



六花は顔を上げる。



「面白いよ」



「そうか」



「うん」



終了。



終わった。



智樹は本を閉じる。



なぜだ。



分析できない。



女性達は自分を特別扱いする。



それが当たり前だった。



だが六花は違う。



良い意味でも。


悪い意味でも。



特別扱いしない。



平等。



だからこそ。



気になる。



もっと知りたい。



理解したい。



そんな感情が少しずつ膨らんでいた。



そして。



その頃。



六花にも楽しみな予定があった。



親友。



高橋あやめ。



唯一。



六花の力を知っても離れなかった人。



「視えるんだよね?」



そう言われた時。



否定も。


嘲笑も。



何一つなかった。



ただ。



「六花がそう言うなら本当なんだと思う」



そう言ってくれた。



大切な友人。



だから久しぶりに会えることが嬉しかった。



カフェ。



二人は笑いながら話していた。



昔話。



大学生活。



恋愛話。



そんな何気ない時間。



だが。



途中から六花は気付く。



あやめの顔色が悪い。



無理に笑っている。



そして。



彼女はスマホを差し出した。



「六花」



「これ見て」



表示された写真。



彼氏とのツーショット。



だが。



六花の顔色が変わった。



「……これ」



背筋が冷える。



写真の後ろ。



黒い影。



人の形をした何か。



禍々しい気配。



画面越しでも分かる。



「何?」



あやめが不安そうに聞く。



「凄く嫌な感じがする」



六花は眉を寄せる。



「彼氏さん最近疲れやすい?」



あやめが固まる。



「……なんで」



「分かるの?」



「当たってる?」



あやめは頷く。


「私もなの」



「ずっと体が重くて」



六花は写真を見つめる。



嫌な予感がした。



かなり。



「これ」



「一旦持ち帰っていい?」



あやめの瞳が揺れる。



そして。



小さく呟いた。



「お願い」



「助けて」



その言葉に。



六花は即答した。



「うん」



迷わず。



当然のように。



その日の夜。



帰宅した六花は写真を見せた。



鳳ちゃん。



亀さん。



麒麟さん。



龍さん。



四霊全員が集まる。



そして。



全員同時に顔をしかめた。



「悪霊じゃな」



「しかも質が悪い」



「怨念を吸い続ける類か」



「厄介だな」



六花は真剣に聞く。



大切な友人だから。



助けたい。



ただそれだけだった。



翌日から。



四霊による特訓が始まる。



浄化方法。



護符の作り方。



御守りへの力の込め方。



六花は必死に学んだ。



そして数日後。



あやめと彼氏に会う。



公園。



二人とも顔色が悪い。



だが。



六花は怖がらなかった。



「大丈夫」



「私が何とかする」



そう言って。



教わった通りに力を使う。



白い光。



浄化の力。



悲鳴のような声。



黒い影が消えていく。



長い時間をかけて。



完全に祓い終えた。



あやめは泣いていた。



「ありがとう」



彼氏も頭を下げる。



六花は照れくさそうに笑った。



「お礼はいらないよ」



「でも」



御守りを二人へ渡す。



「怪しい道には入らないこと」



「暗い近道も避けること」



「何かあったらすぐ連絡して」



二人は何度も頷いた。



その様子を。



少し離れた場所から。



玲弥と智樹が見ていた。



偶然ではない。



気配を感じたから追った。



そして。



目撃した。



本物の祓い。



本物の浄化。



神宮寺家の術者にも匹敵する力。



いや。



それ以上かもしれない。



玲弥は言葉を失う。



(本当に持っているのか)



力を。



智樹も驚いていた。



だが。



二人が衝撃を受けたのは。



力ではなかった。



祓いが終わった後。



六花がふらついている。



明らかに消耗している。



それなのに。



最初に心配したのは。



自分ではなく。



あやめ達だった。



「体調どう?」



「まだ重くない?」



「無理してない?」



そればかり。



見返りを求めない。



感謝を要求しない。



利用もしない。



ただ助けたかっただけ。



その姿を見て。



玲弥は初めて思う。



(危うい)



智樹も同じだった。



(こんな人間がいるのか)



理解できない。



だが。



理解したい。



もっと知りたい。



気付けば。



二人の視線は四霊ではなく。



桜庭六花へ向いていた。



その変化を。



遠くから見ていた鳳凰と霊亀は。



盛大に頭を抱えていた。



「始まったな」



「始まったの」


悪い方向へ...



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