嵐の中、船を漕ぐ者は誰か part.8
「あー、はいはい。事情は分かった」
リヒェンツァとエフィムは、市街地を見渡せる屋上にいた。
「んで? アイツに話しちまって大丈夫かよ」
フェンスに背を預けたリヒェンツァが、軽い調子で聞く。
「大丈夫なわけないじゃないですか」
エフィムは、ギュッと両手を握りしめてから、開いたり握ったりを繰り返す。
「でも、もう、こうするしか……」
「ま、それしかないわな」
あのフェイルツィーオが、ヴォルーツォの見舞いと称して事情聴取に来た。
「いつまでも隠し通すのは難しいと思います」
「とはいえなぁ……」
ふぅ〜と、紫煙を吐き出す。
風に乗って、吹き散らされていく。
“禁煙”の看板も、もはや彼女の前では意味を成さない。
「アイツのことだから、ぜってぇウィリディアスに直接コンタクトを取ろうとか言い出す」
「わたしも、そう思います」
はぁ〜と、二人が同時に溜息を吐いた。
「まあ、ここいらで打ち明けるしかないのは確かだが……」
「そうなると、リヒェンツァ副会長やリュディオールさんが元『イル・マット』の構成員だったことも、明るみに出てしまいますね」
「それは……まあ、しゃーねぇな。とはいえ、魔術師育成協会の根幹を揺るがすわけだから――って、あ?」
「え?」
リヒェンツァは、屋上の入り口を顎でしゃくる。
エフィムが、そっと顔を覗かせてみると、そこには見知った顔。
「おい、リヒェンツァ。どういうことか、一から説明してもらうぞ」
噂をすれば、なんとやら。
フェイルツィーオが、そこに立っていた。




