↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
78/93

ななしのジョン・ドゥ part.7

「はあ、はぁ……!」


 熱い。

 肺が焼かれ、熱気と魔力が身体の内側まで侵してくる。


 それでも、フェイルツィーオは、ただひたすらに走った。


 ――そこにいる、中央にいる。

 フェイルツィーオの義眼は、そう告げていた。


「――リヒェンツァ!」


 一行は焔に囲まれながら、『幻日の箱庭』の中心部へ辿り着いた。


 そこにいたのは、魔術師育成協会の面々。


 空蝉、カレンデュラ、リュディオール、ライツォフィオナ――そして、リヒェンツァ。


「……支部長、なんでここに」


 リュディオールが、信じられないものを見るように目を見開いた。


「リヒェンツァ!!」


 フェイルツィーオが駆け出す。


「貴様という奴は、本当に本当に本当に……!」


 思わず手を振り上げる。

 だが――それは、途中で止まった。


「……何か言ったらどうなんだ!」


 リヒェンツァは、変わらず膝を抱えたまま。

 その様子からは、いつもの覇気も、凛とした強さも感じられない。


 ただ、静かに泣いていた。


「――愚か者が……」


 フェイルツィーオは、リヒェンツァの肩を掴み、揺さぶる。


「理事長、リヒェ姐を責めないでやってください」

「そうだよ。今はそんなこと言ってる場合じゃ……」


 カレンデュラが、それぞれフェイルツィーオを宥めようと声をかける。


「……そんな場合かどうか、貴様らが決めることではない!!」


 怒りは確かにあった。

 だが、それ以上に焦りがあった。


「一体ここはなんなんだ。何が起きている」


 矢継ぎ早に疑問を投げつけるが、誰も口を開かない。

 その沈黙に、フェイルツィーオはさらに苛立ちを募らせた。


「とにかく、早く脱出するぞ……――ヴォルーツォさん!」


 一陣の風が吹き抜けた。

 徐々にではあるが、黒い焔の勢いが弱まっている。


 だが――そこにいるはずの男の姿がない。


「……ヴォルーツォさんは、どこだ」


 フェイルツィーオが辺りを見回す。

 誰も答えなかった。

 そもそも、一行はヴォルーツォを探すために、こんな危険を冒してまでここへ来たのだ。


 それなのに――「……どうして」


 その言葉の続きを、フェイルツィーオは持ち合わせてはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。