ななしのジョン・ドゥ ending
意識だけが、泳いでいた。
何もない荒野。
その上には、カーテンを引いたような鈍色の曇天が広がっている。
果てしない虚無。
何層にも連なる、死体の海。黒く爛れた、腐りかけの肉塊。
それらすべてが、ゆっくりと腐敗し、溶けて、混ざり合っていく。
――その中心に、彼はいた。
「僕は、まだそこには行けないや」
縋りついてくる亡者を、一つずつ丁寧に剥がしながら、彼は独りごちる。
「だって、まだ……終わっちゃいない」
どこまでも穏やかで、どこまでも平坦な声だった。
「僕がいなくなったら、彼が悲しむからね」
「だけど」
亡者が呻く。
「それが、独りよがりだったら?」
その顔は、よく見る近所の女の子の姿によく似ている。
それだけじゃない。
「あんな子供と付き合うなんて」
「変態! このクズ!」
彼は、どこか羨望の眼差しを向けながら、苦笑する。
「君たちには分からないよ」
そうして、呪詛を吐く亡者の頭を鷲掴みにすると、優しく引き剥がし、丁寧に葬る。
そして、何度目かのことだった。
「――んっ!?」
ずしりと、岩のような圧力が彼の肩にのしかかった。
「重い、重いってば――!?」
そのまま崩れるように、彼は仰向けに倒れた。
「……目覚めたか」
麗らかな日差しが、斜めに差し込む。
茶色い犬が、ふあっとベッドの上で欠伸を一つする。
「あれ、ここ」
お決まりの台詞を口にすると、彼はゆっくりと瞬きを繰り返した。
「その声って、空蝉くん?」
痛む身体を少し起こし、悪夢の原因を薄目で探る。
そこには、案の定、空蝉の姿があった。
「空蝉くん、なの?」
「己は貴様の監視を、会長閣下より承った監視員である」
「え、え〜」
目を擦り、もう一度よく見てみる。
腹の上に、中型犬が丸くなって寝ている。
以上だ。
「重いんだけどなぁ」
空蝉は、それには答えず、瞼を下ろしてしまった。
長かった……途中で詰まって一週間ぐらい悶々としてたけど、どうにか終わった〜〜〜!
まさかこんな長くなると自分でも思ってなかったでござる〜おーーーー!




