表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/36

白虎 六花の観察

その日も奏多は仕事帰りだった。



スーツのネクタイを緩めながら歩く。



「疲れた……」



そう呟くが、本気ではない。


仕事は嫌いではない。


むしろ得意だ。



だが退屈だった。



何もかもが。



人も。


仕事も。


会話も。



だからこそ。



最近気になっている存在がいた。



桜庭六花。



四霊を従える少女。



その噂が本当か確かめるため。



奏多は居酒屋の暖簾をくぐった。



「いらっしゃいませ!」



聞き覚えのある声。



六花だった。



笑顔。



自然な笑顔。



作ったものではない。



奏多はそれが妙に気になった。



(相変わらずだな)



自分が客だから笑う。



そういう人間なら理解できる。



だが六花は違う。



誰に対しても同じなのだ。



常連にも。



一見にも。



若者にも。



老人にも。



同じように接している。



そこに打算が見えない。



だから理解できない。



その時だった。



酔った客が店員へ怒鳴り始めた。



「注文まだかよ!」



店内の空気が凍る。



新人スタッフが困った顔をしている。



奏多は面倒そうに視線を向けた。



(始まった)



こういう人間は嫌いだった。



だが。



もっと嫌いなのは。



媚びて謝る人間だった。



すると。



六花が前へ出た。



「申し訳ありません」



頭を下げる。



しかし必要以上に怯えない。



媚びない。



「確認してまいりますね」



穏やかな声。



客の怒りも少しずつ収まっていく。



数分後。



料理が届いた。



「待たせてごめんなさい」



六花はそう言って笑う。



客は少し気まずそうに頷いた。



それで終わった。



騒動は終息した。



奏多は腕を組む。



理解できない。



なぜ怒らない。



なぜ嫌な顔をしない。



(演技か?)



だが違う。



悪意がない。



本当にない。



それが不気味だった。



(何なんだよ)



気になって仕方がなかった。



閉店後。



奏多は距離を取って六花を追う。



尾行。



本来なら趣味ではない。



だが。



気になった。



知りたかった。



六花は夜道を歩く。



途中で立ち止まった。



近くの公園。



人気はない。



すると。



木の上から声がした。



「遅かったの」



奏多の瞳が細くなる。



次の瞬間。



銀色のたてがみを持つ小さな獣。



麒麟。



そして。



遊具の上から翼を広げた小さな龍。



応龍。



本物だった。



奏多は息を呑む。



だが。



もっと驚いたのは。



六花だった。



「今日は麒麟さんと龍さんのお迎え?」



満面の笑み。



「嬉しい!」



麒麟さん。



龍さん。



神獣に向ける呼び方ではない。



家族への呼び方だった。



応龍が少しだけ目を逸らす。



「たまたまだ」



「ふふっ」



六花が笑う。



麒麟も優しく目を細める。



その空気を見て。



奏多は思った。



(おかしい)



神獣が従っているわけじゃない。



支配しているわけでもない。



利用しているわけでもない。



もっと対等だった。



だからこそ。



興味が深くなる。



気付けば。



奏多は笑っていた。



「面白いな」



初めてだった。



四霊よりも。



六花自身が気になったのは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ