嵐の中、船を漕ぐ者は誰か part.6
「お爺ちゃん、大丈夫なの?」
エフィムは、空蝉と一緒に病室から出ようとしていた。
「……ワフ」
相変わらず、眠そうに欠伸をしている。
「もしかして、魔力を使いすぎて眠いとか?」
「ワウ」
さっきからこんな調子で、まともに会話にならない。
「お! いたいた、エフィムはーん!」
廊下の先から、手を振る姿が見える。
空蝉の孫、芽衣だ。
「……芽衣さん」
エフィムが小さく手を振り返す。
「なあなあ、何があったん?」
いつになく切羽詰まった様子で、芽衣が尋ねてくる。
「えーと、それは……」
助け舟を求め、空蝉に視線を向けるが、「ワフ」と首を傾げるばかり。
「お爺ちゃん、もう帰って寝た方がいいよ」
「もー、話逸らさんといてーなー!」
プクっと、頬を膨らませる芽衣。
「ごめんてば」
エフィムは、思わず苦笑する。
「……ちょっと、子供に聞かせる話じゃないかな、って」
「なんでや!? ジブンも、どう見ても子供やん!!」
図星を突かれ、エフィムがたじろぐ。
「なぁ、何があったん?」
芽衣が気遣わしげに、エフィムの顔を覗き込む。
「おい」
しかし、助け舟は突然現れた。
「……エフィム、ちょっとこっち来い」
リヒェンツァだった。
入院着に身を包んだ彼女は、いつもより弱々しく映る。
「すみません、芽衣さん。先にお爺ちゃんを連れて帰ってください」
「えー」
納得いかないといった表情の芽衣。
「……ほら、リヒェンツァさんもああ言ってますし」
そう言って、芽衣に帰宅を促すエフィム。
「では、また」
「……しゃーあらへんなぁ。ほな、じじい帰るで」
「ワウ」
大丈夫かなぁ……。
芽衣と空蝉を見送りながら、エフィムは心の中で一抹の不安を覚える。
「ところで、リヒェンツァ副会長、お話とは?」
改めてリヒェンツァに向き直り、尋ねる。
「アイツ、来てんだろ?」
「……はい」
「何だって?」
「……ええ、と」
どこから話せば良いのか。
エフィムは、言葉を慎重に選んで話し始めた。




