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追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
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終演 part.7

「――それで、何か掴めそうなんですの?」


 郊外へ出たまではよかった。

 しかし、そこから先の足取りが掴めない。


 フェイルツィーオとアフェルディータの兄妹は、『イル・マット』のアジトの一つである『幻日の箱庭』を目指していた。


「分かっている。今、探索中だ。口出しするな」


 苛立ちを隠そうともせず、フェイルツィーオが近くの木の幹へ拳を叩きつける。


 ――ぽつり。ぽつり、ぽつり。

 曇天から、大粒の雨が落ち始めた。


 ここは、ロティリス国営森林公園のメタセコイアの下。

 しかし、何の手がかりも得られないまま、すでに数時間が経過していた。


「ええ、そうですか……」


 車内では、運転手役の魔術師が協会へ聞き込みの電話をかけている。


 フェイルツィーオは目を閉じたまま、黙り込んでいた。

 アフェルディータは、そんな兄に何か言いたげだったが、結局は口を噤む。


「それで――どうですの?」


 しばらくして、再び同じ言葉を投げかけた。


「霧がかかっていて、邪魔されている。魔術的なジャミングだろう」


 フェイルツィーオは、眉間に皺を寄せる。


「ただ……」


 一度、言葉を切った。

 そして、目を開く。


「おそらく、ここから北北東。距離にして七十キロほどか」


 そう言って、フェイルツィーオは指先で北北東の方角を示した。


「北に七十……アルラトの方角かしら」


 アフェルディータが地図アプリを開き、ピンチイン、ピンチアウトを繰り返しながら方角を確認する。


「お前は、ここで大人しく待っていてくれないか。鬱陶しい」


 フェイルツィーオが、露骨に眉を顰める。


「んっっっっま! 兄様ったら、なんてことを仰いますの〜〜〜!!」


 妹の甲高い抗議に、フェイルツィーオは思わず耳を塞ぎ、顔をしかめた。


 義眼を通して見る景色は、灰色がかっている。

 輪郭もぼやけ、霧の向こうに何があるのかすら判然としない。


 その中を探り歩くフェイルツィーオは、目の前で繰り広げられる兄妹喧嘩に、すっかり辟易していた。


「煩いぞ、アフェルディータ。お前は邪魔だと言っている」


 どうせ、何を言っても聞く耳など持たない。

 そう悟ったフェイルツィーオは、それ以上相手にせず、黙って歩き出した。

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